12

あのあと一通り泣いた仁王は、疲れたのかいつの間にか眠ってしまった。自分の身を護るように身体を丸めて眠る仁王を、浮竹は頭を撫でながら優しく見つめていた。

「……雅治」

ルキアはぐ、と膝の上で強く握りこぶしを作った。あんなにも雅治は辛い体験をしたというのに、自分は何も知らずに隣でのうのうとしていたのだ。もしかしたら、無意識のうちに雅治を傷つけてしまっていたかもしれない。何故側に居ながら自分は気づいてやれなかったのか。そんな後悔と不安が押し寄せていた。

「……戦いには二種類ある、というのが俺の自説だ」

唐突にぽつりと浮竹がそう呟いた。
それは十三番隊の者ならば誰もが知っている言葉だろう。一護もどこか思い当たる節があるのか、続きを促すような目を浮竹に向けていた。

「命を護るための戦いと、誇りを護るための戦い。両者は共にそう簡単には譲れないものだ。そして、仲間に傷つけられ、限界まで追い詰められている中で雅治くんが選択したのは――」
「……誇りを護るための、戦い?」

自らに発するように出したルキアの呟きに、浮竹は律儀に頷いた。

「――しかしっ! ならば雅治は何を護ったというのですか!!」

ルキアは噛み付くように浮竹に反論をした。
仲間に裏切られ、命を絶ち、今なお心に傷を負っている仁王。彼は一体何を護ったのだというのか。ルキアにとって、それは犬死に等しい程のものだった。だからこそ、浮竹の言う真意が分からない。

「仲間だよ」
「――っ!?」
「たった二ヶ月でわかる程に、雅治くんは聡明で優しい。それは十三番隊の誰もが周知の事実だろう。確かに、彼はよく詐欺を行うが、それも決して悪戯の域を越えていない。むしろ、落ち込んでいる人を楽しませたりするんだよ」

そして、そんな仁王が本気になれば虐めなんて容易く終わらせただろう。証拠を集めて、仲間に無実を証明し、元凶を追い出せたかもしれないのだ。しかし、最後まで彼がそれをしなかったのは偏に――、

「……仲間の心を護るため……?」

脱力したように座りこむルキアの視界に仁王が映った。この少年は何処までも仲間思いなのだ。どんなに自分の身が傷つこうがどうなろうが、護るためなら己の身体は気にしない。ボロボロになって限界がきて、初めて己の命を護ろうとするのだ。そんなに仁王にとって、その仲間が大切だったのか、仲間というもの自体が大切なのかはルキアには分からなかったが、安心したように眠り続ける彼の姿を見て、何故だか無性に泣きたくなった。


一体どれほど貴方というものは、

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