11話 遠い存在






「――――バリ?」

――――――――――なんでそんな遠くにいるんだよ。

暗闇の中、目に映るのはちょっと寂しそうな顔をするヒバリ。

「ヒバリ!!」

山本は走り出す―――――

ベチン!!

「〜っ。」

見えない壁に山本はぶつかる。

「山本…好きだよ。」

「ヒバ……」

最後の言葉は出なかった、言い切る前にヒバリは消えたからだ。

『……っ、何で消えんだよ、ヒバリィィィィィィィィィイっ!!!』

ガバッ
勢いよく起き上った山本、実家の布団に寝かされてるのに気づいた。

「やぁぁっと目ぇ覚ましたk『ヒバリは?!』……ヒバリちゃん?昨日、親御さんと帰って『いつ?!』ぐわっ。」

目覚めた山本は剛に質問攻めをする。
倒れる前のヒバリの会話を山本は少しずつ思い出す。

「なぁ!親父!ヒバリは?!あいつは今どこn≪ガン≫…痛っ」

「ちーっと落ち着けぃ!全部話してやっから。」

「……。」

2人は居間に移動した、祖父は畑仕事の真っ最中のためいない。

「ヒバリちゃんと何があった?」

「……!!」

「お前の様子見てわかんねぇ程オレも落ちぶれちゃいねぇ、話しな。
何があった?」

「……ヒバリは…、」

山本は話し始めた、昨日聞いたことをゆっくりと確実に思い出しながら全てを剛に話した。

「そうだったのか…だからあんな顔…。」

「なぁ?!親父!ヒバリが帰ったってどういうことだ?!
教えてくれよ!!」

「昨日、お前を連れ帰ってきたのはヒバリちゃんだ、お前を俺に預けるとすぐに"親が迎えに来たから帰る、ありがとう剛・山本……!"」

そう言って黒い車に消えてったと剛が伝える。

「ヒバリ……。」

そこまで聞くと山本は下を俯いた。

―――――シーン―――――

沈黙が続くこと数分。
口を開いたのは武の方だった。

「……なきゃ。」

「ん?」

「連れ戻さねーと、ヒバリを。
あんな…あんな別れ方……俺はぜって―嫌だかんな!!」

拳を握りしめる。

「……武、ヒバリちゃんの場所に心当たりが一つだけある。」

『!!』

「さっき来たんだ、ヒバリちゃんの鳥だろ?」

パタパタパタ

「ヤマモト・ヤマモト!」


「ヒバード?!」

そう、いつもヒバリが愛でているあの黄色のひよこ(?)だった。

「ヤマモト!ヒバリ、ピンチ!ピンチ!
ヤマモト、タスケテ!」

さっきからヒバードはそれを言って飛び回る。

『!!』

「ここから下に降るとバス停があるだろ?」

「あぁ、あの?」

「おう、そこのバス停の茂みにバイクが置いてある。」

「え?」

「ほらよ、ヘルもここにある。
昔、俺が使ってたバイクだ、ダチに直してもらったから新品とまではいかねーがちゃんと使えるようにしてもらってやったぞ。」

「…親父。」

「行ってやりな、ヒバリちゃんがオメェを待ってるんだろ?」

「あ…あぁ!行ってくるぜ」

ヘルを持って山本は家を飛び出した。
ヒバードもその後をしっかりと飛んでついてくる。
山を一気に駆け下りる。

バス停まで来ると見知らぬおじさんがバイクの傍に立っていた。

「アンタが『武』かい?」

「あ、そーっスけど。」

「ほれ、これが雲雀本家の場所だ。」

一枚の紙切れを渡され、それを受け取る山本。

「ありがとu」

「礼はいいからさっさと行きな!」

パコッ

「ーっ。」

山本はお辞儀をしてバイクに跨る。

ブロン、ブロン、ブォォォォォォォオン

―――――待ってろよ、ヒバリ。

山本は雲雀の元へとバイクを走らせる―――――
――――――――――
――――――――
――――――
――――
――



「どうなさいましたか?恭弥さん。」

「……いえ、何でもありません。大婆様。」

「これは決定したことです、逃げ出すことのないように…。」

「……。」

自分の部屋に入れられる、山本の実家と同じ和室。
思い出される悲しき記憶
「はぁはぁはぁはぁ…」

雲雀は一人部屋で苦しむ。



――
――――
――――――
――――――――
――――――――――

「はぁー、どんだけ遠いんだよ……ヒバリーっ!!!!!!」

バイクに乗って半日、やっと半分の距離を進むことができた山本であった。
(40qで運転したからです)
―夏休み終了まで14日―







<続>


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