背中に縋って引き留められたなら | ナノ アナザー・企画



  20 あなたの抱きしめてくれる腕は、こんなにも暖かい


20.あなたの抱きしめてくれる腕は、こんなにも暖かい


「・・・・・・・・・は?」


アスランの声には怒気が含まれていて、思わずカガリは体をすくませた。


「・・だから、もういいんだ。
無理しなくても。
私はもうひとりで大丈夫だから・・」
「カガリにとって俺は用済みってこと?」
「そういう意味じゃない!!」
「じゃあ、どういうこと?
俺が納得するように言って見ろよ。
俺言わなかったけ、俺にはカガリが必要だって」
「・・・・・・私にはもう必要ない」
「そう、俺はカガリの踏み台」
「・・・・・・・踏み台って・・、私はただ。
アスランにもう辛い思いをして欲しくない。
自由になって、・・メイリンと幸せになって欲しいから」


私がアスランを縛り付けていた。
傍にいて欲しくて、愛を囁いて、依存した関係。
幼なかったのだ、お互い。
互いを傷つけて、それなのに離れられなくて。
いまこの瞬間が転機なんだと思う。
私とアスランの。


私は国を選び、アスランの隣にはあの子がいた。
だったら、私の選ぶ行動はひとつ。
愛しい、大切な、好きな人の手を離してあげること。
いままで、ありがとう・・、もう自由になってもいいんだよと。

ガンッ

「!」
「カガリ、それ以上言ったら俺何するか分からないよ」


アスランは勢いよく壁を殴りつけた。


「アスランはわかってない!
私はお前の足枷になるだけだ」
「それでもいいよ。
カガリだろ?
死のうとしていた俺に『生きるほうが戦い』だと言ったのは、
一度捨てた命だ。
俺の命はカガリのために使う。そう決めた」


カガリは勢いよく首を横に振った。


「違う・・、そんなためにお前は生きているんじゃない。
幸せになるために生きてて欲しいんだ」
「カガリの幸せは何?」
「・・え?」
「俺を自由にして、オーブの指導者として立って、
理念を守り通して、オーブに全てを捧げること?」
「・・・そうだ」


カガリの声は震えた。


「けど、それは為政者としてのカガリ・ユラ・アスハとしてだろう?
じゃあ、ただのカガリの幸せは?」


アスランはカガリの顔を覗き込んだ。
出会った頃はあまり変わらなかった身長はいつのまにか随分と差が開いた。
アスランの顔を見ようとしたら見上げて、それがいつしか普通になっていた。


「そんなの、一緒だ・・」
「本当にそう?
ほら、言ってカガリは本当は何を求めてる?」


アスランの大きな手が顎を持ち上げる。
見つめられる翡翠はあまりにも真摯で怖くて、カガリは逃げたくなった。


「俺の幸せは、平和な世界だ」
「・・え?」
「誰も俺達みたいに争うことのない世界。
それはカガリも同じだろう?」
「・・ん」
「けどな、正直俺にとってそれは二の次なんだ。
カガリがいないとそんなのどうでもいい。
俺の隣にカガリがいて、初めてそう思うんだ」
「なにを・・」
「俺はカガリが思うほど、真っ直ぐな人間じゃないんだよ。
狂ってるんだ。
俺カガリがいないと世界なんて滅ぼしてもいいと思う。
俺が欲するものはカガリしかないんだ。
それすら神が与えてくれないなら、俺は壊すよ。
こんな世界。
そして、手に入らないならカガリを殺して俺も死ぬ」
「・・・・」


アスランは微笑んだ。


「俺の手を離すということはそういうことだ」


カガリにはその覚悟がある?


「・・んで、人がせっかく・・・・・」
「俺は昔から無欲だったんだ。
欲しいものが特にあるわけじゃない。
あったとしてもすぐに諦めて、いつも我慢ばかりして、堪えてた。
けど、初めてだったんだ。
自分から渇望して欲したものは。
だから、ちゃんと責任とって。
一度拾った捨て犬はちゃんと最後まで面倒見て?」
「・・・・・・・お前、めちゃくちゃ面倒くさい」
「うん」
「馬鹿だろう」
「うん」


カガリん瞳からはぽろぽろと涙を流した。


「けど、取り扱いはむずかしくないだろう?
愛をくれればずっと傍にいるんだから」
「十分、面倒くさいよ」
「そうか?」
「そうだよ」


カガリは頬を濡らしながらフフ・・と笑った。


「・・・いいのか、本当に。
私と別れる最後のチャンスだぞ?」
「いいよ。一生傍にいて」
「・・抱きしめて、キスして・・」


アスランはお安い御用とカガリの体を強く抱きしめた。


「・・・・・んっ・・・」


アスランの唇がカガリの唇に合わさった。
角度を変えて、何度も何度も深くキスを交わした。
舌を入れて、吸って、唾液すらも飲み込んで。


「・・ふっ・・あ・・」


いつのまにカガリの体は熱を持っていた。


「もう二度と、別れ様なんて言わないように、体に教え込んであげる」


翡翠の瞳が怪しく光った。
カガリは手を伸ばして、アスランに絡み付けた。


「・・して」


あなたの抱きしめてくれる腕はこんなにも暖かい。


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