道/07


どうしてこうなってしまったのだろう。ため息をつきたい気持ちを堪え、私はやれやれと頭を振る。
始まりは、かのダレン・シャン少年に成り代わったことだが、スティーブと話す程度の仲にまでなり、シルク・ド・フリークのショーを観に行くことは明らかに私の予定にはなかったのである。

こんなにも私が落ちこむ理由は、ひとえにこのサーカスのおかげで原作の主人公、ダレン少年の人生が狂わされてしまったことを知っているからだ。それゆえに、いままで散々避けようと努力をしてきたのだが、この数日の出来事であっという間にそれは水泡に帰してしまった。
あんなにも周りから理不尽な仕打ちを受けていても頑張れたのは、バンパイアなんてものにはならずに、普通の人間として成長し、そのうち成人したらさっさと町を出る目標を掲げていたからだというのに。まさか、それが夢として敗れ去ってしまうとは――ため息のひとつやふたつはつきたくもなる。

結果的に言えば、ショー自体は素晴らしいものだった。原作で読んだ通りのトラブルはあったが――スティーブがミスター・クレプスリーと名乗る男を凝視していたことも含めてだ――やはり、何百年間も観客を魅了してきただけはある。
私が苦手な蜘蛛のショーはさておき、エブラやトラスカを生で見れたことには感動した。これが普通の観客だったならば、ああ楽しかった、またいつか観たいね、と笑顔で日常に帰ることができたろう。しかし、生憎ながら、私とスティーブに限ってはそうはいかなかった。

そう、あるのかどうかもわからない運命というやつが、私たちのことをみすみす見逃すわけがなかったのだ――。


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