背中に縋って引き留められたなら | ナノ アナザー・企画



  はんぶんこ/運命後・シンルナ(A Happy Endingの続編)


はんぶんこ

「俺、オーブに住もうと思うんだ」
「・・・・・・・・・・え?」


私はシンの言葉に目を大きく開けた。


「俺すっごい考えたんだけどな。
やっぱり俺はオーブが好きなんだ。
だから俺がオーブの為に出来ることがあるならやりたいんだ」
「そんなっ!じゃあ私はどうなるの!?」
「・・・・ごめん。
それと、俺アスハ邸に住もうと思ってるんだ」
「アスハ・・?」

シンは頷いた。


「俺決めたんだ。カガリを守る。
カガリのヒモになるよ!」
「はぁ!?」
「じゃあな、今までサンキュ!」


嘘ッ、待って待ってよ!シン!!
シンは後ろを向いて歩き始める。
ルナマリアは必死に手を伸ばし、叫ぶがシンが歩みを止めることはない。


がばっ!!


そして、目が覚めた。


「っていう夢を見たのよ、今朝!」
「・・・・」
「アハハハハ」


現在ルナマリアの目の前に座るのはシンとカガリ。
カガリはお腹を抱えて笑っていて、シンは


「お前、俺がこんな奴のヒモになるとか本気で思ってんのか!?」


顔を真っ赤にしてアスハ代表を指している。


「人を指差したらいけないんだぞ、シン〜」
「お前はなんでそんなに平然なんだ!」
「だって、夢の話だろ?
しかも私完全に当て馬じゃないか。
けど、ルナマリアの凄いところはそれを本人に言えちゃうことだよな」


カガリは紅茶を啜った。


「だ・か・ら」
「私にもそういうところがあればよかったのにな・・」
「はぁ?十分だろ?アンタめっちゃ率直じゃん、なぁ?」
「はい、私もそう思います」


シンはルナマリアに同意を求めて、ルナマリアも同意した。


「そうか?」
「だって、私たちに私と一緒に働かないか?ってすっごいストレートだったし」
「お前達が欲しいと思ったんだ」
「「え?」」
「オーブを厳しい目で見てくれて私に率直に意見が言えるシンに、
オーブを客観的に見てズバズバと物を言うルナマリア。
今の私にはお前らが必要だった。
それに、なんていったてザフトレッドだから腕は確かだしな。
それにお前らには互いが支えあってるようだったから、一緒に誘ったら一石二鳥だしな」
「・・」
「・・」


シンとルナマリアはお互いを見た。
確かに事実ふたりで働ける場所なんてそうそうない。
オーブ軍に入ったとしても所属はきっと異なるだろう。
だから、カガリの誘いには正直助かったのだ。


「あの」
「ん?」
「アスハ代表の期待に私たちは応えられていますか?」
「もちろん。
ただ、シンが閣議に乱入してきたときはびっくりしたけどな」
「あれは!!だって、あいつら頭固くて」
「そのとおりだ。
だから、そういうのは私に言ってくれ。出来るだけ対応するから。
ああいうことは今後控えてくれ」
「・・・・わかりました」
「うん」


カガリは微笑んだ。


・・*・・


休憩タイムを終えルナマリアは書庫から持ってきた資料をカガリに渡した。


「ありがとう」
「はい」


シンは今キサカさんと明日のスピーチ会場の最後の下見に行っている。
だから執務室にはカガリとルナマリアしかいなかった。
そういえば、アスハ代表と2人きりだなんて始めてかも知れない。


「・・・・あのさ、前々から言おうとおもってたんだけど」


スラスラと流れるカガリのペンが止まり、カガリが顔を上げた。


「はい」
「敬語やめないか?」
「え?」
「だって、シンなんか私に敬語なんてほとんど使わないし。
それにルナマリアと私、歳ひとつしか違わないし。
な、それとアスハ代表ではなくカガリって呼んでくれたら嬉しい・・」
「・・・」


ルナマリアはぽかんと口を開けた。
今目の前にいる私の上司及び主は何と言ったんだろう。
ルナマリアが以前いたザフトではそんなことはありえなかった。
上司のいうことは絶対、敬語から態度、身だしなみ様々なことが規律により守られており、
それを破る度に罰を受けていた。
そういえば、最初の頃シンのとばっちりを受けレイとシンとよく残って掃除をしたものだ。
それなのに、今の上司は規律どころか敬語を止めて欲しいと言う。
そんな上司聞いたことがない。


「やっぱり、駄目か?
だよな・・」


ザフトって厳しくてしっかりしてるのはいいが、中々お堅い。
アスランも頭固かったな。


「・・ふっ、本当カガリさんって不思議な人ですね」
「え?」
「これでいいですか?」
「うん」
「シンがヒモになりたい気持ちよくわかります」
「お前、まだそれ引きずってるのか?
あんまり言ってると、シンに怒られるぞ」
「だって、本当にそう思ったんです私。
シンがカガリさんの護衛をすると言ったとき」
「・・・・ヒモになるならなるで、彼女ともども雇う肝は据わってないぞ?」
「そういうんじゃなくて、
だってカガリさん前科あるし」
「え?」
「アッレクス・ディノさん」
「・・・」


シニカルに言うルナマリアに言葉を失った。
ルナマリアのこういうところちょっと怖いな。


「今、ちょっと嫌だって思ったでしょう?」
「うっ・・」


図星だった。


「カガリさんってすぐ顔に出ますよね」


ルナマリアはにっこりと微笑んだ。


「だから、シンもあの人と同じ道に行くんじゃないかって・・。
心配になったんです。
偽名を名乗って、サングラスをかけて、ヒモで」
「アスランは別にヒモじゃない」
「・・・!」
「なんだよ」


口を尖らせてカガリは聞いた。


「カガリさんからアスランっていう名前を久々に聞きました」


避けている気さえしていた。
そういえば、彼女の声を初めて聞いたときもこの名前を紡いでいたような気がする。


「というか、どうなってるんですか?
おふたり。
私たちずっとカガリさんの傍にいるのにそういうところいまだよくわからないんですよね」
「・・・・・私にもわからないよ。
逆にこっちが聞きたい」


アスランから貰った指輪はいまだ自室のドレッサーに大切にしまわれている。


「あの頃、怖かったんだ。
私はアスランのこと好きだったし、たぶんアスランも私のこと好きでいてくれた。
けど、アスランはあの戦争で唯一の肉親である父を失い、戦犯の息子になって。
私には婚約者が出来て。
もうお互い傍にいるにはああいう方法しかなかったんだ」


アスランが辛い思いをしているのも知ってた。
けど、それでも縛り付けてでも一緒にいたかったんだ。


「間違ってたのかな・・」
「私はアスランじゃないからわからないけど、
それでも嬉しかったんじゃないですか?
だってここは、カガリさんの隣はたぶん凄い居心地いいですから」
「・・・・・だったらいいな。
それと」
「はい?」
「どうして、アスランのことはアスランなんだ?」


ザフトは規律が厳しいって聞いてたのに。
それに、アスランが部下に名前を呼ばれるほどフレンドリーな性格だとも思えない。
訝しげにルナマリアを見るカガリにルナマリアははっとして、
その後悪巧みを思いついたのかにっこりと笑った。


「そんなの、好きだからに決まってるじゃないですか」
「なっ!!」
「名前を呼んで近くに感じたい。
そう思うのは万国共通でしょ?
ウカウカしてたらとっちゃいますよ?」


もちろんルナマリアにそんな気はないけれど。
シンとのことでヤキモキしているんだこれぐらいのこと言っても罰は当たらないだろう。
ルナマリアはにっこりと笑った。


・・*・・

ミネルバ組はある日突然アスランさん→アスランに変わった。


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