最終話 終わりとそのあと‐君と僕の夏‐


ピッピ…

「……。」

点滴の落ちる音だけが響く病室で山本は雲雀の手を握り目がさめるのをひたすらに待っていた。

ガラガラ−

「?!」

扉が開く音がしたので後ろを振り向くとそこには雲雀のお祖母さんが立っていた。

「・・・・・」
「・・・・・」

スタスタ

そのまま彼女は雲雀の側へと行くとただ眠っているだけの姿を見てホッとしたような表情をした。
山本はその様子を見ると病室を後にした。

「・・・・・・」

「ヤマモト!ヤマモト!」
「?!」

「・・・・ヒバード?」

「久しぶりだな、山本武」
「草壁さん!」


「ふたりとも無事だったんですね!」
「あぁ。それより委員長は?」
「まだ寝てる。今雲雀のばあちゃんも会いに来てる。」
「そうか・・・。」
「すいません、俺ちょっと外の風あたってきます!」
「あ、おい山本!!」

ダッ








「・・・・やまも・・・・と。」
「恭弥さん!!」











「あー!離れたくねえ!!」

っても俺はあの勝負を棄権したわけで、ヒバリとは…、ああでも後悔はねぇ!ヒバリの側にいられなくなるよりヒバリがいなくなるのがもっと嫌だからな。・・・・・・・・・どっちも嫌だな、はは。



バタン!

「山本武!」
「草壁さん?どうしたんす 「委員長が!!」 !!!!」
「ヒバリ!?」

   ダッ
「嘘だろ、命に別状はないって・・・・くそぅヒバリーーーーー!!」

バタン!!
「ヒバリ!!!」
「ウルサイ」
「ぼふっ」

枕が山本の顔に命中する。

「・・・・・・貴方の見る目を疑いますね・・・」
「僕も今しがた後悔してるところだよ。」
「戻ってきますか?」
「それこそ冗談が過ぎるよ。」


「ヒバリ!!」
「ぐっ、ちょっと…イタイ!」

山本はグイグイと雲雀の体を抱きしめる。

「良かった!俺、ヒバリが死んじまうかと・・・」
「馬鹿だね、そんなこと僕に限ってあると思ってるのかい。それより・・・離れて。」
「無理!俺はヒバリ不足で死にそうなのな!」
「離れて!人の目気にして!」
「ふふ」

そこでようやく雲雀の祖母もいることを思い出す山本。

「! あ、す、すみません・・・。」
「ふふ、良いのですよ。」
「(笑ってる)?!」

「ふふ、良いのですよもう。貴方の行動はずっと見てました。港にも行かず真っ先にここへ恭弥さんを連れてきていたことも。」

「でも・・・俺は!」
「えぇ、勝負は勝負です。貴方は負けました。しかしあのゲームの勝者もいません。ドローです。しかし私は恭弥さんと賭けをしていました。貴方に捕まるなら自由を、捕まらないのなら一生身を捧げると。運も能力の一つです。貴方の前で倒れた恭弥さんが私が来るまで一緒だったのは変わらない事実です。私達にあなた達を縛ることはできません。」

「!!!」
「恭弥さんをよろしくお願いします。」
「っ!!はい!」

そこにいたのは孫の幸せを本当に願う祖母の顔だったことを二人はこの先永遠に忘れることはないだろう。




短かったような長かったような夏休みが終わりを迎えた。
新学期が始まったもののまだ雲雀は退院できずにいた。思ったより傷が深かったらしい。
山本もまた野球に身を投じる日々が始まった。


9月に入って2周間が経った。雲雀に呼び出された山本は大量の材料を持って雲雀の家へ向かっている。

「待ってたよ。」
「おーさんきゅな!」

扉を開けて山本を中に招き入れる雲雀。中からは何やら美味しそうな匂いが。

「何作ってんの?」
「スコーン」
「いいにおいだな〜」
「はい、味見していいよ」
「むぐ、おぉ美味い!」
「そう。」
「なにか手伝うことないか?」
「じゃあちらし寿司作るから手伝って。」
「任せとけ!」

二人は楽しそうに料理を作っていった。
それを重箱に詰める。

「さぁ、行こうか」
「?どこに?」

「実家。」
「え?」

ブロオォォォォォォォォォォオン

「え、ヒバリ?車運転できんのか?」
「当たり前でしょ、僕を誰だと思ってんの。飛ばすから舌噛んで死なないようにね。」
「あ、がっ!!遅・・・いの、な。」



「山本。」
「・・・・ん」
「ついたよ」
「あ、おう。(気絶してたのか・・・?)」

時刻は19時を回ったところらしい、17時に家を出たと思ったから2時間かぁヒバリの運転もなかなか荒いのな。



スタスタスタ

「失礼します。」
「待ってましたよ。」
「?」

「彼には何も伝えてないのですか」
「え?」
「あぁ、今から花火大会だよ。」
「え。」
「僕の家の事情で夏休みが潰れたからね。夏と言ったら花火だって君も言ってたじゃないか」
「くすくす、では始めましょうか。」

ひゅ〜 ドォォン パラパラパラ

「ほら、来なよ」

縁側に座って重箱を開け始める雲雀。
横に座る山本。

「このちらし寿司美味しいですね。」
「それは山本が作ったんだよ。」
「そうですか。いいお婿さんですね。」
「?!僕はお嫁さんなの?!」
「・・・・。」
「見た感じそうとしか見られないですけど?」
「・・・・山本?」

「・・・ヒバリ」
「?」
「ぜってー幸せにするからな!」
「?!?!当たり前だよ。」


「お熱いことね。」


『・・・・』
二人は肩を寄せあってずっと花火を眺めているのだった。














<終>


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