hide and seek/無印中・キラフレ・カガフレ
hide and seek
キラは私を探してくれるのかな。
もしも、あの子みたくいなくなったとしても。
「んー」
「どうしたの、フレイ?」
「あっ、ミリィ。
髪の毛伸びて来ちゃったから、切ろうと思って」
フレイの手にははさみがあった。
「えっ、自分で切るの?」
「だって、しょうがないでしょう?
美容院もなければ美容師もいないんだから・・」
ふぅーとフレイはため息を吐いた。
軍人って大変。ていうか、アークエンジェルが異質なのかしら。
全然上陸とかしてないもん。
「・・キラにしてもらったら?」
だって、ほらキラ手先器用だし。
とミリアリアは人差し指を立てて笑う。
「は?いやよ、そんなの」
「なんで?」
「なんでって」
『フレイって前髪、長いよね』
『そう?』
『そうだよ。
フレイ、目絶対見せたほうが可愛いのに、前髪に隠れちゃって』
『かわいい・・///』
『えっ、だって!フレイかわいいし。
っていうか、フレイってもてるんだよ!?』
『そうなの?』
『そうだよ、フレイ、学園のアイドルだったし。
僕なんかじゃ釣り合わないって言うか。
いつも遠くから見てられるだけでよかったっていうか・・///』
『そっ、そうなんだ・・。
じゃあ、前髪切ろうかな』
キラに可愛いっていってもらいたくて、髪の毛切るのに。
それを本人にしてもらってどうするのよーー!!
ていうか、全然サプライズにならないじゃない!!
目の前でニコニコと笑うミリアリアを少し睨んで、フレイはシャワー室に向かった。
「けど、確かに。
自分で髪の毛を切るのって初めてなのよね。
どうやって、切るのかしら?」
「あれ、フレイ?」
「あんた・・」
鏡の前でにらめっこしていたら、シャワー室の入り口で突っ立ているカガリと鏡越しでぶつかった。
「(なんか、嫌な奴に会ったんだけど・・)」
別にカガリ自体はフレイを嫌っていないのに、
フレイは一方的にカガリが嫌いだった。
キラに近づかないで欲しいわよね。
・・それに、この子。
玉に気品があるのよね〜。一体何者なんだか。
「こんなところで、はさみなんか持って何してるんだ?」
「うっ、うるさいわね!
何でもいいでしょ?」
「・・・・・髪の毛切るんだったら、少し濡らしたほうがいいぞ」
「え?」
「後、クリップとかあったら使ったほうがいいぞ。
じゃあな〜」
「ちょっ、あなた待って!」
「わっ、何だ!?今から私シャワーに・・」
「そんなの分かってるわよ!」
というかこの子にシャワー室にシャワーをする以外に用途があると思えない。
「じゃあ、何なんだよ!」
「・・・・・・教えて欲しいの!」
「何を?」
「前髪の切り方」
「・・・・いいけど、私うまくないぞ」
「いいわよ、別に」
・・*・・
「フレイの髪の毛、綺麗だな。
サラサラだ〜」
「・・・・・・いいから、さっさとやりなさいよ」
カガリは頷いて櫛で髪の毛を梳いて、半分の髪の毛だけをクリップで挟む。
それがなんだかこそばくてフレイは笑った。
「あんた、無事でよかったわね」
「え?」
「だから、あんた遭難してたんでしょ?」
「・・・・・心配してくれたのか?」
「なによ、私だって心配ぐらいするわよ。
仮にも、同じ・・ってわぁ!」
カガリははさみを洗面台に置いて、フレイに飛びついた。
「心配してくれてありがとう!!」
「ちょっ、離れなさいよ・・!////」
にこにこと笑うカガリにフレイはため息を吐いた。
「もう、何なのよ。あんた」
これじゃ、勝手にライバルだと思ってる私が馬鹿みたいじゃない。
「私、フレイ大好きだ〜!!」
「あー、はいはい」
カガリはまるで猫みたいだ。
つり目で少し怖い印象を受けるのに笑うと途端に花が咲いたようにまわりが綻ぶ。
それに、なんだかキラに似てる・・?気がする。
全然違うのになんでだろう。笑ったところとか。
「フレイ?」
「ほら、もうちゃっちゃとやっちゃってよ」
「うん!」
カガリの手が再び髪に触れて、フレイはどきどきした。
「(キラに似てるとか考えちゃったから・・)」
「フレイは優しいな」
「え?」
甘いハスキーボイスがフレイの耳元で紡がれる。
「あったかくて、お母さんみたいだ」
「ばっ!!あんたいくつよ!」
「16」
「あんたの方が年上じゃない!!」
「別に変な意味じゃないぞ。
なんとなくいいな〜って。
・・・・・もったいないな、キラなんかよりもっといい男いると思うぞ。うん」
「・・・・何よ、それ。
私とキラじゃつりあわないから別れろってそう言いたい訳!?」
「えっ、違っ!!・・・・・あっ」
ジャキッ
「・・・・・・・あ〜〜!!」
「ごっ、ごめん!!急に動くから」
鏡に映るフレイの前髪はななめにばっさりと切られていた。
「〜〜〜〜っ!」
ひどいっ。
フレイは叫び声を上げて、シャワー室を飛び出した。
「フッフレイ!?」
・・*・・
キョロキョロ
「あれ?ミリィ、フレイ見なかった?」
キラはいつもは部屋にいるはずのフレイがいなかったため、
食堂にいるミリアリアに聞いた。
「え?お昼にシャワー室に行くところを見たけど」
「・・シャワー室?」
なら、男の僕は捜しにいけないが。
けど、お昼って・・。
今はもう陽が沈んでいて、夜になっている。
「それにしても遅いよね」
ちょいちょい
キラの軍服の裾が引っ張られる。
「キラ・・・」
「あっ、カガリ?」
「ごめん、フレイのことなんだけど、ちょっといいか?」
「??」
「あのな、私フレイの髪の毛間違ってばっさり切っちゃったんだ」
「・・・・・・・・・・・・・・・カガリ、女の子の髪の毛切るのは陰湿ないじめだと思うんだけど」
目の前にいるカガリがいじめをするとは思えないが。
今のカガリの説明ではそうとしか考えられない。
「ちっ、違う。
フレイが髪の毛切って欲しいって言って!
切ってたんだけど。フレイがいきなり動くから、間違って切りすぎちゃって」
「うん」
「それで、あいつ叫んで走っていっちゃったんだ・・」
「・・・・・・じゃあ、探してくるよ」
「キラ、あの『ごめん』ってフレイに言っといて・・」
しゅんとするカガリにキラは笑いかけた。
「うん。伝えとく」
・・*・・
けど、フレイの行きそうな場所か。
部屋にはいないし。
キラは早歩きでアークエンジェルを探し歩いた。
まず、展望室に、もう一度食堂、士官室、医務室にいないとは思うけど、格納庫。
「いないなー」
人に姿を見られたくないってことは人があまりいないところなのかな。
キラは倉庫を探しに行った。
「あれ?キーが閉まってる?」
まさか、ビンゴ!?
キラは解除番号を押して扉を開ける。
「フレイ、いるー?」
「・・・・・っ・・」
物影で何かが動く気配。
「よかった、見つけた」
「・・・・・・キラ」
フレイは前髪を手で隠してそっとキラの前に姿を現した。
「前髪、切りすぎちゃったんだって?」
「なんで?」
「カガリがごめんって・・」
「うん・・・」
「なんで、髪の毛切ろうと思ったの?」
「え・・?」
「僕が、そのほうがいいって言ったから?」
「なっ///////////」
フレイは顔を真っ赤に染めた。
キラはにこにこと頬を緩めている。
その姿がなんだかむっとした。
「うっ、自惚れないでよ、
別に、キラのためとかそういうわけじゃないからねっ///」
するとキラはしょぼんと肩を落とす。
その姿を見てフレイは慌てて首を横に振った。
「・・・・ちっ、違う!
私、キラにかわいいなって言ってもらいたくて///」
あ〜、もう私何言ってるんだろう!?
「ホント?」
「・・うん」
フレイはコクリと頷いた。
「ありがとう、嬉しい」
フレイはそっと目を瞑った。
「・・っあ・・」
「キス」
ねだるように言うと、キラはそっと唇を掠めるキスをした。
「部屋に戻ろう。
髪の毛切ってあげる」
「え?」
「大丈夫。僕手先結構器用だから」
「・・・うん///」
私は見つけてもらえた。
いなくなっても、キラは私を探してくれる。
嬉しい・・。
その後、キラは優しい手つきで髪の毛を切ってくれた。
その手はあたたかくて、やっぱりドキドキした。
・・*・・
BGM:hide and seek/伊藤かな恵
聞いてたら、思いついた・・んだが。曲に沿わなかった。
いい曲です。かわいすぎです。
君に褒めてほしいけど
甘い言葉は恥ずかしい
本当の気持ち教えてよ
ないものねだり夜になったら出ておいで
かくれんぼはやめて
センスがないというじゃない
などのワードが妙ににキラフレに嵌ったので。
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