∴ 古臭く書いてみた
しかし誠実であるというのはむつかしい。
人がけらけらと笑ふものを信じ、己の心の言葉をはっきりといわねばならぬ。これがどうしたものだか人が笑ふものをいっしょに笑ひ、心にない言葉をおぼつかない様子でいってしまふのだ。おさないときから誠実であれと散々いわれてきたが、とんと私にはむつかしいはなしであるようだ。努力せよと幾度といわれようがこればかりはどうしようもない。きっと生来のものであるからにして、誠実といふものとは無縁の人生をおくれというお告げなのであろう。しかしこれを父につたえると殴られ怒鳴られた。むかしから頑固な父はどうやっても私を誠実のある人間にしたいらしい。これにはほとほと困った。
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