「つきました。」
「そう。」

はぇえええええよぉおおおおおお!!!寝て夢だったかとか一瞬でも目をつむるって作業したかったわ!!!!いや目はつむったけど!!!
むしろ委員長の視線がうざすぎて眠ることができなかったんだよなんだあいつ!!!!!

「君は先に学校に戻ってて。」
「わかりました。」
「…。」

バタン ブロロロロロオロロロン

「…まじか…」

絶句するのも無理はないと思う。目視して20階建て位であろうマンションの前に自分がいるのだから。
首が痛くなってきた…え、つかこれのお金って貯金足りる?俺生活できるの?つかこのチョイスおかしくね?荷物持ってきたってことは委員長さんは俺の部屋見たんだよね?部屋の金額の相場おかしいでしょ、え、何なの嫌がらせ?

「いつまであほ面してるつもり。」

上を眺めていた俺にしびれを切らしてエレベーターの開を押したままで待っていてくれる委員長が声をかける。
とりあえず急いで向かうとエレベーターのボタンも数多くあった。それだけで目が痛い。
そして点灯しているボタンを見ると間違ってなければこのマンションの一番上の階…

ピンポーン 22階です。

そこは変わらない機械の無機質な到着音を聞いて降りるとなんてことはないマンションの最上階だ。
廊下と部屋は3部屋…?1部屋がでかいのか…エレベーターから部屋までの廊下は冬でもおばちゃんたちが井戸端会議できそうな広く光が入る空間になっていた。
見晴らしは最高にいいけどなんていうか東●タワーの展望台にいる感覚である。
23階は屋上になってるらしい。一般開放はされてないみたいだけど。少し残念だ。

委員長はエレベーターを降りてすぐ廊下の真ん中あたりにある扉を開けた。
ツーロック式のカードリーダータイプ…もう規模がよくわからん…

「佐野 涼、コーヒー淹れて。」
「は?!来て早々?そんな洒落たものなんてねぇよ!荷降ろしも終わってな…」

玄関で靴を脱ぎ(なんか人様の家にお邪魔するような感覚でつい靴を揃えてしまった)リビングへと続く廊下をスタスタと我が物顔で進む委員長の後に続いて部屋に入ると

「終わってる…。」
「君にそんな手間取らせてこっちの仕事に支障をきたされると困るからね。」

リビングにカウンターキッチン、当たり前のように寝室へと続く扉があり前の家の様とは違ってバス・トイレが別の中学生の一人暮らしにしてはもったいなさすぎる1LDK。しかもさりげなく新品の家具が置かれている。ソファとかベッドとかカーテンも全く違う…。

「これ…総額いくらなわけ…だ…?」
「お金は要らないよ。」
「はぁ?」
「ここは元々僕のマンションだからね。この階層は僕と君しか使わない。」
「?!」
「佐野涼。7歳の時に両親は他界。小学校卒業までは親戚の住職に育ててもらうも小学校卒業間近で住職が病死。それからは親戚の援助の下、一人暮らし。1パック70円の卵をわざわざ隣町まで買いに来るほどお金を切り詰めてるわけだし生活には不自由してたんだから気にせず部屋を使ってくれればいい。寧ろ使わないと噛み殺す。」

「よく…そこまで…。」

気分が悪かった。自分の過去を見ず知らずの人間に調べられたことが。
大丈夫だとわかっていても胸を張って自分の事を言えるほど大人でもない。
隠し通さなくてはならないことが俺にはある。
万が一にバレたら、俺はもうこの世界には来ることはできない。
また黒が支配する世界へと落ちるだけなのだ。

「こんなの風紀委員の力を以ってすれば造作もないよ。」「…そうか…。」
「何、いきなり。それよりコーヒー。」「悪い、帰」
「どこに。」
「!」

どこに?俺はどこに帰るんだ?
あの家に戻れるほどの契約金も俺には惜しいのに。
頼れる親戚なんて誰もいない。優しかった両親もいない。
そうだ、帰る場所なんて当の昔になくなっていたんだ。
そう思ったら急に目の前が暗くなった。
あぁ、これは…この感覚は久しぶりだな…。

フラッ

「佐野?!」
「…。」

咄嗟に抱きとめた委員長はクタッともたれかかる佐野の前髪を素早く払いのけ顔色を伺うと、先程とは打って変わるほどのの青白さに驚愕した。彼を持ち上げ安定の俵抱きをすると寝室へ向かうのだった。





残る疑問は節々に
(それにしても軽い…。何を食べたらこうなるんだ。というか久々に喋りすぎて顎が痛い…。)

20170604修正
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