10月に入ってそろそろ肌寒く感じられるようになったこの頃。

毎年のことながらこの時期は体育祭や学校祭の事で頭を悩ませる訳なんだけど、今回はそれよりも頭を悩ませる問題を抱えていた。

佐野涼。


出会いは偶然だった。

僕の狩り場に獲物が現れたから殺しに行く。ただそれだけだった。だけど現場に行けばそこにいたのは細身の男と倒れている2頭の草食動物だった。
最高にイライラした。僕の獲物をとった罪は大きい。だから攻撃した。
彼は驚く様子も慌てる様子もなくただ淡々と事実を受け止めるかのように僕の攻撃を止めた。


その目は僕と同じような気がした。


面白かった。
だから狩りの合間を縫って彼を探した。

彼のあの誰にも服従したくなさそうなあの目がとてつもなく僕の支配欲を煽った。
居場所を見つけてからすぐに彼を風紀委員にした。

すんなりと受け入れられて残念だった。
けど、彼はどこまでも自由な態度でいる。


家を貸して、僕のご飯係になって、学校まで案内してあげたのに最初にアドレスを交換したの草壁だったし、しかも名前まで呼ぶし…。
雇った上司より先に僕の部下に懐く部下がどこにいるんだ。
あ、いたんだよね…。
彼のせいで僕までキャラが崩壊しそうだよ、ふざけないでほしい。


そして新学期が始まって僕の部下として式典中は僕の隣に座らせた。
座った時に彼を見る草食動物達が最高にうざかった。あれは僕のだ。
そう思い知らせる為に座らせたのに…。
睨むだけで目を逸らすくらいなら始めから見なければいいのに。

新学期が始まって本格的に授業も始まったけど彼は初日、授業が全部終わった時間に来た。
元から頭が良いのは調べでわかっていたからわざわざ授業撤回させて毎日朝から夜まで応接室にいること、と言いつけた。


ちゃんとこなしたのは1週間。こんな陰気なのやってられるかって逃げられた。
しょうがなく妥協して午前の授業だけ参加を許可した。

だから今だってほら午前中の授業で彼はいない。


昼休みからこれば良いのに彼は今お気に入りの草食動物達と一緒にご飯を食べている。

楽しそうにしているのをこの間見かけた。君のいるべき世界はそちらではないのに。

まぁでも突然倒れられるよりかはいいかとも思う。彼を並盛へ連れて来たあの日、彼は突然倒れた。

顔は青ざめ死ぬのかと思った。

それでも構わなかったけれど僕の手で噛み殺せないのはいささか残念に思えた。

ベッドに連れていくために持ち上げれば軽かった。男を持ち上げたような筋肉的な重みはなくて、どちらかと言えば女子特有のそれに近いと思った。そして彼が女だと僕は知る。

女と知ってから僕は彼女に甘い気がする。いや、気のせいだ。

例え女子だろうと男子だろうと僕の並盛の秩序を守るために僕はあの子を利用する。


バタン

唐突に僕の静寂は壊された。ノックもせずにここに入ってくるのは彼女しかいない。
注意するために僕は振り向いた。

「ちょっと君、ドアを開け…!……どうしたの顔色悪いけど。」
「気のせいじゃね?」

今日はいつもより早い。というか早すぎる。
いつもなら昼休み時間ぎりぎりまで戯れてくる。
何度注意しても止めないしつい最近は僕の方が折れている。

だからこそ彼女のこの態度はおかしい。

「…。」
「さぁて、今日もがんばりますか。あ、恭弥弁当まだ?
俺食欲なくてさ、よかったら弁当食べる?」
「…。」
「な、なんだよ…。」
「…何かあったんならいいなよ。」
「……別に、平気だけど…。」
「そう。じゃあこれはありがたく頂くよ。」


あぁ、こんなの僕じゃない
(恭弥…なんか変なもんでも食べたのか…?)(なにそれ)(珍しく優しい…)
(君、今すぐ咬み殺す。)(うわああやめろってトンファーしまえよ、な?!)

20170604修正
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