背中に縋って引き留められたなら | ナノ アナザー・企画



  happy valentine/社会人・シンアウ・アスカガ・バレンタイン(forever youの続編)


happy valentine


「すごいですね、アスランさん」


朝、出勤してきたら上司であるアスラン・ザラの机には大量のプレゼント。
それはどれも色鮮やかでどこからどうみてもバレンタインデーの贈り物だった。
ニヒヒと笑う俺をアスランさんは睨みつけってため息を吐いた。


「返すよ」
「え?」
「こんなの困るだけだ」


去年は全て断ったのだが、今年は出勤前に机の上にか。
・・・・・・どうしてそこまでして義理チョコを渡そうとする。


「えっ、けどせっかく」
「お前のところは怒らないのか?」
「え?」


アスランさんはとりあえず、プレゼントを端に寄せて椅子に座った。


「俺は既婚者だそ、しかも新婚。
俺の奥さんすぐ妬いちゃうから」


去年は取引先で貰った既製品のチョコレートの余り物にまで妬いてたからな。
アスランさんは頬を染めて笑った。


「惚気てますよ」
「あたりまえだろう?惚気てるんだから」
「・・・・」


シンは自分達のことを考えてみた。
そういや去年のバレンタインデーは・・。

『おい、シン見てみろって』
『なんだよ』

夜遅く帰ってきた俺を部屋に呼んで、待っていたのは恋人のアウル。
そう、バレンタインデー俺は気持ちを高ぶらせて期待していたのだが。
そこに待ってたのは無数のプレゼント。
俺へのではなくアウルへの。

『いやー。今日僕いっぱいもらっちゃったんだけど。
すごくねぇ?僕モテまくり!
シンは!?いくつ貰った?』


「俺んとこはそういうのは全然です」
ため息交じりのシンにアスランは苦笑し、言った。
「そうなのか?
・・・・じゃあ、それはある意味信用されてるんじゃないか?」
「え?」
「俺、あるいみそういう信用ないからな。
彼女に言わせれば俺は無意味にもてて押しに弱いから浮気しないか心配なんだそうだ」


アスランは苦笑した。
アスランの彼女さん。それはたぶん当たってます。
俺はうんうんと頷いた。


「なんで、お前が頷くんだよ」
「だって、そんな感じしますよ。
けどそれって愛されてるんですよ。
愛されてなかったらそんなこと言われませんよ」
「・・だな//」


俺とアスランさんはにっこり笑って仕事に取り掛かった。


・・*・・


「お帰りー。シン」
「ただいまー」


仕事を定時に終わらせ、部屋に戻ると愛しい恋人の声。
やっぱり帰ってきたときお帰りと言われると安心する。
そして部屋には甘いチョコレートの匂い。
どうせ今年もアウルはたくさん貰ったんだろうな。
俺は鞄にこっそり潜ませたチョコレートをどのタイミングで渡そうかと。
去年の思い出と重ねて考えていた。


「シン、ちょっとこっち」
「え?」


アウルに手を引かれ連れて行かれた先には白い箱。


「いいからこっち座って」
「え?、あ、・・うん」


俺はテーブルの上に置かれた箱を気にしながらもアウルに言われたとおり座る。
そして目の前に同じようにアウルも座る。


「開けて?」
「?」


俺は小さく頷いて目の前の箱に手を伸ばす。

カサ

箱を開けるとそこにはおいしそうなチョコレートケーキ。


「え・・・・」


けど少し歪なそれは手作りであることを示していた。


「まさか、これ//////////」


アウルの手作り?


「まずくても、文句言うなよ!!
初めて作ったんだからな///」
「そんなの言うわけない、どうしよう俺。
死ぬほど嬉しい!!///」
「もっ、お前いいからほら食べろよ///」


いつのまに持っていたのかアウルはシンにフォークを渡した。


「なんか、食べるのもったいない・・」
「いいから、食べろ!」
「うん」


シンは頷いて、ケーキにフォークを立てて一口食べた。


「ど、どう?」
「・・・・・うまい!!すごいよ、アウル。
本当に初めて!?すごくおいしい」
「へへ・・///」
「けど、突然どうして?去年は俺が渡したのに」
「いいだろう、もう!」


実は去年貰ったチョコレートをシンに見せたら落ち込んだことを覚えていた為。
今年はシンのためにチョコレートを作ろうと思い至ったのである。
当然今年は誰のチョコレートはうけとっていない。
まぁ明日会うであろう。従妹からのチョコレートに限ってはそうはいなかないが。


「あっ、じゃあ俺も。
アウルみたいに手作りじゃないけど。
ハッピーバレンタイン!」


シンは鞄の中からデパートで買ったチョコレートを渡した。
アウルはそれを受け取った。


「サンキュ!ハッピーバレンタイン!」


顔を赤く染めて微笑むアウルにシンも釣られて笑った。


・・*・・


カガリはどきどきする自分の胸を押さえながらそのときを待った。
玄関の扉が開くのを。
学生時代から付き合っていたアスランと結婚したのはつい前のことだ。
アスランの仕事が安定した頃の私の誕生日にプロポーズをされたことをきっかけに、
私は専業主婦になった。
旦那様が帰ってくるのを待つ日々。
それはカガリの胸にいつも幸せをくれた。
誠実で優しいアスランは結婚してもそれは変わらず相変わらず優しい恋人、そして夫であった。


「喜んでくれるかな・・」


カガリの目の前には一生懸命今日のために作ったトリュフがあった。
甘いものが苦手なアスランを気遣って甘すぎずほろ苦いチョコレートを作ったつもりだ。
カガリにとってバレンタイデーはそれほど好きな行事ではなかった。
随分と片思いをしていた期間が長い為、アスランが他の女の子からチョコレートを貰うのを黙っている年もあれば。
付き合い始めても私が彼女として全く相手にされなかっためアスランの向けられる好意にどれだけ嫉妬しただろう。
結婚した今でも、そのもやもやは消えることはなく去年は机の上に無造作に置かれたチョコレートに機嫌を損ねたことは自分でも自覚している。
アスランは浮気をする人ではないということも分かっているけれども、
人付き合いもよく皆に優しいアスランに好意を抱く人は少なからずいるだろう。
だから、気が気ではなくなるのである。


「・・・・結婚したら、こんな気持ち抱かないと思ってたのにな」


一体、私はいつになったら嫉妬という感情を持たなくなるのだろうか。


「それって、どんな気持ち?」
「あっ、アスラン?」
「ただいま、カガリ」
「お帰り!ごっ、ごめん私考え事してて全然気づかなかった」


いつもならどこにいても扉が開く音に気づくのに。


「いいよ、別に。
で、何考えてたの?」
「別にたいしたことじゃ・・」
「たいしたことじゃないなら、ね?」
「・・・・・うっ、アスランが・・」
「俺が?」
「誰かからチョコレート貰ってたら嫌だなって」
「・・・プッ」
「なっ、こっちは真剣に!」


カガリは頬をぷくぅと膨らませそっぽを向いた。


「いや、ごめん。なんかカガリって本当に・・アハハ。
朝話してたんだ。部下と」


アスランは機嫌を損ねたカガリを後ろから抱きしめる。


「どんな・・?」
「俺の奥さんはやきもち妬きで、俺を愛してくれてるって・・」
「ばっ、お前職場でそんなこと話してるのか!?」
「まぁ、そうだな」
「なっ・・・・////////」


なんでもないように言うアスランにカガリは顔を真っ赤にして俯いた。


「別に俺は嬉しいよ。カガリがそうやって妬いてくれるってことは、
愛されてる証拠だから」
「・・・・////////」
「だから、カガリの愛の証のチョコレート頂戴?」
「・・うん」


カガリは綺麗にラッピングしたチョコレートをアスランに渡した。
アスランはそれをするすると器用に解いていく。


「食べていい?」
「うん」


丸いチョコレートがアスランの唇に触れて、食べられる。
アスランは口を動かし飲み込んだ。
指の平についたココアパウダーを舐めた。
その動作が余りにも色めかしくてカガリはごくりと唾を飲み込んだ。


「おいしい、ほろ苦くて甘すぎなくて俺好み。
洋酒もいれた?」
「うん!よくわかったな」
「おいしかったありがとう」


アスランは笑って、箱の中からもうひとつチョコレートを取り出すとカガリの口に放り込んだ。


「な?」
「うん、おいしい。けど私にはちょっと苦い」
「そんなことないのにな・・、俺にはちょうどいいのに」
「・・・んっ・・」


下顎を上に上げられて、上から甘いキスが落ちてくる。


「キスしたらちょうどいい甘さかも・・、どう?」
「・・・ふっ・・・あ・・」


深く深く落とされるキスはカガリの吐息を全て奪っていく。


「駄目だよ、ちゃんと言わなきゃ感想」
「・・甘い・・」
「そっか、よかった」


アスランは笑って、体の体を離した。


「やっ、・・・もっと・・」
「・・・・カガリはいつからそんなおねだりする厭らしい子になったんだ?」
「・・・////」
「まっ、そんなカガリも愛してるけど」
「あっ、愛してるって!//」
「俺はどんなカガリでもずっと愛してるよ?」
「うん///」
「駄目、ちゃんと言って?
じゃないと続きしない」
「・・・・アスランをあ、愛してる。
だからもっと・・・ふっ・・・んん・・」
「カガリかわいい・・」


そして、アスランとカガリの一夜は更けていった。


ハッピーバレンタイン!




・・*・・

うわ、なんかいろいろごめんなさい。最後の一行ありえない(笑)。
若干シリーズ化してますね。そして甘々。
ちなみに書きながら考えてたけど、アウルのいとこはステラさんです。
そしてステラはアスランの妹です。そんな関係(笑)。
アウルはたぶんシンみたいにサラリーマンじゃなくバンドマンとかプロのバスケット選手とかそういう職業に就いてそうです。

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