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死神には斬魄刀と言う、個々が所有する刀がある。
簡単に言えば、それは自分の分身のようなものだ。意識はあるし、元は一つだったのではないかという説が上がるほどに、自らに類似する点や性格があったり、潜在意識のようなものを持っていたりする。
そしてそんな彼らと意志疎通し、励み合い、時には衝突をする。それが強くなる手っ取り早い方法であり、また最も難しい技能の一つでもあるのだ。



「――……、ん……」

また眠ったかと思えば此処にいた。もしかして自分は夢遊病の節でもあるのだろうか。
まるで桃源郷のような幻想的な空間の中心に仁王は倒れていた。
当たり前だが空は暗く、月が星を引き連れて輝いている。

ここ最近、ずっとこの光景なのだ。しかもいい加減うんざりしてしまうほど景色は変わらない。最初に見た不思議な子供とはそれっきりだったが、こう何回も来ると泣かれてもいいから話し相手になってほしくなる。それほどに飽きていたのだ。
音の無い祭は終わらない。
慣れてくれば、もしかしてこれは夢なのではないかという考えが湧いてきた。こんなにもはっきりとした夢は始めてなので現実と混同させているのではないか、と。
それならば、俗に言う明晰夢であるし、大した問題は無いのだ。目は醒めないので根本的な解決にはなっていないが、少なくとも安心はできる。
しかしながら、変な話だが、仁王にはどうにもこれが夢とは思えなかった。だからと言って、こんな不思議な場所が現実にあるとも言い切れない。
つまるところ、何時までもどっちつかずの中途半端なままでいるのであった。

―――雅治!!

初めて来たときに言われた言葉。
一体自分は何を忘れているのだろうか。
あの子供が叫んだ名前、明らかに自分を知っているような口ぶり。
地面から起き上がる気すら起きずに、仁王は寝そべったまま思考を続けた。
自分にそっくりな雰囲気、姿、そして寂しがりやな―――、

「……は、」

何一つ知らないはずなのに、浮かんできた一つの光景と言葉。
そしてそれを懐かしいと思う自分。

何が何だか、もう分からなくなった。

音の無い祭は、まだ終わらない。


真実は深く己の底

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