04

女性が言うにはここは尸魂界と言い、俗に言う"あの世"というものであり、自分は傷だらけになって倒れていたために治療されたらしい。
無事に死んだということを聞いて、やっと緊張が解けたのか、仁王は安堵の溜め息をついた。

「よかった……。死ねたんか」

そんな仁王の様子を見て卯ノ花は驚いたが、何か事情があるのだろうと深く追求はせずに静かにしていた。
暫くの沈黙の後、卯ノ花が優しく笑って仁王に話し掛けた。

「私の名前は卯ノ花烈です。貴方の名前を教えてくれますか?」
「……、俺は仁王雅治じゃ」
「では、雅治さんと呼ばせて頂きますね」

名前呼びなんて滅多にされないので、どこか新鮮味を感じられた。

「それで、雅治さんに話があるのですが――」
「卯ノ花! 少年の目が覚めたとは本当かい!?」

丁度本題に入ろうとしていた卯ノ花の言葉を遮って、浮竹が襖を開けてきた。
スパン、といきなり立った軽快な音に、仁王はびくりと身体を震わせる。

「ええ、本当ですよ。だから――」
「おはよう少年。俺の名前は浮竹十四郎だ。君の名前は?」
「え、あ、仁王雅治じゃ……」
「そうか雅治くんか。かっこいい名前だね。俺のことは気軽に十四郎と呼んでくれ」

部屋に入るなり卯ノ花を無視して浮竹は仁王の手を取り、以上のことを一気にまくし立てた。
そしてクルリと卯ノ花の方を向く。

「卯ノ花、死神のことはもう話したのかい?」
「しにがみ?」

首を傾げる仁王に、何故かテンションが高い浮竹。まずはこの浮竹を落ち着かせてからにしようと、卯ノ花はどこか凄みのある笑みを浮竹に向けた。

「ですから、それを今から話そうとしているのです」

しにがみとは、あの死神のことだろうか。仁王の頭に浮かぶのは、よく神話などで見かける死神の姿だった。

「先程、ここは尸魂界だといいましたが、その中でもこの地域は瀞霊廷と呼ばれています」

卯ノ花の話によると、死神とはよく聞く鎌を持ったあの死神ではなく、人間を護り、魂を昇華させる調律者を指すらしい。
そして十三の隊を構成しており、卯ノ花さんと浮竹さんはその隊長。
瀞霊廷には死神と貴族が居住し、その他の霊、魂魄は流魂街に住むことになっている。

「見たところ雅治さんの霊圧は、私たちに匹敵する程あります」
「だから、普通の魂魄が住むところよりかは、此処にいて力をコントロールする練習をする方が良いと思うんだ」

事実、治療してから仁王の霊圧はどんどん高まっていた。恐らく瀕死の仁王の命を繋ぎ停めたのも、彼自身の高い霊圧のお陰なのだろう。そして、それは流魂街に居るにはあまりにも高すぎる。

卯ノ花と浮竹の真剣な表情を見て、仁王はコクリと静かに頷いた。


また信じる事を掛けてみよう

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