とある少女の独白

ある日、事故に遭って真っ白になったと思ったら、わたしの目の前に神様が現れた。
神様は驚いているわたしに向かって、好きな世界に行かせるチャンスをあげるよと言ってくれた。
だからわたしは、大好きなテニプリの世界にトリップさせてもらった。もちろん、学校は一番好きな立海。氷帝とどっちにしようか最後まで迷ったけれども、カッコイイ人がいっぱいいるから立海にしたの。精市に蓮二に比呂士にブン太に赤也……そして雅治。
神様に頼んで、とびっきり可愛くて皆がわたしを愛してくれるようにしてもらった。これで皆、わたしのことを大切にしてくれる。お金も沢山貰ったし、家も貰えた。
最後に、神様から「自分がもうすでに一度死んだってことを忘れないで」って言われたけれど、よく意味が分からなくて曖昧にうんって返事をして、テニプリの世界に行ったの。

テニプリの世界は最高だった。
ブン太と雅治と同じクラスだったし、テニス部のマネージャーになれた。学校の皆と仲良くなれたから夢小説で定番のファンクラブとのトラブルも無かった。雅治だけはわたしにつれない態度を取っていたけれど、それは恥ずかしいからなのよね。
この世界に来て数週間後、わたしは雅治に付き合ってってお願いした。みんなみんなわたしの騎士なんだから、雅治も喜んで了解してくれるに決まってるのよ。だって、わたしはこんなにも可愛くて愛されているんだから!

なのに雅治はわたしを振った。しかも冷たい目をして興味が無いなんて言って。
なんでなんでなんで! わたしはみんなの姫で愛されて大切にされるのに! そうあるためにわたしは選ばれてここにいるのに! 愛されて当たり前なのよ? だってわたしは可愛くて完璧なんだから。そうに決まってるのに。なんで雅治はそんな目でわたしを見るの? 嫌。嫌嫌やだやだおかしいこんな世界おかしいよ。神様に愛されてるわたしが、なんでこんな目に遭わなくちゃいけないのかな? おかしいよ! 一番愛する人に嫌われなくちゃいけないの? おかしいよ! 誰か教えて! 神様! 誰か誰か誰か誰か! 一人は怖いの! あんな目で見られたくないの! もっともっとわたしを愛して欲しいのよ! 愛して愛して愛して!
――……あ。そうだ。雅治に復讐をしなくちゃ。そしたら雅治は目が覚めてくれるはずだわ。だって、わたしは愛していたのに。何処までも愛していたのに。そんなわたしを振るなんて間違ってるもの。そうだ! そうだ! そうに決まってる! なら、行動は早くしなくちゃ。よし。最初はわたしの可愛いお友達たちにメールをしようっと……!

におうくんに、おそわれた。たすけて。

あはははははははははっ! いい気味! ざまぁみろ! こんなに素敵なわたしを振ったから貴方はそうなってるのよ? どうだ後悔したか! 懺悔したいか! でもわたしは絶対に許さないからね! 愛してるのに! 愛していたのに! 裏切られた苦しみをもっと味わえばいいのよ! さあさあもっと傷ついてちょうだい! 絶望を味わってちょうだい! 楽しみだなぁ。愉快だなぁ。あははははははははははははははははっ!

……なんで。なんで雅治は全然抵抗をしないの? え、やだ。雅治の目が怖い、怖いよ。虐められてるんだから早く諦めてよぅ。もう味方は誰もいないんだからわたしに愛してるって言ってよ! 貴方に希望なんてないはずなのになんで強いの? 怖い怖い怖い怖い怖い怖い! わたしは愛してるのに。受け止めて! ……だから早く諦めてって言ってるでしょ! これが最後のチャンスなんだからね!


雅治が死んだ。この世界はやっぱり狂っているみたいだ。だって、普通は雅治が死ぬわけないもの。おかしいのはやっぱり雅治じゃなくてこの世界だったんだ。
いま、わたしは自分の住むマンションの屋上にいる。手には、わたしの机に入っていた雅治からの手紙。風に仰がれながらカサリと音を立てて手紙を開いた。学校なんてものはサボったわ。さぁ、一体なんて書いてあるのかしら。楽しみだなぁ。うわ、風が強い。


あ。堕ちた。

体中が痛い痛い痛い痛い痛い痛い。ごりごりぐちゃぐちゃぴちゃぴちゃ。わたしは喰われてるの? あ、雅治の手紙が飛んでっちゃった。
手紙にはね、一言。


――なんでお前さんは生きとるぜよ?


そんなのわたしが一番知りたいわ。


貴女はもう既に死んでいる

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