君が僕の弟になって、僕のモノクロだった世界は鮮やかに色付き始めた。足りなかったパズルのピースを漸く見つけたかのような日々は楽しくて仕方ない。それも全部、君のおかげ。




やがて君は僕の世界になる




庭の紅葉が赤く彩り、桃色や紫色のコスモスは華やかに生い茂っている。三郎が庭で赤とんぼを追いかけるのに勤しんでいるのを横目に見つつ、僕は友人に電話をかけた。


「あ、竹谷?明日僕の家においでよ!」

『良いけど急にどうした?』

「皆に紹介したい子が居るんだ。兵助つれて来てね!じゃっ」

『は?えっ、雷蔵結婚すん…


用件だけ伝えて電源ボタンを押す。明日ついに友人達に三郎を紹介しようと思う。僕の自慢の弟だよって。そしたら皆で一緒に遊びにだって行けるし、三郎も寂しい思いをすることが少なくなると思うんだ。
三郎を呼び寄せて頭を撫でつつ、明日僕の友達を紹介するね、と笑いかけたら、わたしもともだちになれるかな、と首を傾け不安そうな顔して呟いた。なんだこのかわいい生き物は。ぎゅうっと小さな体を抱きしめたら怖ず怖ずと僕のシャツを引っ張った。なれるよ、三郎なら必ず。










「おじゃましまーす」


僕にとって聞き慣れた友人達の声に驚いたらしい三郎は僕の背中にピタリとくっついた。らいぞうのおともだち、と呟いた三郎にそうだよって言うと少し強くシャツの裾を握られた。緊張しているのかな。


「いらっしゃい。待ってたよ」

「招待ありがとう。で、俺達に紹介したい人って?」


流石兵助、本題に入るのが早い。ハチも後ろで頷いている。それでさっきまでハチの隣に居た勘右衛門は何処へ行った。また勝手に動きやがって。すると後ろから「ぴぎゃあ」と不思議な声が聞こえた。…勘右衛門の仕業か。


「らららいぞぉ…!」

「あーっ、雷蔵そっくりな子が居る!」

「…本当だ。雷蔵のミニチュア」

「おほー、もしやその子が紹介したいって子か!」


二人にも見付かってしまったので半泣きの三郎を前に出す。僕の弟になった三郎だよ、と言うと三人はしゃがみ、まじまじと三郎の顔を観察した。その間三郎は僕の手を握り大きな目に涙を溜めて震えていた。不安げな表情で見上げてきたので抱き上げれば首にぎゅっとしがみつきぐずり始めた。やはり人見知りだったようだ。


「大丈夫、大丈夫だよ三郎。三人とも目つき悪かったり悪役面かもしれないけど、そんなに悪い奴じゃないよ、多分」

「失礼だぞ、雷蔵!」

「三郎を泣かせたお前らが悪い」


三人を一瞥した三郎は小さな声でふわさぶろうです、と言った。それが聞こえたらしくハチが自己紹介すると兵助、勘右衛門の順にそれぞれ名前を言って三郎の頭を撫でた。びくびくとしながらも皆の顔を見て名前を呟いた三郎に、三人は嬉しそうに笑っていた。僕も愛しさでいっぱいになる。これで三郎が皆と打ち解けてくれるといいのだけれど。こればっかりは僕にはどうしようも出来ないので見守るだけだ。ただ僕らの歩む優しい未来を願って。



そして僕は君の一部になる

君の世界が広がることを嬉しく思う。そして、その君の世界の中心に僕がいたのなら、もうこれ以上何も望まないよ。






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