代替品/10


少年と言われて久々に意識したが、私の身体は男の子のものなのである。前世は女だったためにちぐはぐさが否めないが、英語圏万歳。一人称も喋り方も男女差はほとんどないに等しいのである。
生まれたころは女の子らしい仕種をして気味悪がられたが、今はずいぶんとましになったほうだ。ただし、女装をして女のふりをしろと言われたら、それなりの演技をすることができる自信はあるが。

あのあとクレプスリーと別れた私は、ふらふらと夜の街を歩きながらこっそり帰宅した。クレプスリーには学校に向かうと言ったが、よくよく考えたら明日は日曜日だ。学校なんてやっているわけがなかった。
そこそこの朝食を食べ終えた私はそそくさと自室に引きこもり、粗末なベッドの上に寝ころがる。

「はぁ……」

原作と共にクレプスリー伝説を読んでいた私からすると、あの場面は強烈だった。人生の運命から逃げることをやめ、落下してゆくバンパイア。前世で読んでいた頃の私は、これからダレンに繋がってゆくのかと胸を躍らせたものだ。
――だがしかし、この私は、バンパイアになる気なんてさらさらない。それだけは主張しておきたい。

今は迫害されているかもしれないが、私には大人になったらこの町を捨てて、私を知らない場所へと旅に出るという夢がある。
バンパイアになんて絶対なるものか。私は人間として生き、旅をし、ごく普通の、のんびりとした人生を送って死ぬのが夢なのだ。(一番の目標は、日本に住んでゆったりとすることだ)。
戦いや修業なんて――ましてや戦争なんてやりたくもない。ダレンの成り代わりだと自覚しておきながら、みすみす茨の道へと踏み込む人間なんて、よほどの馬鹿か、マゾヒストくらいだろう。そして、私はそのどちらでもない。クレプスリーには悪いが、ダレン・シャンのオルタナティブはきっといつか出てくるだろう。

そう、決して、私などではなく。


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