最高で最悪な誕生日


「遅い…。」

遅いのはいつものこと。
彼は僕達の関係がばれない様にいつも人が少なくなってからここへ訪れる。
僕の為にばらさないようにしてくれてる。
だけど、今日はいつも以上に遅い。
グラウンドを見るとほぼ人はいない。
この学校ですら人の気配を感じないのに…
僕は心配になって彼の教室へ行くことにした。



「(さて、なんて言ってやろうか…。)」

足取りは軽やかにコツコツと。



ガラガラガラ


僕は信じがたいものを見た。


「ヒ、ヒバリ。」


山本…と山本の下には女子。
簡単に言うと山本が女子を押し倒してる。
女子は山本の首に腕を回し上目づかい。


………そういうこと


「……邪魔したね。」

ピッシャン!
力の限り扉を閉めた、次の瞬間僕は走り出していた。
遠くで「ヒバリ!!」と呼ばれた気がする。
気のせいだ、事実だったとしても今はアイツの声なんて聞きたくない。



タッタッタッタ
廊下に音が響く。
バッタン

「お疲れ様です、委員長。」

「草壁、一人にしてくれる。」

「わかりました、書類置いときます。」

「……。」

「失礼いたしました。」

彼が出て行ってから僕はすぐに鍵をかけた。



ボスっ
ソファになだれ込む。



わかってたじゃないか。
あいつも男、いずれはこうなることくらい。
なんて甘いんだ、僕は。
こんなにも悔しくて悲しいなんて…
最強の風紀委員長がこんなんじゃ世も末だね。
こんな事実、今日知りたくなかったよ。


君の為に買ったプレゼントも



君に言おうと思ってた言葉も


全部全部無駄になった。


「バカ本…。」


本気で好きだったんだよ、君のことが。
ほら、めったに泣かない僕が泣いているんだから…。


「や…まもと。」

「何なのな。」

「!!!!!」

僕はあわてて顔を上げると

「山本…何しにきたの。」

「何しにって…ヒバリに会いにk」

「嘘つかないでよ!」

へらへらと笑った顔できた山本に腹が立った。
なに、罪悪感もないの、それほど僕よりあの子が良かった?
僕は山本の顔を見ないために背を向ける。
視界に僕の買ったプレゼントが映る。

「ホントは女子がいいんだろ!?
さっさとあの女子んとこ戻りなよ!!
僕は、僕は…

もう君なんて見たくなi……!!」

後ろから山本に抱きしめられてる。

「はなして!!」

「いやだ、離さない。」

「もう終わったんd」

「終わらせねぇよ!」

「五月蠅い、君が先に…。」

「誤解なんだって。」

「言い訳なんて聞きたくnっんん。」

山本の唇が僕のそれと重なる。


言い訳を聞かぬかのように深いキス


ちゅ


と軽いリップ音を残してそれが離れると山本は強制的に僕を向かい合わせた。


「山も」

「俺はヒバリ一筋だからな!
女子とあんな態勢でいてもムラムラしてこねぇよ、
今ヒバリとキスしてる時の方がよっぽどドキドキすんだぜ…?」

雲雀の手を握り山本は自分の胸へと引きよせる。

どくどくどくどく

早い鼓動が手から雲雀へと伝わる。

「……。」

僕は下を向いた、だってこんなの卑怯だ…。

「それにあれは俺が押し倒したんじゃなくて押し倒されるようにされたのな。」

「え。」

勘違い…?
僕は君のこと好きでもいいの…?
僕はさっき視界に映したプレゼントの元へ移動した。


「ヒバリは俺のこと嫌い?」


「………そんなわけないでしょ。」


僕はポイッと机の上のプレゼントを投げた。


「大好き…ハッピーバースデー、山本。」


「はは、ありがとうなのな。」

そう言って山本はまた僕を抱きしめる。
だから僕は今日だけは素直に山本の首へと腕を回した。



来年も再来年もずっと先の彼の誕生日を彼の隣で…




雲雀視点<了>
→山本視点

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