12
佐助に連れて行ってもらった遊園地内にあるレストラン。皆で食べたからっていうのもあるからなんだろうけど、凄く美味しかった。
それに、そこまで高くなかったし。
昼食をとってからは、慶次の提案でおばけ屋敷行って泣かされたりとか、佐助の提案で空中ブランコ乗ったりだとか、色々楽しんだ。
でも一番面白かったのはみっちゃんが興味を持ってた迷宮。
名前から想像できるように、迷路になってるんだけどこれが中々難しくて…。何人かはリタイアしてたかな。
私は右手だか左手だかの法則使って頑張ってたんだけど、階段が出てきた瞬間諦めてリタイアしました。
「楽しかったねー」
「うん、うん」
「でもこれで終わりじゃないよ、ビックイベントが待ってるだろ?」
そう言う慶次に首をかしげて聞き返してみれば、観覧車に決まってるだろ?と帰ってきた。
男同士で観覧車乗って楽しいものなのかな…。女子同士は結構楽しいけど。
「涼花ちゃんは、誰とがいい?」
「私が決めるの?」
「そう、涼花ちゃんが決めるの」
そうは言われても、私は誰でもいいんだよね。でも、決めてって言われてるんだし決めなきゃダメだよね。
観覧車は他のアトラクションと違って、一緒にいる時間も長いし、密室になるし、距離も近づく。
そこまで考えて、私は一人浮かび上がった。
「じゃ、刑部さんがいいな」
そう言えば、みんなが驚く。形部さんは笑っていた。
なぜ、刑部さんがいいと言ったのか。それは、私が仲良くなりたかったから。まだ壁のある刑部に壁を少しでも取り除いて欲しかったから。
ただ、それだけの理由。
「我が良いと申すか、主は変な女よ」
「言われ慣れてますよ」
「でも確かに意外だよ。俺様てっきり毛利の旦那だと思ってたし」
佐助の声に皆が賛同する。
私、別に元就と結婚の約束してるわけでもないし、付き合ってるわけでもないんだけどな…。
元就の問題発言がかなり広まってるな。大変だよ本当に。
「それじゃ、最後のアトラクション楽しんできなよ」
「あれ?慶次達は?」
「俺達は待ってる、楽しんでこいよ」
私と刑部さんだけで観覧車か…。でも確かに、私がいなくなると男同士だもんね、それは待っとくだろうな。
男同士はなんか誤解されそうだし。美形ぞろいだから尚更誤解されそう。一部の人に。
まぁ、いいや。刑部さんと仲良くなる方法だけ考えとこう。少しでも、仲良くなれるといいんだけど。
「二人きりは初めてですね」
「いつもは三成が居る故なァ」
「みっちゃん、刑部さんのこと大切にしてるもんね」
当たり障りのない話をするも、どこか感じる分厚い壁。それが少しだけ辛い。
信用されてないみたいで、怖い。
何もできなかった私が、憎い。
「刑部さんは、私にも壁を作るよね」
「はて、そうだったか?」
「私は、刑部さんもみっちゃんも半兵衛様も家族だと思ってる。豊臣は家族だったって、ずっと思ってる。だから、その壁が辛い」
そう言えば、形部さんは目を見開いた。
私からこんなことを言われるなんて、想像してなかったからだろう。
「なに、我も主のことは家族だと思っておる。だがな、主が怖いのよ。我の穢れた手で主を穢すのが、怖いのよ」
「形部さんは穢れてなんかないよ。形部さんが穢れてるなら、私はもっと穢れてて醜いよ」
「涼花、そんな顔をするな。我は主の明るい顔が見たい」
それに刑部で良い。
形部は私の頭を撫で、そう言った。刑部との間にあった壁が無くなったように思える。
だって、今まで私から触れることはあっても、刑部から触れてきたことはなかった。なのに今、刑部から触れてくれている。
これは壁がなくなったと思っていいんだよね?
観覧車はもうすでに、頂上についていた。
prev / next