(10/11)
皆が高校生シリーズ
* * *
海賊高校一年C組
保健委員 サンジ
「あれ? 先生ー、おらんのー」
保健室に先生はいなかった。
私はというと激しいドッチボールに巻き込まれて顔面でボールをキャッチしてしまい、鼻血を出している。
ガーゼを詰めてもらうのと、ついでに少し休ませてもらおうと企んでいたのに予定が狂った。
「んー、どこにガーゼあるんだろうなあ。ティッシュでいいかな」
その間にも押さえている手指の隙間から血が流れてきてしまうので、デスクの上にあったティッシュを何枚か拝借することにした。
そのとき、保健室のドアがあいた。
「先生? あ、サンジか。どうしたの。男子は外でサッカーじゃなかった?」
「怪我したって聞いたから、急いで来たんだよ。大丈夫? わ、凄い血が出てる。ちょっと待ってね」
そう言って、サンジは一発でガーゼが入っている引き出しを開けた。
「わお、さすが保健委員。駆け付けるのも、備品を見付けるのも早いね」
「何言ってんの。保健委員じゃなくても、すぐに駆け付けるよ。鼻、抑えててね。手を洗ってあげる」
サンジとは隣のクラス同士なのだけど、体育だけは合同でやることになっている。
本当は私のD組の保健委員が来るべきなのだろうけど、サンジの性格からして自ら買って出てくれたのだろう。
優しく水道までエスコートされ、血で汚れてしまった右手を洗い流してくれる。
そのやり方がもう王子ですよ。
背後から抱き締めるように袖を捲ったかと思うと、そのまま丁寧に水に濡らして泡を立てるのだから。
さすがだなあ、と思ってサンジを見ていると微笑まれた。
「顔の血、舐めてあげる」
「すこぶる変態なんだよなあ」
残念王子
(黙ってればクソイケメンなのに)
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