小説 | ナノ


6

とりあえず、職員室から出てこじゅ先生と教室前へ移動した。

クラスは転校生ならよくあるであろう1-1。安定でした。

「おい、小日向聞いてんのか?」
「え、あ…こじゅ先生ごめん全く聞いてなかった」
「お前なぁ……はぁ…まあいい。要は俺が呼んだら入ってこい、分かったか」
「はーい」

あぁ、よくあるやつだ。
どうせ、自己紹介したあとに質問されるんだろうな。
ちょっと、いや、かなりめんどくさい。

「おい、席に付け!……今日は転校生が来てる、入って来い」

私が面倒くさがっている間にこじゅ先生は教室に入っていたらしい。
教卓から私のことを呼んでいた。

ちょっとだけかっこいいかも。こじゅ先生。

「初めまして、小日向涼花です。よろしくお願いします」

こじゅ先生の横に立って自己紹介。そのあと礼。
我ながらいい子ちゃんになれてるんじゃないかな。

「よろしくねー!涼花ちゃん」
「彼氏いるのー?」

クラスの女子、男子から声がかかる。
意外とやっていけそうじゃん。このままいい子ちゃん演じてれば大丈夫なんじゃない?
少しだけ頬を緩めると、右目に眼帯をつけている男子の視線がこれでもか、と言うほど突き刺さる。
眼帯男子よ、いくら転入生が気になってもそこまで食いつくようには見ないはずだろ、普通は。
見覚えあるとかそんなん信じないからね、私は。

「Ha!涼花じゃねぇか俺の隣に座れよ」

やっぱり伊達政宗だった。
こいつだけはどうも苦手で逃げ回ってた事しか思い出はない。私に会うときはいつも奥州筆頭の面影はなく、私を追いかけ回しボディータッチが激しくなる破廉恥筆頭だ。
今までどれだけ逃げ回ってきたか。

要は、私はこいつが苦手だ。前世から。

今回は運悪く破廉恥筆頭と同じクラスになってしまったがまだ救いはある。頼れる佐助は同じクラスだし、よく見たら智将と呼ばれていた毛利元就もいる。まぁ、覚えているかはわからないけど。
そして、伊達に隣に座れと言われたのを無視して佐助の隣へ向かう。

「おい、涼花俺の席はここだぜ?」
「誰もあなたの隣に座るとは言っていません」

そう言い放つと佐助の隣に座っていた女子の話しかける。

「ごめんなさい、私知り合いが少なくて……佐助とは幼馴染なの…良かったら席交換してくれないかな?隣は伊達くんになっちゃうけど……嫌なら別に大丈夫だよ?」

できるだけ優しく、そして相手を惑わせるように、もちろん佐助とはこっちで幼馴染でもないし知り合いなんて職員室に行くだけで会える。主に先生方だが……
私の演技に合わせてくれたのか佐助も話し出す。

「そうなんだよね……できればここの生活不慣れだし俺様としても協力してあげたいわけよ。席変わってあげられないかな?」

佐助の隣の子は悩みながらも最終的には快く席を交換してくれた。
こんな佐助でも顔はイケメンの部類に入る。もしかしたら譲ってくれないんじゃないかとも思ったけど伊達の隣以外で確実に頼れたのは佐助しかいない。あの時演技に合わせてくれたのも結構助かった。
元就はまるで何もないかのように本を読んでるし、伊達は納得いかないとばかりに吠えている。静かにしていればイケメンだとは思うがなにせあいつはどこの誰よりも残念なイケメンだ。

「佐助、ありがとね」
「どーいたしまして」

今まで静かだったこじゅ先生が話し出す。そういえばいままで喋ってなかったな、と思いつつSHRを再開する。今日は理科が自習だとか、数学は小テストがあるとかそんなこじゅ先生の話に耳を傾けながらほかのクラスに知り合いはいないのかとかそんなことに頭を走らせていた。

新しいクラスは危険とワクワクが同居してます

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