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俺のベッドの横に並んだ椅子がふたつ。

椅子は向かい合うように置かれ、椅子との間にちょうど高さを合わせるようにチョッパーの医学書が平積みされている。

そしてそのうえに薄いシーツが掛けられた。



「ま、そうなりますよねー」



俺が女部屋に行くわけにもいかず、こういうことになった訳なのだが、なんでお前は何も言わずに椅子の方に寝転がってんだ。



「おい、お前がベッドに行けよ」



「その大きい体でここに寝られるとでも思ってんのかい」



「寝られる」



「無理だね。ゾロの肉体なめたらいかん」



「寝心地悪いだろうが」



「私の特技はどこでも寝られる。しかも微動だにしない。適材適所。早く寝よ。疲れた」



言ってる傍からアラシは瞼を閉じて、寝息を立てはじめた。

明日は俺が椅子で寝てやろう。交代といえば、こいつも了承するだろう。

ベッドに横たわると、思いのほか俺も疲れていたのか、どっと体の重みを感じた。

目を閉じる。

同時に意識が遠退いた。





 * * * * *





ふと目が覚めた。

何でなのか、わからない。

まだ夜中であるしルフィのイビキも聞こえてる。

本来なら朝まで起きないのだが、どうしたものか。

寝返りをうとうと体をひっくり返して、しまった、と思った。

手錠のことをすっかり忘れていた。

気付いたときには既に遅く、寝返りとともに腕を引っ張ってしまって、つられてアラシの体も傾いてしまった。

スローモーションで椅子から落ちていくアラシ。



「ちょ、待っ!」



またもや間一髪、右腕一本で抱き止めた。

足だけが椅子に乗ってる状態で、元に戻すよりベッドに引き込んだほうが楽だと判断した。

ずるりとベッドに寝かせ、毛布を掛けてやる。

すると、今度はアラシが寝返りをうった。

俺の方に。
なんでわざわざ俺の方に寝返るんだよ。



「微動だにしないって言ってたじゃねえか…」



胸の上にあるアラシの頭。

撫でてやるとその頭の小ささに驚かされる。

俺の気も知らずに眠りこけるアラシ。

寝よう。俺も寝よう。



寝られない。

アラシが震えているからだ。

椅子の上で寒かったのか、体も冷たい。
俺も体勢を変えてアラシを抱き締めてやった。

向かい合わせになる体と顔。

唇にアラシの吐息がかかる。

目を瞑って耐えようとしたけれど、逆効果だった。

アラシの肌と香りがぶわりと俺の体を支配し始める。

沸き上がる欲望。

我慢しろという俺の良心。

貧弱な葛藤が行われたあと、



心の中で舌打ちした。



あっさりと白旗をあげた俺の良心。

気付けば欲望のまま、アラシの唇に俺の唇をぶつけていた。






「くそ…全然寝られなかった」



何とか理性を取り戻した俺は、ようやく朝を迎えていた。

隣で未だに眠っているアラシに異様に腹が立って、額をべしっと叩いた。

「ぐ」なんて顔を歪めたくせにまだ起きる気配がない。

溜め息をつくのと、コックが部屋に入ってくるのはほぼ同時だった。



「てめえ! なんでひとつのベッドで寝てやがんだああ!」



頼むからこいつをどうにかしてくれ。

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