小説 | ナノ


12

ジェットコースターの最前列で荒れ狂った私は、猛烈な吐き気に悩まされていた。

「気持ち悪い……」
「はしゃぎすぎたよ、ごめんね」
「少し休みますかね」

ジェットコースターで気分が悪くなったのは私だけだった。皆強いな…。
まだ気持ち悪いや、次乗るのはゆっくりできるものだと嬉しいのだけど。
真田くんとか、元親がいるからまた絶叫系行きそうだな。誰か止めてくれえる人がいると助かるのに、みんな止めないから。

ベンチに座ってぼーっとしていると、真田くんが私にジュースを渡してくれた。

「ありがとう、真田くん」
「気分はどうでござるか?」
「まだちょっと気持ち悪いかな、でももう少ししたら回復すると思うから安心して」

そう言うと少しだけ、真田くんの顔に笑顔が戻ってきた。
そう言えば、皆私の心配して暗い顔してる…?なんだか申し訳ないな。
真田くんから貰ったジュースを少しずつ飲んで気分を落ち着かせる。
気持ち悪さもどうにか楽になってきた。

「なーに皆してつまんない顔してんの!私はもう元気だし、ね?」
「まだ完全にというわけではないな」
「みっちゃん鋭すぎ、前髪も」
「何だと…?」
「なんでもないでーす」

こんな感じで大丈夫でしょ。皆ももう暗い顔じゃなくなったし、これで元通り。
我慢できる気持ち悪さだし、座らなきゃいけないほどじゃないと思う。
私が元気になったのを確認した佐助が口を開いた。

「そんじゃ、ちょっと早めの昼食でもとりますか」
「昼時は混むからな」
「レストランみたいなところだし、メニューも多いから涼花ちゃん達も平気だと思うよ」

みっちゃんといい佐助といい、私の周りの人は鋭いな。
私そんなに演技下手ってわけでもないから、バレないと思ってたのに。
ずっと一緒にいた人は違うね、やっぱり。ちょっとのこともわかるんだ。

(涼花は俺様に嘘つくとき必ず一瞬足元を見るんだよ。)
(貴様の嘘は分かりやすい。つくならもっとバレないようにするんだな。)


そう言えば、二人は私が嘘をつく時の癖を知ってるんだっけか。
400年近く経ってるのにまだ覚えてるんだ…嬉しいような嬉しくないような。

少し早めの昼食は安値で済ませたいな。今月ピンチだし。

私の声は聞こえてました

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