05

「卯ノ花、雅治くんは俺の隊で預かってもいいか?」

浮竹のその一言で、仁王の居場所が決定した。



仁王の目が覚めて数日。そして尸魂界にやって来て、一週間が経過していた。
ようやく怪我が治り、退院した仁王は浮竹と並んで歩きながら十三番隊舎を目指していた。前々から思っていたが、どうやらこの尸魂界は全体的に明治・大正期風らしい。目に映る景色は、みなどこか歴史を感じさせられた。

「なして、俺を引き取ったんか?」

最初は隊長ということで敬語を使用していた仁王だったが、隊に所属していないという理由で浮竹から必要ないと言われたため、砕けた言葉で喋るようになった。とは言っても、流石に名前呼びはできなかった。それでも浮竹は「もっと気軽にしていいのにな」と少し残念そうにしていた。
仁王からのその問いに、浮竹は真剣味を帯びた声で答える。

「いちばん最初に雅治くんを発見したのが俺だったからな。その責任が俺にはあるんだ。それに――」
「……?」

浮竹は二コリと笑って、仁王に顔を向けた。

「シロちゃん仲間が増えて嬉しいからな。雅治の髪はとても綺麗だよ」

どちらかと言えばシロというより銀なんじゃが、と仁王は胸中で呟いた。それでも浮竹の嬉しそうな様子を見ていると、不思議と嫌な気持ちはしなかった。
仁王のこの髪色は生まれつきである。そのために幼い頃から色々と迫害されて生きてきた。
この髪を本心から褒めてくれたのは家族くらいだった。中学に入学してからは、染めていると公言していたからこそ綺麗だとは言われたが、地毛だと知ったらどうなるかは目に見えていた。
だからこそ、浮竹の言葉が心に染みた。

「……ありがとさん」

照れるように小さく呟いたその言葉に、浮竹はまたニコリと笑った。



「おかえりなさい浮竹隊長っ!!」

十三番隊の隊舎に到着するなり、両サイドから叫ばれた。
一週間の間にだいぶ精神が落ち着いたため、以前の調子で仁王はそれに表情に出さず驚くことが出来た。いわゆるそれはポーカーフェイスだ。それでも、微かに手が震えたのを浮竹は見逃さなかった。

「ああ、ただいま。紹介するよ。前々から言っていたが、今日から此処で世話になる雅治くんだ」
「仁王雅治じゃ。よろしくお願いします」

荷物を片手にペこりとお辞儀をする仁王。
若干方言が混じってしまうのは仕方のないことなのだろう。

「よろしく! 私は十三番隊三席の虎徹清音だよ!」
「よろしくな! 俺は小椿仙太郎! こんな女よりも優秀な十三番隊三席だぜ!」
「あ゙ぁ? なんだと! この眉毛猿が!」
「お前のほうがな!」

喧嘩を始めた二人を見て、浮竹は苦笑いを浮かべた。

「……あー、こんなのだがまぁいい奴らだ」
「三席が二人おるが……」
「……それは後ほどでいいか?」

その声音から何か事実があるのだろうと踏んだ仁王は、追求をせずに黙った。
しばくして清音と仙太郎が落ち着いてからまた少し会話した後に、浮竹は仁王に話し掛けた。

「それじゃあ部屋に行くがてら、隊舎を案内しようか」
「おん」

予想よりも大きい門をくぐって、仁王は十三番隊舎へと入った。

ここからまた、新しい生活が始まる。


救われたのは貴方

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