小説 | ナノ


3

お兄ちゃんが出かけたあと私は特にすることもなく、友達とメールしたり、みっちゃんに無理やり引越しの片付けを手伝わされたりして一日を過ごしていた。

もちろん、手伝わされた分の報酬……といってもちょっとしたお菓子とみっちゃんの入れてくれたお茶だけども、それでも報酬としてしっかりと味あわせてもらった。
みっちゃんの淹れるお茶はすごく美味しいから結構嬉しかったりもする。というか、淹れてくれること自体が貴重なんです。

「うん。こんな感じだね、もうすぐかな?」

私の家のチャイムがなった。来たのは多分あの人たち。

「はーい、今行きまーす」

上機嫌な声とともに、ドアを開けると私の呼んだ二人が並んで立っていた。

「来てやったぞ」
「素直に夕食が楽しみだったと言えばよかろ」
「刑部!私は楽しみにしていたわけではない!」
「はいはい、玄関じゃ近所にも迷惑になるし入ってよ。ちょうど出来たしね」

みっちゃん達を夕食に誘ったのはいいが本当に来てくれるとは思ってなかったので、少しだけびっくり。でも、約束はしっかり守るからね……みっちゃんは。

「あ、刑部足大丈夫?この距離だからって歩いてきてるけど辛かったら肩貸すよ?」
「何大丈夫よ、主らは心配のしすぎ故な……まともにリハビリもできぬ」
「でも、無理するのはリハビリじゃないからね?辛いんでしょ、意地はらないの」
「ヒヒッ……相変わらず主に嘘はつけぬな、ありがたく借りるとするか」
「ん、じゃ行こっか。あ、みっちゃんそこの扉開けて、その部屋だから」
「ここか?」
「そうそう」

私は刑部に肩を貸してるから、客人ながらも先に上がっていたみっちゃんに扉を開けてもらった。

「ありがとう」

多分私は笑顔だと思う。こっちに来てからはため息ばっかりだった気がするし、まともに笑ったのはお兄ちゃんといるときだけだったはず。

「っ……あぁ」

どうしたんだろう?熱……ではないから光の反射かな?まさか、照れてる……なんてことはないだろうし。

「あ、そこ座ってて、いま料理持ってくるから」

今日のメニューはパスタとサラダ。少し少ないかもしれないけどあまり買い物に行かないし、行っても私の分または二人分しか買わないから四人分作れるのはこれぐらいしかなかったというわけ。

「えっと……これが私でこっちがみっちゃんで刑部でしょ……お兄ちゃんは……」

ガチャ

「ただいまー、友達が来てるのかい?」
「あ、お兄ちゃんおかえり。みっちゃん達を夕食に誘ったの」
「そうか、これからよろしく頼むね。三成君、吉継君」

一瞬時が止まる。そしてやっぱりとしか言いようのないこの一言。

「半兵衛様!!」
「やれ涼花と竹中殿は兄妹であったか?」
「いや、実際は親戚だけどね。お兄ちゃんがそう呼んでって言ってたからさ」
「涼花貴様ぁ!半兵衛様をそのようにお呼びするなど!」

「あ、みっちゃんが私の名前呼んだ」

「珍しいこともあるものよなァ」
「あ、ちなみに三成君涼花は僕の大事な妹だから何かあったら守ってあげてね」
「半兵衛様!了解しました!」

取り敢えずご飯食べましょうよ

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