小説 | ナノ


3

「やっぱり大きいよねこの学校」

お兄ちゃんに車で送ってもらってから、私は校門の前でお兄ちゃんがくるのを待っていた。
お兄ちゃんは停めたあとにここまで戻ってきてくれて学校内のちょっとした案内と職員室までの行き方を教えてくれるとのことで……何があっても動くなと釘を刺されて今に至る。

「あ、もしかして君が転入生?いやー早く来てよかったよー」

背後から声がする、明らかに私に向けて。転入生が女だというのを知ってるのは先生だけなはずなのに。
だけどお兄ちゃんが言うにはここを使うのは生徒だけで先生は裏口から入るらしいし……でも無視するわけにはいかないので後ろを振り返る。

「えっ!?はい!……って、え?」

振り返らなければよかったと少し後悔。
だって後ろにいた人が見覚えのある人で、前世で私を―










私を、殺した人だから。

「さ……す、け……」

佐助は私と同じ里の出身で、もう1人のかすがって子もいて三人は幼馴染だった。でも全員が違う主に仕えた、これはありえなくはなかったこと。でも……仲の良かった皆と戦うことになるなんて考えなかったし、考えたくもなかった。
でも佐助は主のためなら友をも捨てる覚悟だったようで……豊臣との戦いで私は主を半兵衛様を守るために命を失った。……かつての友の手で。
いや、忍としては佐助は正しい判断だし、仕事をまっとうしてた。


「あ、涼花ちゃん……久しぶり……」

そう言ってくれた佐助の顔は最後に見た顔と同じ、辛そうな顔で……そんな顔して欲しくはないのにそう言えなくて、佐助のこと恨んでるわけじゃないよって言いたいのに言えなくて、いったい私はどれだけ弱いのか思い知らされる。

「久しぶり……だね、佐助……」
「……覚えてるよねーやっぱり……ごめん、敵軍だとしても逃がすとかできたのに……俺様はこの手で涼花ちゃんを……殺した」

やっぱり、悔やんでたんだね。忍だから仕方なかったのに、戦のある世界だから仕方なかったのに……。



今だけ、時間が止まってるような、そんな気がした。

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