14話 戻ってきた二人



「……。」

「お食事の時間です、恭弥様。」

「……。」

あの日の夜から雲雀は何に対しても反応を示さなくなった。

「……失礼しました。」

男が膳を置いて部屋を出ていく。

―部屋の監禁を解かれた雲雀だが、本人はその場を動こうとしない。
食事を運ばれても、何をされてもずっと空ばかり見つめている。
ヒバードは現在草壁といる、その草壁は大婆様の命令で彼女の下で働かされている。
雲雀を関係をもった者全てが雲雀と関わることが出来なくなってしまったのだ。
でも、一番の傷は山本を失った事だった…―

そのことが雲雀の脳に焼き付いて離れない、声を発することも忘れただの人形と化していた。





「膳を下げに参りました。」

また同じ男が部屋に入ってくる。
しかし雲雀は外を見つめたまま男を見ようともしない。

「……。」

「恭弥様、少しでも食べていただかないと……。」

「……。」

「……失礼します。」

男は膳を持ち下がる、雲雀は空を眺めるばかり。




誰の声も雲雀には届かない






―ねぇ、山本、今君はどこにいるの?
ねぇ、どうして僕はあの鳥ように自由じゃないのかな…?―

――――――――――――君がいないなら……もう死にたい…。



















同日の夜だった。

「膳を下げに参りました。」

「……。」

「まだお食べにならないのですか?」

「……。」

「恭弥s、恭弥様?!?!」

いつもの事だから男は気にしていなかった。
しかし顔を上げ雲雀の姿を見ようとした時……

「!!!!」

やっと雲雀がいないことに気付く。

「きょ、恭弥様が…恭弥様が消失いたしましたァァァァァァア!!!」









――――――――――ザザザザザザザ

雲雀はあの竹やぶの中にいた。
靴も履かず、足に擦り傷ができるのなんて気にも留めず、雲雀は山本と最期に別れたあの場所に向かっていた。

「……。」

足を止めその場に座り込む。

「……と。」

今、行くから……だから待ってて。



雲雀は家から持ち出した、包丁を自分の腹に向け、侍がするような切腹するような形をした―

―山本……逝くからね…。




「ちょっと待ったァァァァァァァア!!!」

「!!」




『ヒバリ!』


『ヒバリぃ〜』


「よっす、ヒバリ!」


『俺はヒバリを愛してるって』

『ヒバ…リ…。』




―僕が求めてた…何度も聞きたいと願ったあの声が―




聞こえた





「ふーギリギリセーフなのな!」

「やまっ…」

「元気……そうじゃねぇな。
ちゃんと食ってたか?」

「なんで……。」

「ヒバリ……会えて良かった。」

「どうして……。」

「実はな…。」

「?」

山本はあの日の事をぽつぽつと語り出した。




「じゃあ、君はあの夜、偽装他殺で大婆様の前から消えただけってこと?
僕がこういう起こした時に止める役と、同時に僕を説得する役のために生かされて…?」

「まぁ、そんな感じなのな。」

「……はぁ。」

でも、今の雲雀にそんなことはどうでもよかった。
山本とまた会えた、それがヒバリにとっての真実だから。

「……良かった」

ドサッ
雲雀は山本に寄りかかる。

「ごめんな。」

「そうだよ、馬鹿本。
僕にこんな心配させて…。」

「ヒバリ……」

「?」

「愛してるのな…」

「……僕も。」

二人はどちらかともなく 深い―長いキスをした。




「山本。」

「ん?」

「やっぱり僕は跡取りになる気はない。」

「うん。」

「君といたい。」

「うん。」

「だから…」

「俺もついてくのな!」

「……当たり前だよ。」




二人でなら大丈夫。
大婆様が帰ってくるのは二日後……
それが僕らの宣戦布告だ。














<続>


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