「おー佐野ーお前相変わらずひょろいなー!」
「はよ。うっせ!お前はまた一段と真っ黒になったな。」
「まぁな!夏休みの間はほとんどサッカーやってたし。」
「んで、昨日夜遅くまで宿題片付けてたわけか。」
「え、マジそんなわかる?!」
「ひでぇ隈。」


夏休み、まぁ可もなく不可もなくなわけで
あと1週間もすれば2学期が始まると言うのになぜ出校日なんて言うものがあるんだろうか。
ただ話を聞いて帰るだけだと言うのにたるいたるい。


「キャー!」
「誰だろーかっこいー!」


「おーい佐野ー」

グラウンドから聞こえてくる女子の歓声と教室のドアからの呼び声。
やはり会うのは久々だからなのかみんな浮足立ってるなぁと、思っていた。

「何?」
「校門で人が待ってるぜ」
「は?」

そう言われて窓から外を見降ろしてみる。
校門
あの黒い恰好は…

「風紀委員…」
「なんか早く来ないと乗り込むとか言ってたけど…」
「わ、わりぃ!いなかった事にしといて!俺帰るわ!!」

ガタ ダッ ガラガラガラ

「え、あ、おい!佐野!!」

大して何も入ってないかばんを引っ掴み慌てて文字通り教室から飛び出た。

え、何。ストーカー?!
つかわざわざ隣町の学校の俺に何の用だよ?!
いや考えるのはよそう、逃げるしかないんだぞ。
とりあえず何処かに逃げて今日をやり過ごさないと…。
交番……じゃ多分(お巡りさんが)殺られる…。
どこが良い…自宅?無駄に使える金なんてねぇ〜…。
遠出なんて無理だ!チャリは…今回捨て置くしかねぇ!!


校門にいたのはわかってるし今伝えに行ってくれてるだろうからその間に裏門から出れば…いや他の下っ端がいるかもしれない。
とりあえず屋上から偵察するべきか?!いや、校内に入られると逃げる道も極端に少ないしどんだけ手勢がいるかもわからない。
鬼ごっこなら地の利があるこっちの方が有利だ。裏門!

ガッシャン
もう何年も使われていない古びた金属の門に足を掛け乗り越えようとしたところだった。





「そう来ると思ってたよ。」
「!!」「意外かい?寧ろ僕が単純な手に引っかかると思ってる方が心外なんだけど。」「……何の用だよ。」
「遅刻犯を捕まえに来たんだよ。」
「どういうことだ。俺はここの学生で遅刻なんかしてないが」
「ここじゃないでしょ。」
「はぁ?」

「君、今日から並中生だから」

「はぁあああああああああ?!?!」

「もう引っ越しも終わってるよ。新しい家を紹介してあげるから行くよ。」
「は?!?!」
「いつまでこんなとこにいるの。」

ドガ!
「うわ」

呆然としている俺にいつの間にか距離をつめていて…蹴り飛ばされていた。

「これ持ってきて」
「はい、委員長。」


まぁ慣れた性かな、咄嗟にガードと受け身をしたおかげで大したダメージはないが流石にそんなに軽いつもりはないんだけどこいつどんな力してやがるんだ…しかも持ってきてとかモノ扱いかよ!心外だ!人権をくれ!

そして無事受け止めてもらえた瞬間に一番重要なワードを思い出した。

「委員長?!?!」
「何。」

言い方に不満でもあるかの様に不機嫌ながら黒い男は振り返る。
その間にも足が止まることはなく、俺は男の肩でなんとも間抜けな顔をしながら指を指していた。

「え、あの鬼の風紀委員長?!」
「鬼…?」
「お前!失礼だぞ!」
「並盛の風紀委員長って言ったら泣く子も黙るって言われるくらい恐ろしい形相の、金棒振り回す前世は鬼か悪魔かはたまた、なまはげかって言われるくらいの有名人!!」
「ふぅん。」


さして興味はなさそうにまた前を向いて歩く委員長。どうやら彼の預かり知らぬところで噂が肥大化したらしい。よくあることだ。
さすがになまはげみたいな顔は想像してなかったにしても強面…それこそこの草を銜えて顎が二つに割れてるケツ顎男の方がイメージとしては委員長っぽいんだけど…。
まさか当の本人は全く逆タイプだったとは…。
丸い頭に沿ってサラッと流れる真っ黒の髪、鼻の頭くらいまである前髪の合間から見える切れ長の目はどこからどう見ても美人タイプだと思う。
まぁ何故前髪がM字なのかは置いといてもそれですら美人のイメージを崩さないから謎の敗北感。

バタ 

「え」

バタン
ブロロロロン

「とりあえず彼の家に。」
「わかりました。」

「えぇえええええええ?!」

つか何で車?!しかもこれってベ●ツってヤツじゃね?!ほらだって俺が乗ってるシート向かい合わせになってるし!!!
しかも真ん中に小さいテーブルみたいなのあるし!!これどこの中世だよ!!馬車か!あ、いや車か。
じゃなくて!!

「車?!中学生だろ?!」
「僕が許可してるんだからそんなのはどうでもいいだろ。」
「お前何なんだよ!」
「並盛中の風紀委員長だけど」
「……はぁ、もう良い。」
「そう。」

というか疲れた。ツッコミが追いつかないから。
まぁなんとかなるだろ、うん、もうとりあえず寝よう。もしかしたら夢かもしれない。
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