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「私はね、よく考えるの」

言うと、ノイトラは「んー?」と、のんびりとした返事をしてくれた。

私は夜空に浮かぶ三日月を見上げる。月の下の部分だけが見えていて、歯並びのいい猫がにんまり笑っているみたいに見えた。
ノイトラの肩に乗る私は手を伸ばしてみるけれど、大きくて、近そうに見える月にはやっぱり届かない。


「例えば椅子を何個も重ねたとして、その上に私が頑張って登って、今と同じ高さから物を見たとして、そのときに月に手を伸ばすかって聞かれたら、ううんって答える気がする」
「なんで」

ノイトラは心底不思議そうに眉を歪めた。

「だって椅子がぐらぐら揺れて恐いでしょ。崩れないかなー、倒れないかなーって、足をガクガクさせながら、結局、椅子とか地面ばっかりを見下ろすと思うんだよね」

まあ、そんなもんか、とノイトラは笑った。

「だからね、私がこうやって高い位置にいて、呑気に月を伸ばせるのって、ノイトラがいてくれるからだと思うの。何があっても絶対に私を落とさないって心から信じられる人がいるから、手を伸ばせるんだなあって、何だかしみじみ思ってる」

ノイトラはゆっくりと顔を私に向けた。

眼差しと眼差しが絡み合って、ふとノイトラの顔が近付いてくる。
その理由はわかった。
でも止まって、ノイトラは悪戯に笑みを浮かべて言った。

「届かねえけど、どうする?」

残りの距離は私が埋めた。





(月が好きになる)

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