死神 | ナノ


其れがたる所以  


↑old[ 名前変換 ]

「なんだこれ」
「あ、それクレーンゲーム。ぶら下がってるアームをボタンで操作して景品とるの」
「「「へー」」」


私は、グリムジョーとノイトラとテスラの計四人で現世のゲームセンターに遊びに来ている。
私以外はゲームセンターが初めてなので騒音に呆気にとられてしまったらしく、顔をしかめている。


「それにしても、うるせえな」
「ノイトラ様の仰る通りですね。騒々しい」
「ねー。私も初めて来たときはびっくりした。あ、バイクのレーシングゲームあるよ。2台あるし、グリムジョーとノイトラで戦ってみれば?」


指差した方向には本物のバイクを象った模型に乗り、レースをするゲームがあった。バイクの前には画面があって、バイクそのものは走らず画面の中だけで走るタイプのもので、曲がるときには体を傾け、さながら本当に運転しているかのようにレース出来る代物だ。

私が提案すると、当の二人は睨み合いながらレーサーレプリカのバイクに跨がった。
どっちも足が長くて身長もあるものだから、すごくバイクが似合う。
今度はツーリングにでも挑戦してみようかなあ、なんて思いながらコースを決めてやり、スタートボタンを押した。

「はい、どうぞ!」

二人共、始めからアクセル全開で、初見とは思えないほど匠にカーブを曲がっていく。


「うほー、さすがだねー、二人共」
「当然だろう。ノイトラ様の戦闘センスを舐めるなよ」
「テスラもやってみれば?」
「…それは勝負を挑んでいるのか?」
「いやいや、私がレーシングゲームのセンス皆無なの知ってるじゃん。無理だよ。単独プレイも出来るから、それで――」
「なるほど、受けてたとう。今こそどちらがノイトラ様をお支えするのに適した人材か、決着をつけようじゃないか」
「話を聞けって」


そんなこんなで言い合っていると、ちょうどグリムジョーが1位、ノイトラが2位でゴールしたところだった。
私はというとテスラに腕を引かれ、ぎゃーすか喧嘩している二人の間をすり抜け、半ば無理やりバイクに乗せられる。


「私ほんとに苦手なんだが」
「手加減はなしだからな」
「く…典型的な話を聞かない奴め!」


そしてスタートした。
とりあえずグリップを握ってアクセルを吹かせてみると、ばびゅん、と進み始める。
直線なのでまずまずの出だし。
急カーブに差し掛かったので体を傾けつつ、ブレーキを掛けようとして…ん?


「何これ、ブレーキ掛からんのだが!」
「左のグリップはギアチェンジだ。右手と右足使うんだぞ」
「ノイトラの言ってくれてる意味がわからん。右足って何!? わっつ!?」


どかーん。
壁にぶつかる。とりあえずまた走り出すのだけど、またすぐにカーブが現れる。


「右足って何ぞや!?」
「ここだよ、これ」


ひょい、とノイトラが助け船を出してくれた。
右足のフットブレーキの操作を、私の足首を掴んで動かしてくれ、何とか要領を得る。


「そ、そういうことか…! おのれバイクめ…。しかしブレーキさえわかればあとは自転車と同じ! おらおら追い上げるぞぉ!」
「貴様ぁ! ノイトラ様のお力をお借りするなんて卑怯だぞ!」
「ふはははは! 速い、速い! 見ろ、人がゴミのようだ!」
「おい、どさくさに紛れてなにアラシに触ってんだ」
「あ? ブレーキ教えてやっただけだろうが。束縛野郎は嫌われんぞ」
「ねちねちねちねち未練がましい奴だな、ノッポ」
「あー、聞こえねえ聞こえねえ。あ、いたのか。チビすぎて見えなかったぜ6番」
「殺す」


二人が口論をしている中でやっとテスラが1位、私が2位でゴールした。
ノイトラが「俺と同じ2位だな」なんて言って慰めてくれるものだから、優勝したと喜んでいたテスラの嫉妬の矛先がまた私に向けられてしまう。
ぎろり、と睨まれているのを敢えて気付かないふりをした。怖いわ。

次に見つけたのはパンチングマシーンだ。


「これね、パンチの威力を測って数字にしてくれんの。数字が大きい方が強いんだよ。やってみる?」
「なら勝負だな。スプーン野郎に先手を譲るぜ。さっきはこの俺が勝ったからなあ?」
「後悔すんなよ」


そしてノイトラはグローブを手に嵌めて、マシーンと距離を取った。
長い長い足を天辺まであげて、さながら野球のピッチャーのようなフォームで足を下ろす。

どごおおおおん!!

足の優雅な流れとは裏腹に、叩き込まれたパンチは見えないほど早くて、重くて、マシーンが変な音を立てた。
床と固定されていたはずのビスが弾け飛んで、マシーンそのものが傾く。
ゆらーりと自重で元の位置に戻ってくると、がしゃんがしゃん、と小刻みに揺れてから静止した。
画面にはエラーの文字。
むしろ煙が燻っている。


「あ? これでも相当、手加減したぞ」
「いやいや、よく考えれば君達、破面の十刃じゃん。まともにパンチしてマシーンが壊れないはずないわ。ぬかった…とりあえず逃げとこう。私ら身分証明書とかないし、警察呼ばれても困るから壊したのバレる前に逃げちゃおう、そうしよう。逃げるが勝ちだ!」
「待て、それではノイトラ様とグリムジョーの勝負はどうなる?」
「俺の不戦勝だろ」
「待てこら、ありえねえ」
「だから後悔すんなっつっただろうがよ」


またもや、ぎゃーぎゃー言い合う二人の背をよいせよいせと押しながら出口に向かっていると、ふとテスラがある機械を見つけた。


「何だあれは? やたらと人混みになっているぞ」
「ん? あー、あれはプリクラ。写真のシールみたいなやつ」
「写真?」
「そう。んーと、私達の姿がそのままシールになんの。ぺたぺた貼り付けられるやつ」
「つまりノイトラ様のシールが作れる?」
「うん、まあ、そういうことだね。ちょっと発想あぶないけど」
「ノイトラ様、プリクラを撮りましょう」
「プリクラ? 何だそれ」


プリクラについての説明をしながら女子高生達の列に並ぶ。
そんな中で男三人(しかも全員長身イケメン)、女一人の組み合わせの私達はやけに目立っていて、妙な視線を感じた。
ひそひそ話が聞こえるけれど、当の三人はお構い無し。

順番が来たところで撮影ブースに入って、お金を投入。


「私もプリクラ初めてだから、よくわからんのだがね。えーと、カメラを見るみたい」
「カメラってどれだ?」
「この画面かな?」

かしゃ!

「違くねえか? 何かこれ全員、下向いてんぞ」
「確かにグリムジョーの言うとおりだね。じゃあカメラってどれだろ」

かしゃ!

「早っ!? 撮影早いよ!?」
「お、カメラこれっぽいぞ」
「ノイトラ、ナイス!」

かしゃ!

「ってグリムジョー半分になってんじゃん!」
「何で俺がスプーン野郎と並んで顔寄せ合わなきゃなんねえんだ気色悪い」
「この枠組みの中に入らないとダメなんだって! 身長的に二人が並ぶの仕方ないっしょ!」
「やだ」
「わがままか!」

かしゃ!

「容赦ねえなカメラ! えっとじゃあ、こうして、こうして、これでどうだ!」

かしゃ!

「…いや、お前さ、俺がお前をおぶってやるのはわかるけどよ、縦一列に並ぶってどんな写真だよ」
「だってそしたら前からテスラ、グリムジョー、私、ノイトラの順番になるから互いに近付いても平気っしょ。これでいこう、我ながら名案なり」
「待て、これでは僕がノイトラ様と遠すぎる」
「面倒くさすぎか」
「じっとしてろ。僕がアラシの背中に乗ればノイトラ様の隣に行ける」
「三兄弟――」

かしゃ!

「くっそ、早いな! つまり三兄弟みたいに、おんぶにおんぶを重ねる訳か! よし、カモン! 一枚くらいまともに写りたい!」
「よ!」
「!? 重てえな、お前ら!」
「なあ、俺ら写真に必死すぎじゃねえ?」
「ノイトラ! 頭、はみ出てる! しゃがんで!」

かしゃ!

「おいアラシ、今スプーン野郎の手握ったな?」
「僕も見たぞ、ノイトラ様のお手を握ったところを」
「しゃがんで欲しかっただけなんですけどー。引っ張っただけなんですけどー」
「本当に握ってやるよ。ほれ」
「んだとテメエ! 手ぇ離せ!!」

かしゃ!





和気あいあい!
(結局、まともに撮れたのはありませんでした)
(1/1)
[*前] | [次#]
list haco top
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -