5話 お泊り



山本の携帯はメールを受信した。
ピピピ

「件名:明日
 本文:家に12時。」

とうとう、8月だ。
初めての雲雀の家訪問。
やべぇ、すげー今から心臓がバクバクしてる。
返事返事っと





ピピピ
「件名:not title
 本文:わかった!
    今からすげぇ楽しみなのな♪
    じゃ、また明日な!おやすみ」

雲雀はきたメールを見て眠りに入った。





ピピピピピピピピピピピー
目覚ましのアラーム音、朝だ。

「ん…。」

体が重い。なんだろ、この倦怠感。
今日は山本が来るから早くから準備しなくちゃ…。

雲雀は体に鞭打ちベッドからのそのそと出る。
床に足をつくが…。

「!!」

バッターン
足がまともに動かないのかその場に倒れてしまった。
雲雀は意識を失った。





―12時―

「(うわぁーめっちゃ緊張する。
どうしよ、なんて言いながら入るべきだ?
よぉ!か、いや、ただいまなんて言ってみたいな。
それはちっと早いか。んー…)」

とりあえず押すかってことになって山本はインターホンを押す。

ピンポーン ピンポーン

『…』

「ん?(留守ってことはねぇよな?何ででないんだ?聞こえてないのか?)」

ピンポーン ピンポーン
山本はもう一度インターホンを押す

『…』

「(応答なし…おかしくね?)」

ガチャ―

「おじゃましまー…す」

山本はドアノブに手をかけ回す。
すんなりと開いたドアに感謝しつつ靴を脱ぎそのまま中へ。

「アレ?いない。」

いちばん奥へ…リビングらしきとこに出たがそこには誰もいない。
雲雀らしいな、余分なものがねぇなー。
黒でそろえてるとこ見ると流石だな。

「(おっと、そうじゃなくて…どこだ、ヒバリ…。)」

ガチャ ガチャ ガチャ ガチャ

山本は手当たり次第扉と言う扉を開けて行った。

ガチャ

「ヒバリ!!」

寝室にきた山本。
雲雀はベッドの下でうずくまっていた。
それを見た山本はすぐさま雲雀の元へと駆け寄り抱き起こす。


「はぁはぁはぁはぁ。」

「ヒバリ、ヒバリ、ヒバリ!!」

山本は雲雀を揺さぶる。

「はぁはぁはぁはぁ、やま…もと?」

やっと目を覚ます雲雀。
額にはびっしょりと汗をかいている。

「大丈夫か、ヒバリ!!」

「ん…なんか身体が重くて熱い。」

ヒタッ
山本は雲雀の額に手を置く。

「(熱すぎる…ヤバい!!)
とりあえず、ベッドに入ろうな、ヒバリ。」

山本は雲雀を姫抱きした。

「え。せっかく君がきたんだからお昼作るy」

「ダメなのな!
ヒバリ、熱があんだから!」

「大丈夫だよ、こんくらい。」

雲雀は降りようとするが

「寝てろ!」

「!!」

突然怒鳴った山本に驚く雲雀。

「あ、わり。
ちゃんと待っててくれなのな。
お粥作ってくっから。」

「…うん。
ありがと、山本。」

「良いって、良いって」

ガチャ パタン

「はぁ。」

最悪だ。
せっかくいろいろと準備してたのに…。
熱なんかに僕が負けるなんて。

―数分後―

「ヒバリ〜お待たせなのな!」

「ん。」

目の前に出されたのはおいしそうな卵粥。

「食べれるか?」

山本はレンゲを持って雲雀に渡す。

「うん…。」

ガタガタガタガタ
そう言ったものの熱が出過ぎてるせいか手が震えて使えない雲雀

「ハハッ。ほら、貸してな?」

雲雀からレンゲを取りお粥を一口分掬い

「ふーふーふー。ほら、ヒバリ、あーん。」

「……じ、自分で食べるから良いよ!」

レンゲを取ろうとした雲雀だが

「だーめ。ほら、口あけろって!」

「……。」

無言で口を開ける雲雀。

「(可愛い…。)」

もぐもぐ

「……美味しい。」

「そっか。良かったのな!」

「山本…次。」

「あ。あぁ、わりーわりー。」

雲雀が口を開ける。
山本はさっきと同様にお粥を掬い冷まし雲雀の口へと運ぶ。
それを素直に食べる雲雀。


そのあと、ずっと山本は雲雀の看病をしていた。
そして、夜―

「ん…山本…。」

「お、目覚ましちまったか。」

「うん。」

「だいぶ熱も下がってみたいだな!」

山本は雲雀の額に手を置く。

「ごめん。」

「ん?」

「せっかく泊まりに来たのに…。」

「良いって、良いって。
雲雀の寝顔拝めたしなっ。」

「〜〜〜〜〜っ!」

また君は…恥ずかしいセリフをサラッと言う。

「はは、ヒバリ顔真っ赤!」

「〜〜〜五月蠅い!」

「あ、風呂入るか?まだ入れるぜ。」

「いらない、明日はいる。君は入ったのかい?」

「あぁ、まぁな。」

「そう、ならいい。」

「んじゃ、俺はソファで寝てるからなんかあったら言えよ。」

ガチャー
山本が寝室の扉をあける。

「やま…もと。」

布団から半分だけ顔を出す雲雀。

「ん?」

「…ここで寝て。」

「え。」

「手、握って…てほしい…。」

「?!?!?」

「ごめん、やっぱなんでもない!
おやすみっ!!!」

「ヒバリっ!!」

パタン 
山本は扉を閉め、ベッドの横へと座る。
顔はニコニコと言うよりはニヤニヤしていて締まりがない。

「寒くない?」

「あぁ、大丈…くっしゅん!」

「…今日だけだからね。」

盛大な山本のくしゃみに皺を寄せる雲雀。
雲雀はすこし寝る位置をずらし布団を開ける。


「(それは入って来いって合図なのな…?)
え、い、いいのか?!」

「今日だけって言ってるでしょ。
僕だって寒いんだ、早くしなよ。」

「さんきゅな、ヒバリ!!」

ギュっ

「ちょ、」

「あー、温けーっ!」

雲雀を抱きしめる山本。
どうやら我慢してた分が今きたらしい。

「はぁ…。もういいよ、お休み。」

「おやすみ」

数分して雲雀の規則正しい寝息が聞こえた。

「(可愛いのな…。あ、俺この状態で寝れっかな?!)」

山本は今となって事の重大さに気づくのだった。

「(羊でも数えっかな…。)」

山本の長い、長い夜は今から始まるのだった…。





ホントはまだちゃんと寝れてはいない。
僕もドキドキしているから。
彼の体温が心地良くてもう寝そうだ…。
明日は朝ご飯作ってあげよう。
彼の要望でエプロンつけて。
そして起きてきた彼に一番に「おはよう」って言おう。
そればかり考えながら眠りにつく僕だった。












<続>

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