∴ つみ上がる
この狭い一室に引きこもっていると、ある絶望と虚脱感がじわじわと私の身体を襲ってくる。
なんのためにここにいるのか。私はこのまま本たちに埋もれてゆくのか。この黴くさい湿った部屋で呆然と椅子に座りこむ意味はどこにあるのだろうか。あの黄ばんで端が曲がった洋書。もう読まれなくなった児童向けの物語。それらに囲まれて私はどこへ行くのか。そんなくだらない考えが私を圧迫してゆく。
買ったはずなのに読まれない本たちがあちらの角で積み上がってゆく。いつ読もうか。いや、いま読むべきではないな。根拠のない考えが私の行動を決める。ただタイトルと噂のみで、数行も読まれることなく積まれた本たち。お前らはなにも言わない。なにも言えない。だから都合のよいものだ。そこで黙ったまま埃の被る様を私は眺める。本はしゃべらないからよいものである。
くだらない衝動買いをし、また本はひとつ、ふたつと積み上がる。いつ読むのかもわからぬ本ばかりが増えてゆく。いつ読むのだろう。じわりと切迫感と絶望が私を襲う。だから私は椅子に座りこみ、ぼんやりとしながら部屋を眺める。
読まない本がまた増えた。
ようこそ新入り。物言わぬ陳列物よ。
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