小説 | ナノ


8

「あ、私の連れの石田三成と大谷吉継です。知ってると思うけど」

そう言って、二人をみんなに紹介する。そこまで変わってないから、わかってたと思うけど。
でもやっぱり、普通に歩いてる刑部さんを見て皆驚いてるようだ。昔は神輿に乗って浮いてたもんね。仕方ない。

「こうやって会えるとは思ってなかったぜ、なぁ毛利」
「それも、昔の戦いがあって今がある。今が平和なおかげぞ」

元就の言う通りだと思う。昔がなければ今がなくて、もし、家康が関ヶ原で勝ってなかったらこんな未来じゃなかったのかもしれない。私があの時死んでなければ、半兵衛様が病を患ってなかったら、そんな空想の世界なんていくつでも挙げられる。
でも、それは今とは違う未来になってしまう、同じ未来にはならない。
あの時、家康が勝ったから今がこうしてある。こうやって、皆が出会えたのも、強い何かの力なのかもしれない。

「で、今日はどこに行くの?」
「竜の旦那と鬼の旦那がさ、遊園地のチケット貰ったらしくて、それで遊びに行こうってなったわけ」
「それって、無料チケット?」
「あたりめぇよ」

良かった無料で、最近出費がひどいからあんまりお金使いたくなかったんだよね。
一応どこに行ってもいいようにそれなりの額のお金は持ってきてるけど。

「それじゃ早速向かいますかね!」
「慶次も相変わらずだねー」
「せっかくの遊園地なら、楽しまないとね」

長い髪を高い位置で結んでいる慶次を見ると、邪魔にならないのかなんて思うけど、よく考えたら私もそれなりの長さなんだよね。
駅の改札へと向かう皆のあとに、私達三人がついていく。私達はここらへんの地形なんて覚えてないし。
みっちゃん達に関しては昨日引っ越してきたばっかりだし…ね。

佐助達の言う遊園地は、結構大きいここらへんでは有名な遊園地らしい。
しかも、アトラクションの種類も豊富で、大人から子供まで楽しめるような遊園地とのこと。
今日スカート履いてこなくて正解だった。遊園地にスカートじゃ思う存分楽しめないからね。

電車に乗り込んで全員で固まって座る。まぁ、座ってるのは私と、刑部さんと元就ぐらいだけど。他の皆は座ってる私達の前に固まって立ってるもんだから、威圧感が凄い。背が高かったり、体つきが良かったりする人たちが多いからね、そりゃまぁ、こうなりますって。

「にしても涼花、変わんねぇな」
「元親だって、変わってないじゃん」
「それを言われちゃしょうがねぇな」

豪快に笑ってみせる元親、昔のようなアニキっぽさも残ったままのようだ。
変わったところといえば眼帯が見当たらないところ。ただ、髪の毛でこっちから左目は見えないけど。病気とかではないみたいだけど…。

「皆変わってないから、変な安心感があって困る」
「でも、案外変わってたりするぜ?毛利は昔より性格が丸くなったし」
「長曾我部は、中身が姫若子ぞ」

瀬戸内はどうやら、昔とは違ってそれなりに仲が良いらしい。いいことだと思うよ、私は。
どっちも好きだしね、仲良いほうが幸せだよ。

「真田は前に比べちゃ、大人しくなったじゃねぇか?」
「昔の旦那には手をかけさせられたよ、本当」
「佐助おつかれ」

そういえば真田くん、話すどころか目を合わせてくれないんだけど、そんなに嫌われてたかな私。怖いんだけど、大丈夫かな?
でも、私のこと嫌ってるなら佐助も私のこと呼ばないだろうし、なんでだろう…

「…旦那、もしかして誰か分かってない?」

そう聞く佐助から目線を逸らす真田くん。
あぁ、真田くん私の認識は涼だものね、仕方ない。

二人が一人に戻るとき

prev / next

[ back to top ]



人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -