19話 決戦 ‐後編‐


ガラガラ
「すまないね、まだ準備中だy」
「剛。」
「ヒバリちゃん?!どうしたんだい、」
「…頼みごとを聞いて」
「ん?」














「はぁはぁはぁ」
雲雀は並中にはいない。……俺の直感だけど、いない気がする。
そうなると後は家か俺の家…俺の家は無いか。
関係性は薄いが見回りコースとか探してみるしかないな……

山本はスタートの号令とともに並中への通学路を走っていた。

「ヒバリ……必ず見つけるからな。」


そう想いを込めて















「ふー。」
「いい食いっぷりだねぇ、」
「剛の寿司は美味しいからね」
「はっはっは!それは嬉しいねぇ!」
「…!そろそろかな?」
「ヒバリちゃん、ここに隠れてな。」
「…」

促されて雲雀は剛の足もと、カウンター下へと身体を丸めた。


















「はぁはぁはぁはぁはぁ。」
こんなに探しても見つからないってことは応接室だったか…?
いや、やっぱり違う気がする…望みは薄いけど俺ん家…行ってみっか









ガラ
「へい、らっsy」
「オヤジ!!」
「おー武か。やっと帰ってきやがって…」
「そんな事よりヒバリは?!ここに来てねぇ?!」
「来てないぜ。」
「そうか、ありがとな!」
「まて、武」
「ん?何だよオヤジ、俺急いで…!」
「まぁまぁ、いいからとりあえず飯でも食ってけ。」
「はぁ?」
「いいから座れ!!」
「あ、あぁ。」

剛の気迫に負けて座る山本。

「武、おめーじゃヒバリちゃんといてもヒバリちゃんを幸せにできねぇぜ。」
「なんだよ、それ…」
「じゃあ言うが、おめぇヒバリちゃんに勝てたことは?
ヒバリちゃんと一緒になれたとしても追手が来るとも限らねぇ。
おめぇはヒバリちゃんの隣でヒバリちゃんを守って戦えるか?」
「そ…れは…」
「じゃあ諦めな。」
「なっ!!それは嫌だ!!」

バンっと勢い良く机を叩き立ち上がる山本。

「なんでぃ?」
「ヒバリには確かに勝てたことはねぇよ、ヒバリ強ぇし、でも、それでも俺だって修行積んできて前よりはましになってきたし、それにヒバリがかかってんだ…!誰が来ようと俺は負けない…!負けられないんだ。」

いい覚悟じゃねぇか
身震いするほどの山本の覚悟、剛はそう思った。

「ふぅ……だってよ、ヒバリちゃん。」

剛がそう言うとカウンターから現れる雲雀。
「はぁ…」
「え?!」
「何」
「何でヒバリがここに?!」
「別に。じゃあね、剛、ご飯おいしかったよ。」
「え、ちょ、ヒバリ?」
「僕を捕まえたいのなら戦って僕を倒すことだね。……待ってるよ、山本武」

スタスタと山本の横を通り抜け妖艶な笑みを浮かべて竹寿司を走り去っていった。
それを山本は呆然と見送っていた。

「おーい、武?ヒバリちゃん行っちゃったぞ?」
「……!!うわっ、や、やべぇまた見失っちまう!!」
「ヒバリちゃん、並中行くって言ってたかねぇ…」
「!!!さんきゅーオヤジ!」
「はよ行ってこい!」
「おう!」

ガラガラガラ

「いいねぇ、青春って言うのは」

剛の独り言が店内に響き渡るのだった























……君はいつでも前向きで迷いがなくて、何で僕なのかわからなかった。山本の周りには何時も誰かいて、僕とは生涯縁がない奴だと思っていた。
出会いは突然だった、何で殴りこみに来た草食動物の中に君がいて、戦った。
印象は弱いとしか思えなかった、でも唯一僕の攻撃を少しだけ防いだ、成長したらと思うと僕は純粋に興味を持った。
でもそれだけ、それ以上でもそれ以下でもない……はずだったのに、君は飽きもせずそれから毎日僕のところにきて……
最初は僕だって追い返してたさ、でもいつだっただろう、僕は追い返すことを諦めた、山本はそれに気を良くしてどんどん迫ってくる。
気付いたら、もうこんなとこまで来てた。










「ヒバリ!!」

バンっと、屋上の扉を開けて山本が現れた。

「来たね、山本武」

「ヒバリ、悪いけど俺、本気で勝ちに行くのな…!」

「やれるもんならやってみれば……君は僕に傷一つ付けれない、覚悟はいいかい?」










「咬み殺す!!」

シャキン

ヒバリのお決まりのセリフと同時にトンファーと山本の刀がぶつかり合う

「へへ」
「一撃止められただけで喜ぶな…よっ!」

右のトンファーで刀を止め左のトンファーでストレートを決め込む

「…よっと」

しかしそれを後ろに飛び簡単に回避する山本

ガキンガキンバッ
ガキンガキンキィィィィン

激しくぶつかりあう金属、お互い留まる事を知らぬかのように相手へと攻撃を繰り返している。

「……おりゃ!」

ガキィィィィィン

ヒバリのトンファーが片方吹っ飛んだ

「これで終わりなのな!!」

一気に山本が間合いを詰める。

「……甘いよ。」

ゴン

「あがっ」

間合いを詰めた山本の頭をさっき弾き飛ばしたトンファーで殴りつけた。

「武器を弾くなら僕の真上に飛ばさないことだね。」

「く…まだだ…!」

山本が体制を整えようとした時だった。

ドドドドドドッドドドドドドドドッド

『!!!』

突然の銃撃

「貴方達は包囲されています。」
「どういうことだ?」

山本は屋上のフェンスから下を覗き込むと校舎の周りに無数のガトリングを持った黒ずくめの男達がいた。
「あぁ、参加者か。」雲雀は一瞥して欠伸を一つした

「恭弥様、僕と一緒に来ていただきますよ。」
「却下」
「なら、貴方の大切な校舎を穴だらけにしてやるだけです…やってください」

ドドドドッドドドドドッドドドドドド

「!!」

山本は雲雀からです殺気に身を震わせた。
自分と戦っていた時より増したその殺気、それは余すことなく今校舎に攻撃してる男へと注がれた。

「……咬み殺す」

そう言って、雲雀はフェンスを乗り越え屋上から飛び降りた。

「ヒバリ!!」

山本も雲雀の後を追うかのように階段を下り始めるのだった








「貴方、僕を怒らしたいらしいね」

ふわり、という表現が正しいと思うくらい優雅に校舎の前に立った雲雀に銃撃がピタリと止む。

「いいえ、貴方を連れていきたいだけですよ、恭弥様」
「なら、僕を殺していきなよ、無理だろうけど…!」
「はぁはぁはぁ、ヒバリ、俺も加勢するのな!」
「……勝手にすれば」
「やれ。」

少し遅れて現れた山本と共に雲雀は攻撃を開始した。

ドドドッドドドドッドドドッドド

「よっ……篠突く雨!」

「ぐはぁ」

ザザザザザ

「死になよ」

「ごがはぁっ」

ドン

雲雀と山本はあっという間に敵をなぎ倒していく

「恭弥様は足を使えなくする程度にしとけよ、山本とか言う男の方は殺してもかまわん。」

「っは!……そんな簡単に殺されるわけねぇだr……うわっ」

「山本!!」

「いまだ!!」


一瞬の出来事だった、山本が体制を崩して銃が一斉に山本に向けられて雲雀が助けに入ろうと駆け出したのは。

ドン

「っ!!」

カキン

「……全く、君は。」
「あはは、わりぃ。」

雲雀の仕込みトンファーによって難を逃れた山本。

「さっさと体制立て直しなよ、世話が焼けるんだから」
「あぁ!」

「早く終わらせるよ、まだ君と決着はついてないからね。」

そこからは数分もかからなかった、あっという間に敵は地に伏せていった。

「ふぅ、これで終わりなのな」
「聞いてない…こんなに強いだなんて……」
「よくも僕の並中をこんなことにしてくれたね……!死ね。」

バキ
「うがぁっ」

バタ
ガキィィィィィン

「うわ!ヒバリ!」

「何、もう片付いたんだから僕達の決着も付けるべきでしょ」

「だからって…ちょ、休けi」
「甘いよ」

ドガ

「うぐっ」

雲雀の攻撃が腹に入り山本の体が吹き飛ぶ

キン ガキン ガキンガキン キィィィィィィィン
止まることを知らない雲雀の攻撃に山本は防ぐしかできない。体力の限界だった。

「(一撃、一撃大きいのが打てれば……)」

隙をついて勝てる
山本は集中した、そして

「やぁっ!!」

ガキン

「!!」

雲雀のトンファーが吹き飛ぶ

「これで俺の勝ちなのn」バタ

「ヒバリ?!?!」

山本がそう言い切る前に雲雀は倒れてしまっていた
慌てて雲雀のもとへ近寄り抱き起こす、その時にヌルっとした感触が手に触れた。

「はぁ…はぁ…はぁ…」

山本の手に触れたのは間違いなく血、雲雀の腹部を見れば、スーツでわからなかったがおびただしい量の血が流れ出ていた。

「なんで、黙ってた!!」
「別に…」
「別にじゃねぇだろ!!」
「並盛港…早く行かないと時間がない」
「!そんなこと言ってられねぇだろ!」
「でも、そうしないと…僕は君といられない…」
「だけど!!」
「早く…して、僕と一緒にいるんでsy」

ズシッと体重がのしかかってきて意識を失ったことを悟った山本は雲雀を抱き走りだした。















『5、4、3、2、1、終了ー』

ブーッとブザーが港に響き渡った、そこに狂喜の声も何も聞こえなかった

「まったく、あの子達は…」

モニターから目を話して溜息を一つついたと同時に扉が開いた。

「会長いかがいたしましょう…」
「迎えに行きます」
「会長!!」
「恭弥さんと山本武の荷物を返す手配と車の準備をして頂戴」
「は、はい!」


「……寂しくなりますね。」
慌ただしく出ていく秘書のあとをゆっくりと追っていくのだった。













<続>

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