小説 | ナノ


6

心配になって時計を見ると家を出る予定時刻から5分も過ぎていた。

「えっ、ちょっ、今からバスで待ち合わせ場所行ったとしても5分遅刻……」

これはやばい。
バッグ持ってみっちゃん迎えに行かないと…!

焦って昨日のうちに準備したバッグを荒々しく掴んで適当に髪を整えると、ドタバタと音を立てながら玄関を出た。
下の人すみません。朝から騒がしくて。

みっちゃんの家のチャイムを鳴らすと、同じようにドタバタと音を立てて出てきた。

「ま、待たせたか?」
「待ってないけど下手すれば遅刻しそう」
「刑部!少し急ぐらしい」
「我は大丈夫ゆえ安心しやれ、今日は足の調子も良い」

足の悪い刑部さんに無理をさせてしまうことに心が痛くなった。
今日は遅刻してもいいか。
そっとバッグからスマホを取り出して、佐助にごめんちょっと遅れる。とだけ送って、みっちゃんたちにゆっくり行こうか。って笑いかけた。

「遅刻してしまうのだろう?」
「うん」
「我なら平気だと」
「いいんだよ、どうせ急いでも遅れちゃうから。謝れば平気だから、ね?」

不満そうな顔をしながらも、みっちゃんと刑部さんは急ぐことはなく、ゆっくりとバス停まで向かうことにした。

バッグの中でなったスマホにも今は反応しないで、こうやって並んで歩けることにちょっとした幸福感を感じていた。

佐助怒ってるかな。怒ってるよね、ごめん。でもやっぱ、みっちゃん達は家族みたいなもんだから、無理させるの嫌なんだ。
着いたら私が怒られるからさ、本当ごめん。

「涼花、遅れてもいいのか?本当に」
「大丈夫だって、遅れるかもって言ってあるから」
「我に無理をさせないためではあるまいな?」
「……うん」

豊臣の皆は私の家族みたいなものだから。
少しでも皆には幸せでいて欲しいんだ。昔みたいなことはもう見たくないし、知りたくもない。
笑ってて欲しいから、私の心配なんてしないでよ。恥ずかしいな。


遠回りの思いやり

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