14

昼過ぎの麗らかな翌日、仁王と一護は流魂街にいた。村からも外れた草原に座りながら会話をしている。ちなみにルキアは今日も普通に仕事があるので隊舎に留まっていた。
かれこれ1時間になるが、やはりお互いの年齢が近いためか、大した衝突もなく砕けた様子で話し合えた。

「ほう。じゃあ、その髪は自毛なんじゃな」
「まぁな。つっても先公とかは全然信じねーから勉強の成績出して黙らせてるぜ」
「……(あ、勉強できるんか……)」
「……おい。ぜってーいま失礼なこと考えただろ!」
「プリッ」

そっぽを向いてはぐらかすように不思議な口癖を使う仁王に、一護は軽く溜め息をついた。先程から話していて知ったことだが、どうやらこの少年は人をからかうのが随分と好きらしい。けれども、それで怒らせたりさせないのは、やはり人の感情の機敏を読むことに長けているからなのだろう。
一護は持ってきた水筒の茶をこくりと飲んで、仁王の頭に目を向けた。

「……んで、雅治はどーなんだ?」

今の仁王の髪型は、ワックスをつけられていないため全体的に下がっており、後ろはいつものように縛っている状態だった。ちなみに紐はいつぞやの日に、突然ルキアが自室に侵入してきて「雅治! そんな色(白)よりも、こちらの方がよかろう?」と言いながら渡してきたピンク色のものだ。……さすがに貰い物を捨てる訳にもいかないので、こうして大人しく使わせてもらっている。
一護の視線から逃れるように仁王は小さく頭を振った。

「俺のも生れつきじゃよ。元々色素自体が薄いらしくての、お陰さんで日差しも苦手なんじゃ」
「あー、だから肌の色が白いのか」
「……ピヨ」

風に吹かれて揺れた仁王の髪は、朝日を受けた雪原のように美しく煌めいた。同じ生れつきと言っても、ここまで違いが如実に出るものなのかと一護は心の中で静かに感服した。うん、純粋にこれは綺麗だ。
そんな一護の様子を見て、仁王はおずおずといった雰囲気で話しかけた。

「……気持ち悪いとか、思わんのか……?」
「ん? 何でだよ?」
「いや……」

キョトンとした顔をする一護に、仁王は渋ったように口を濁らせた。頭に蘇るのは幼い頃に言われた言葉や態度の数々。何故わざわざ自分はそんなことを確認するように言ってしまったのだろうか。また自分は傷つきたいのか。
いきなり黙り込んで俯いた仁王の頭に、一護はポンと手を乗せた。

「大したことじゃないんじゃねーの? 少なくとも、俺は気にしないぜ」
「黒崎……」

ゆっくり顔を上げると、フッと笑う一護の表情が目に映った。決してそれは満面の笑みでは無いが安心するものがある。
そしてそのまま一護は言葉を紡ぐ。

「つうかここって、冬獅郎とか浮竹さんとか……他にも白髪がいっぱいいんじゃねーか。だからなんか、それくらいのモンは見慣れたぜ」

なんかってさすがにそれは酷いんじゃないか、と唖然とする仁王に対し、一護はこれで終わりと言わんばかりに仁王の背中を強く叩いて立ち上がった。その際に痛がる仁王は総無視だ。

「んじゃ、そろそろ寒くなってきたし、ルキアんとこに戻るか!」
「……そうじゃな」

ルキアとはまた違う一護の明るさに惹かれて、仁王は静かに口の端を綻ばせた。
二人が立ち去った草原にて、一陣の雪がキラリと光を反射させながら舞い落ちた。


優しさに零れるもの

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