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ウソップ特製のパーティションに区切られた脱衣場で、俺達は片腕をパーティションの上に掲げながら着替えをした。

膝丈の水着を着たまま風呂に入るというのもなかなか難儀な話だが、これも仕方がない。

あのコックが「俺も入る。監視する」と言い出したときには本当にあの野郎に嫌気がさしたが、それはそれで三人のほうが気楽だったかもしれないと今更ながらに思う。

いややっぱりコックはごめんだ。ルフィあたりを明日は道連れにしてやろう。



「終わったー」



俺が着替え終わってからしばらくして、アラシから声が掛かった。

妙に緊張する俺の胸を、どすん、と一度だけ叩き直してからパーティションを出る。

アラシは袖を通すことが出来ないため、チューブトップという肩に何もない水着を着ていた。

そりゃあ風呂に入るんだからなるべく肌を出したいのだろうけど、ビキニというのはいささか心臓にも脳にも目にもよろしくない。

案の定、視線は泳ぎに泳ぎまくって、アラシに促される形で風呂場に入った。

シャワーを並んで使うこの構図も端から見ればおかしいに決まってる。

洗髪をして、顔を洗い終わってアラシを見ると、髪を洗うのに苦戦していた。

女のアラシは俺よりも数倍髪が長い。
いつもと勝手が違うから、余計に洗い方がわからないのだろう。



「お遊戯やってんじゃねえんだぞ」



「く、この肩がかたいのが悪いんだ!」



柔軟性に乏しいアラシは思うように洗えていない。

俺は無意識に手を伸ばしていた。

驚いて俺を見てくるアラシの目で、はっとする。



「ちげえよ! 俺だって体が冷えるからだ!」



「あ、そっか。そうだよねごめん」



それからアラシは大人しかった。

俺が手伝ってやるのをくすぐったそうに笑いながら、顔に落ちてくる泡と格闘している。

泡がやわらかい。髪がやらわかい。俺とは違う甘い香りに思わず頬が緩んだ。



「前が見えん。シャワーぷりーず」



俺がふざけて、めっちゃ泡を立ててやったらアラシの顔が泡だらけになった。

目をぎゅっと瞑りながら手探りでシャワーを探している姿をもう少し眺めてやってもいいかとさえ思った。

ハムスターの次はあれだ、羊だ。



「助かったー」



なんとか体を洗い終えて、湯船につかる。

これもまた離れられないのがやけに気まずい。

そう思ってるのは俺だけで、アラシは目を閉じて入浴タイムを楽しんでいるようだった。

湯気ですべて見えなければ楽なのに、へたに見えるから厄介だ。

そっぽ向いても距離は同じ。

あいつが指一本動かしただけで、湯の揺らぎを感じてしまう。

困って頭を掻く。ぽりぽり。



「あれ? 泡ついてるよ」



どこに。そう聞こうと振り返ったのと、アラシが泡を取ろうとして手を伸ばしたのは同時で、また距離が詰まった。

息を呑んだ。

その間にアラシは耳についていたらしい泡を取って、また元の位置に戻っていく。

こいつ、何なんだ。

俺はところ構わず項垂れた。

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