最高で最悪な誕生日



彼女の笑みに気づいたのもつかの間俺は彼女を押し倒していた。
足元をよく見ると細い糸が机の脚と脚を結んでいた。
俺は見事にそれに引っかかったのだ


「お前…。」

「だって、山本君が他の子が好きって言うんだもん。」

「だからって…!」

「私何でもするよ?
だからそんな子のこと忘れてよ…。」

その女は俺の首に腕を回してきた。
気持ち悪い、早くヒバリのとこへ…
そう思った矢先だった。




ガラガラガラ




ヒバリが扉の近くで呆然と俺たちを見て固まってしまった。






「ヒ、ヒバリ。」

これは誤解なんだ!!
言うつもりが。







「……邪魔したね。」


ヒバリの泣きそうな顔を見た。
そのままピッシャン!と扉が閉まる。


「ヒバリ!!」

待ってくれ!
これは誤解なんだ、俺は、俺は…!!
早く弁解しなくちゃ、終わる前に変な誤解を解かなければ。
そう思ったら体が動くのが早かった。
彼女の腕を振りほどき一目散にヒバリの後を追っていた。
後ろから女の慌てた声が聞こえる。
気にしてる暇はない、ヒバリが先だ。





ヒバリ、ヒバリ、ヒバリ、ヒバリ、ヒバリ!!!!!!!!!!






無我夢中で雲雀の元へと向かう。
応接室の前、

ガチャガチャガチャガチャガチャ
ドアノブを回しても開かない。
鍵がかけられてる。
「ヒバリ!!」
どんだけ叫んでも返事はない。

「諦めねぇかんな。」

俺はなぜあるのかわからないがちょうどそこに立て掛けられてた竹刀を使って扉をぶった切った。
中に入るとこんなに音を立ててるのに珍しく気づいてないヒバリがソファに寝っ転がっている。




「や…まもと。」


「何なのな。」

よかった!
まだ俺のことを…

「!!!!!」

俺がいるのにやっと気付いてか
ヒバリは顔をあげる。

「(泣いてた…?
あのヒバリが……??)」


俺のために?
すげぇ嬉しい。


「山本…何しにきたの。」

「何しにって…ヒバリに会いにk」

「嘘つかないでよ!」

嬉しくてへらへら笑いながら言ったら後ろを向かれてしまった。
ホントのことなのにな。

「ホントは女子がいいんだろ!?
さっさとあの女子んとこ戻りなよ!!
僕は、僕は…

もう君なんて見たくなi……!!」


不謹慎かもしんない。
けど、うれしかった。
ヒバリがそこまで想ってくれてるなんて知らなかったから。
だから思うがままにヒバリを後ろから抱き締めた。
案の定暴れだすヒバリ。
でも耳が真っ赤のは俺にバレバレ。

「(可愛い…)」

怒鳴り散らすヒバリ。
俺もそれに答える。
だって、それは誤解だから。

「(五月蠅い子にはお仕置きだな。)」

と、俺はキスをした。
愛しさと嬉しさと…今の気持ちを言葉にできないこの感情を伝えたくて。
少しして口を放して俺と向かい合わせる。


「(ますます真っ赤。)」

可愛くて愛おしくて思ってることをそのまま吐き出した。

「俺はヒバリ一筋なのな。
女子とあんな態勢でいてもムラムラしてこねぇよ、
今ヒバリとキスしてる時の方がよっぽどドキドキする。」

ヒバリの手を握って俺の胸へと引きよせる。

どくどくどくどく

早い鼓動が手からヒバリへと伝わる。
すごく恥ずかしいけどホントのこと。

「……。」

ヒバリは俯いてしまった。

「それにあれは俺が押し倒したんじゃなくて押し倒されるようにされたんだって。」

真相を話すと驚いた顔。
すぐに俺から離れてしまった。
照れ隠しなのな!



「ヒバリは俺のこと嫌い?」


ヒバリの気持ちが分かりながらもこう言う俺は確信犯なのかも。



「………そんなわけないでしょ。」


ポイッと俺に飛んでくる箱と俺へのとどめの一撃。



「大好き…ハッピーバースデー、山本。」



「はは、ありがとうなのな。」



真っ赤にしながらも笑ったヒバリの顔はほんとに綺麗で俺は真っ赤な頬を隠すようにヒバリを抱きしめた。
そっとヒバリが俺の首に腕を回してくれた事に俺はこれ以上にないプレゼントを貰った。


最高の誕生日だ。




来年も再来年も、ずっと先も俺の隣で俺を祝ってくれますよーに。



山本視点<了>

- 28 -


[*前] | [次#]
ページ:




人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -