再会


「……のぞ、み?」

目の前には愛しいお前がいる。
これは夢か、

「!」
「九郎?」


ああ、ここは宇治川神社か。
懐かしいな、初めて望美と出会った場所か。


「九郎!」

九郎は思わず望美に近づこうとしたが弁慶に手で制されてしまう。
「……望美さん、九郎と面識は…?」

「い、いえ、…ありません。」
「……」

望美と面識がない?
そうか、これは走馬灯なのか。
あの光はやはり敵の攻撃で…なら俺は死んだのか。


「………」
「…とりあえず望美さん達は僕らが保護しましょう。」

望美を見たまま呆然としている九郎に弁慶はテキパキと処遇を決めた。


「はい、ありがとうございます。」
「ではこちらへ。僕が付き添います。九郎、貴方は早く戻って下さい。」
「あ、ああ…」

生返事をしながら、望美達が去っていくのをただ見ている九郎。

「九郎、」
「!!…なんだ?」

そのせいか近くに白龍がいることに気がつかず無言で驚いた。

「神子はこれを繰り返してきたんだよ」
「それはどういうこ…」
「白龍ー!おいでー」
「うんー!」

問いただす前に望美の呼び掛けに応えて行ってしまった。





繰り返してきた…?
何を?何のことだ?





「のぞみ…」

名前をポツリと出してみても誰からの返事もない。
当たり前だ、闇色の帳が辺りを不安にさせるように覆い隠している時間である、寧ろこの時間に誰かがいればそちらの方が危ない。

その闇色は俺の心をそのまま写し出したかの様な色で俺の心は謎の不安で侵食されていく。


「(望美は大丈夫だろうか……)」

もう何度目かの自問。
本心ではまだ望美だから大丈夫だと思うが、それはあの時の望美だからな訳で、あのことはただの俺の夢なのかもしれない。だがしかしそうすると、俺が望美を知っている事がおかしくなる訳なのだが…なんなんだ、もうよくわからなくなってきた。

「睡眠薬が必要ですか、九郎。」「…弁慶」

後ろをとるのが本当に上手いな、と変な事に感心してしまった。

「なんですか、僕に教えてほしいこととは。色恋沙汰ですか?」
「……時代を遡る事は可能なのだろうか?」
「ほぉ、また珍しい質問ですね。…そうですね、可能であると言われていますよ、龍神がいれば、ですけどね。どちらかと言えば龍神の鱗が時空を越える力を持つと聞きましたが、どうしたんです?こんな事を聞いて。」

弁慶は自分の茶化しにのってこなかった九郎を見て、真剣に尚且つ表情を探りながら答えた。

「望美さんですか?」
「!いや、関係ない。」

「…九郎は相変わらず嘘をつくのが下手ですね。では僕はこれで戻ります。それ早く書き上げて望美さんに会いにきたらどうです?」
「なっ!!」
「それでは。」

スタスタっと去っていく弁慶の背中を見送り、九郎は書を書き連ねていくのだった。


どうやら俺は時を越えてしまったらしい。
だが何故、俺が時を越える必要があったんだ…?










数日が経った。
俺はなかなか景時の屋敷に顔を出せずにいた。
なぜだかはわからないが、何か望美とは会わない方が良いように思えたのだ。
気付けば自分の屋敷で兵法を書き写して飽きれば剣の稽古をするという日々を送っていた。


「(970、971、972、973…)」


「あ、あのー…すみませーん。」

「(980、981、982…)」


「(人、いないのかな?)お邪魔しますよー!」


「(999、1000)…ふー」

さすがにこう毎日振るってると1回で1000は楽になってきてしまった。数を増やした方が良いだろうか。

「茶でも入れるk「あ、あの…」
「なっ!!!」


そこにいるのは望美であった。

「さっきから呼んでるのに…そんな驚かないで下さいよ。」

「す、すまない。」

「あ、私のことわかりますか?一回しか会ってないですけど…春が「望美。」あ、覚えていてくれたんですね!」

「あ、あぁ…」
「あ、それでこれを…頼まれていた物だとか。」
「いや頼んだ覚えは…景時か?」
「そうです!」
「そうか、ありがとう。」

中を見るとまず目に飛び込んできたのは柿。…柿?

「これは…」
「今日初めて市へ行って…柿が売っていたので九郎さんにとおもって!」
「弁慶に聞いたのか…?」
「何がですか?」
「いや、何でもない。有り難くいただこう。あ、茶でも飲むか?せっかく来たんだ、煎れてこよう。」
「え、そんな…!大丈夫です。」「気にするな、今ちょうど休憩をしようとしていたところだ。」
「あ、じゃあお言葉に甘えて…。」
「ああ、そこで座って待っててくれ。」

ちょこんと縁側に座ったのを確認した九郎は茶を煎れに向かった。

「ほら」
「ありがとうございます。」

渡された湯呑みを両手で受け取り礼儀良く飲む望美。

「…美味しい」
「そうか。」
「…」
「…」

ずず…
二人は喋る事がなく気まずいままお茶だけを飲み進めていく。

「(まずい、このままでは引き留めた意味がない!何か、何かないか)」

「九郎さん」
「ん、あ、おお、なんだ」

自分が考えて慌ててたせいか変な声を出してしまったと内心焦るものの望美の真剣な瞳に顔を引き締める九郎。


「私に剣の稽古をつけてください」

「…何故だ」
「信じて貰えるかわからないですけど、私がこの世界に来たのはこの世界から怨霊を浄化させる為なんだそうです。」

「…(知っている。お前はみるみる強くなった。花断ちを修得して何度も戦に出て…気付けば俺が背中を預けられる唯一の奴になってしまっていた。)」

「この世界の怨霊浄化には戦に出ないといけないんです。平家と戦わないと…だからわたしは強くならないと。」
「…断る」
「な、何でですか!」
「お前は女子だ、何故刀をとり自ら戦に赴く?!」
「女だからとか関係ないでしょ!」
「弱い者は死ぬんだぞ!」
「私は死にません!!」
「そんな保証どこにあるんだ!」
「何で九郎さんにそんなこと言われなくちゃいけないんですか!私だって別に死ぬ為に戦おうなんて思ってないです!1番先陣切って戦ってる九郎さんになんでそんな事言われなくちゃいけないんですか!」
「俺とお前を一緒にするな!!」
「!!もういいです!お茶ご馳走様でした!!」

「のぞ…」

ダッ

ま、またやってしまった…
何で俺はアイツと会う度に喧嘩してしまうんだろうか、いやそもそもアイツは女としての自覚が……イカンこれではずっとこのままだ。もう考えるのは止めよう…

「はぁ……ん?」

望美が走り去った道の途中に何か白い物があった。

「……鱗…か?」

何故、このような物がここに…これは望美の物という事でいいのか?
…うろこ


『……時代を遡る事は可能なのだろうか?』

『ほぉ、また珍しい質問ですね。…そうですね、可能であると言われていますよ、龍神がいれば、ですけどね。どちらかと言えば龍神の鱗が時空を越える力を持つと聞きましたが、どうしたんです?こんな事を聞いて。』





まさか、な。











<続>
まだ続くこのシリーズw
完結はいつになるのか!
そして久しぶりの96さんに口調が全然わからない!

のんたんサイドも書いてしまいたいしかしここでやるとある意味ネタバ…あれこの発言もネタバレか?!

携帯版の忍者サービスが終了していてPCがないとカテゴリ変更が出来ない(;_;)

早くPCで打ち込みたいよぅ携帯辛いよう
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2013/04/10 23:14 | Comments(0) | 遙かなる
白雪姫と王子様の欲望(ヒノ望)
「白雪姫ってロマンチックだよねぇ、私も美人なお姫様がよかった〜」
「しらゆきひめ…?」
「望美、あっちの世界組に言ってもわかんねーぞ。まだ絵本なんてない時代だからな。」
「しらゆきひめってなんだよ、」
ヒノエが二人しかわからない会話をしていたのでムッとしながら将臣に聞く。

「あ〜、簡単に言うとお姫様が敵の術中に嵌まって毒林檎を食べちまうんだ。そんで生き返らないことを嘆いてた小人達の前に王子様が現れてキスをして生き返らせて、自分の妃にしたっつー話よ。」
「もー、将臣君、話すっ飛ばし過ぎてロマンがないじゃない!」

「まぁいいだろ、わかりやすかったよな、ヒノエ?」

「そうだね…今おまえが何されたいかもわかったし。」

「へ?」

「んじゃま、俺はバイト行ってくるわ」

「え、将臣君?」

「ふふ。さぁ俺の姫君」

「え、きゃ、ひ、ヒノエく…ん」


と、とてつもなく長いキスを施される望美であった。



「あんな遠回しにせがまなくてもいつでもお前がしてほしいときにしてあげるよ、俺ののお姫様?」
「はぁ…
(私はヒノエ君に釣り合うようになりたい意味でお姫様になりたいって言ったんだけどな…)」

















<了>

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