背中に縋って引き留められたなら | ナノ アナザー・企画



  星見守る/カガリとキサカ


控え目なノックの音がして、カガリはそちら側に目を向けた。
そこには幼少期からよく知る、
キサカがいた。
思えば、彼との付き合いも長いものだ。

「どうした。
窓の外に何かいるのか?」
「いるよ。
たくさんのオーブの国民がな」
「そうか・・・」
「うん」

執務机に書類が重ねられた。
戦後すぐのオーブや問題が山積みだ。
ロゴスを匿ったオーブも悪く言う国は未だ多い。
しかし、変な話だ。
地球の国で同盟を組んでプラントを敵対国と見なしたのに、
それの発足人の彼を匿ったことが罪に問われるなんて。
もちろん、あのとき彼を匿ったことも、その後の対応も正しいことだなんて到底思わないけれど。
そしてカガリが選んだ場所はきっとそういうところだ。
時代が変われば全てが変わる。
きっとすべてが敵であり、全てが味方。
きっと今までみたいに綺麗ではいられない。
その世界で、生きていくと決めたのは自分なのだから。

「アイツら、ちゃんと話し出来てるかな」
「・・・アスラン君とシン・アスカのことか」
「何だ、知っているのか。
さすがに耳が早いな」
「そうだな。
お前が金を出したりするからな。
話題ぐらいにはなるさ」

賭け事にまでなっていると、
キサカが愉快そうに笑みを浮かべた。
目尻に少し皺が寄る。
出逢った頃に比べるとやはり、彼も老けたと思う。
本人に言えばげんこつを喰らいそうだが、
それでも精悍な顔つきや、逞しい筋肉は何も変わらない。

「やっぱり、お節介だったか・・・な」
「それは直接本人達に聞け。
俺は彼らではないからな」
「はは、そうだな。
なぁ、キサカ」
「なんだ、カガリ」

キサカは今ではもう少なくなってしまった。
カガリを"カガリ"と呼んで傍にいてくれる人だ。
勿論、呼び方なんてどうでもいい。
カガリ様でも、カガリさんでも、代表でも、アスハでもアスハ代表でも、獅子の娘でも、
けれどやっぱり名前を呼ばれるのはいつだって嬉しい。
ありのままの自分を見ていてくれる。
そんな人たちはきっとたくさんいる。
けれど、やっぱりそんな人が変わらず傍にいて、
同じ道を歩いてくれる。
これほどまでに心強いことはない。
実際、キサカに何度助けられてきたか分からない。
きっと数えきれない程たくさん。
肉体的にも、精神的にも。

「今度、一緒に飲みに行かないか」
「は?」
「とは言っても、私の場合、
20歳になってからだから随分先の話になってしまうが。
お前と飲む酒はきっと凄く美味しそうだ」

あのな、本当にお前には感謝しているんだ。
家出した私に、お父様の命令でだけど、ついてきてくれた。
お父様と別れた時、お前は私の傍にいてくれた。
戦後にもお前は走り回ってくれた。
セイランの策略で離されてしまったけれど、
それでもお前は私を信頼していると、誇りに思うと、忠誠を誓ってくれた。
そして、事実お前は大切なアイツを助けてくれた。
凄いな。

私、本当、何度お前にお礼を言ったらいいか分からないんだ。
お前は、私に言ってくれたよな。
お前の周りにはお前を愛し導いてくれる人がいる。
それもお前の力なんだと。
だったら、お前も私の大切な力なんだろうな。
だから、それに応えたい。

「そうだな。
楽しみにしておくさ」
「うん。
待たせてごめん」

お前が信頼し得る人物に、父が誇ってくれるようなそんなオーブの獅子に。
私はなるよ。

「2年なんてあっという間だろう」
「うん。
ありがとう」

何度言っても足りない。
だから、何度だって言う。
私に着いてきてくれてありがとう。

「よし!
お前の老後は私が面倒見るからな!」
「・・・お前のその誤解を招きやすい発言はいい加減控えろ」
「?」

オーブの夜は更けて行った。


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