∴ 幸村が憑依

「(精市すごいねー…)」
「まぁ、当然の結果だよ」

幸村に、では無く幸村が、にしてみた。
ゆっきー大好きだぁあああ\(^o^)/



私には幼い頃から精神が二人ある。二重人格という訳では無い。本当に二人、私とあと少年の精神があるのだ。
少年、というより彼の名前は精市。名付け親はもちろん私だ。幼い頃名前が無くて泣いていた彼に私はあの時名前を与えた。
そしてあの時から私と精市は二心同体。もしも精市が私から消えたら、私はきっと耐え切れずに自殺してしまうだろう。それ程に私は精市を信頼して依存している。精市の存在は、私にとっては大きいものなのだから。

軽快なインパクト音が辺りに響く。
精市のテニスは他の追随を赦さない強さだ。それは、周りを魅力しつつも畏怖させる程に。
最近、神の子と呼ばれるようになったのには驚いたけれども、これもまた精市の才能の結果なのだから嬉しく思う。
ところで、私と精市は少し得意分野が違う。例えば私は記憶力が良いが運動オンチで、精市は運動能力がやたらと高く、頭の回転が早い。得意教科も異なって、私は社会と家庭科、精市は英語と数学と美術が得意だ。そのお陰で私の成績は変に良かったりする。

「6−0 ウォンバイ幸村!」

歓声と拍手が私たちを包む。Jr.全国大会優勝。今この勝利で私たち、いや、精市は中学生最強になった。
どんなに優勝したところで評価されるのは精市ではなく私だけれども、精市は単純にテニスを楽しみたいだけなので良いらしい。それでも私は精一杯精市を評価して認めようと思う。誰も彼を知らないけれど、私は全てを知っている。そんな小さくも異常な優越感があるのは秘密だ。

「優勝おめでとう幸村!」
「うん。ありがとう」

テニススクールの友人たちに声を掛けられて、私の表に出ている精市は嬉しそうにはにかんだ。
テニスをするときは男装してるから心なしかいつもより生き生きしてる気がした。

「(せーいち…)」
「ん、なに?」
「(……優勝、おめでとう)」

物語はまだ、始まらない。

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