9話 田舎と雨雲










「おっ、ヒバリちゃんも行くのかい?」

翌日、雲雀は竹寿司の前にきた。
そうすると剛が荷台に荷物を詰め込んでいた。

「山本が淋しいみたいだからね。」

「はっはっは。
そうか、そうか。
楽しくなりそうだな!」

「(親父....ちょっとは空気読めよ。)
ヒバリ、こっちなのな。」

「ん。」

雲雀は山本につられ車の後部座席に乗り込む。
そのあとにすぐに剛も運転席に乗り込んだ。

「んじゃ、いっちょ行くか。」

ガチャ ブルンブルンブン
エンジンがかかる。

「ヒバリ、車が動いたらすぐに何か掴んでくれな??」

「?何それ。」

「すぐ、わかるのな。」

「??」

ブォンブォンブォン ブーン

「俺の前に一台たりとも車は走らせねぇぜ。」

「!!
ちょ…なに、安全運t
痛っ、あっ、安全運転……。」

「ヒバリ、親父には聞こえてないのな。」

「.....じゃ、もしかして」

「最低2時間は、うぉっ?!
このままだから頑張って耐え……あだっ」

「ちょっと!
いくら何でも無茶苦茶すぎr
わっ…。」

ポスン

「大丈夫か、ヒバリ?!」

車の揺れでヒバリは山本の胸に身体を預ける形となった

「だ、大丈夫っ!」

慌てて引き離そうとするものの.....

「簡単に離さないぜ、ヒバリ??」

「……はぁ。」

黒く笑う山本に歯向かえず2時間、ヒバリは魔の時間を耐えるのだった。


がたん ごとん がたん ごとん

「…(酔った。)」

「ヒバリ、あと少しだからな。」

未だに抱きしめたままの山本。
わざと耳元で甘く囁く。

「……。」

「ヒバリ??」

しかしピクリとも反応しないヒバリに山本は不信感を覚え慌てて、山本は顔を覗き込む。

「ヒバリ?!」

ヒバリはあまりの車酔いにダウンしてしまったのだった。

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「………。」

「恭弥、貴方はここの後継ぎなのです。
勝手なことをしないでちょうだい。」

「はい。」

せっかく作った料理も食べて貰えない。



「来ないで!
貴方なんか産まなきゃ良かったわ!!!」

「…ごめんなさい。」


だから許して、打たないで!
何回でも謝るから、
後継ぎになるから、
だから僕を.......。
もっといい子になるから
おねがいです、神様……。





『--リ!!!ヒバリ!!』

「……山本?」

「ごめんな、ヒバリちゃん。
おじさんもうちょっと安全運転するように気をつけるから。
ホントにすまねぇ!!」

ヒバリが目を覚ますと僕を覗き込む山本と剛がいて
あ、そうか、僕......剛の運転で.....。

「あ、いいよ気にしないで、剛。」

「ホントごめんな。」

山本と剛が謝る。

「もう大丈夫だから。」

「……武、俺は薪取ってくっからおめぇはヒバリちゃんの傍についてな。」

「あぁ。」

剛は外に出る。

「(気付いたけど、布団だ。
ってことは此処が剛の実家?
竹寿司もそうだけどここも和室....。
落ち着かない....。)」

「ヒバリ……その…」

「?」

「ホントに大丈夫か??
うなされてたみてぇだけど....。」

「……別に何もないよ。」

山本が心配気に雲雀を見る、しかし雲雀はついっと目を逸らす。

「ホントにか?
昨日からずっと様子が変だし…」

「だから何もないよ。
君の気のせい。」

「俺にも言えないってことなのか?」

少し怒気を孕んだ山本の声。
初めて彼が怒りを僕に露にした。
だから僕もつい張り合うかの様に言ってしまった。

「僕に何かあろうと君には関係ないだろ。」

「……そうかよ。
ヒバリにとっては俺はそんなもんかよ。」

「…そうだよ。
だから僕のことはほっといて。」

「そうかよ、勝手にしてろ。」


ビッタン!
山本は荒々しく障子を閉めた。
ヒバリは和室の布団の中に一人残される。



「言われなくてもそうするよ。」



雲雀もまた布団から出て部屋を出るのであった。













別れる運命なのだからこのままの方がいいかもしれない。
だって、僕はもう君の元には戻れない。













<続>

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