Angsthase | ナノ
3


「――っ」

ナツメは目を開けた。
まただ。やや荒い息を抑えながらナツメは呟く。また、現実のような夢を見てしまった。
懐かしい場所。変に好奇心をそそられる情景。ナツメが心から欲しているわけではないはずなのに、なぜかそこへ行くことになると躊躇いをなくしてしまう。まるで、始めからそこに訪れることが決められているかのように。

ナツメは落ち着いて部屋を見回し、ようやくここが施設の自分に充てられた部屋だということに気づいた。
カーテンから覗く外は闇に包まれている。時刻を確認するまでもなく、真夜中だと分かる。そして身体は布団のなかにあるし、服はただの部屋着だ。つい先ほどまで出かけていた痕跡などまるでない。

「……ゆめ、だよね」

呟く声に応える者はいない。
あれはやはり変にリアリティがあっただけの、ただの夢なのだろう。ナツメは布団から出ることなくそのまま目を閉じた。
起きる気力など、どこから湧くことがあろうか。

寝息を立てはじめたナツメの横にある置き時計が、カチリと音を立てて日付を越えた。
そこに表示される日付は六月二十四日。家長カナの誕生日の翌日であった。





×
「#学園」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -