Mate/12
スティーブと友人になろうがなるまいが、エレンからすればまったく精神的に変わらない――はずだったのだが、彼女のその予想は大きく裏切られた。
エレンはこの世界に生まれてから長らくひとりきりであり、常に孤独に慣れ親しんでいたはずだった。しかし、彼女には前世の記憶と魂が引き継がれているのだ。以前の、それほど幸せだと言えないにせよ普通の交友関係を持っていたエレンは、スティーブとの接触によって、すっかり忘れていた感覚――つまり、他人との交流の温かみを思い出したのだった。
そうは言うものの、やはりエレンはエレンだ。そう簡単にスティーブと交流できるわけがなかった。
「――そういやさ、オレ、ついにやってやったんだよ」
「なにが?」
「明日のお楽しみってやつだ!」
――こんな調子である。結局、友達になると言う前から、ほとんどなにも変わってはいなかったのだ。
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