背中に縋って引き留められたなら | ナノ アナザー・企画



  forever you/社会人・シンアウ・アスカガ・クリスマス


forever you


カタカタ・・。


明かりを絞った部屋でキーを叩く音が響く。
今日は12月24日。
俗に言う、クリスマスイブという奴だ。
そんな日に俺は残業で会社に残ったままなのである。
全く、俺としたことが。
アウルの奴怒ってたよなー。
そうだよな、クリスマスイブって恋人達の季節なのに!


カタン


「・・・あれ、シンか?」
「・・・・アスランさん」
「残業か?」


シンは画面から目を離して、音がした扉のほうを向いた。
そこには自分の上司であるアスランさんの姿。


「はい・・」


アスランは扉を閉めて、マフラーを外す。
外から戻ってきた為か、アスランさんの頬と鼻は赤い。


「あっ、おかえりなさい。
出張お疲れ様です」


シンはボードに『アスラン・ザラ出張』と書かれていたことを思い出した。


「ああ、ただいま」
「夕方帰るって聞いてましたけど」
「ハハ、俺もそのつもりだったんだけどな。
やっぱりイベントごとのときはどうも混雑するようだ」
「あ、そうか、なるほど」


シンは頷いた。
こんな日に残業してる俺も俺だけど、こんな日に出張するアスランさんもついてない。


「それにしても、ビル誰もいなかったのに。
お前だけ残業って、大変だな・・」
「アスランさんだって 人のこと言えないですよ」
「だな」


アスランは頷いて、苦笑いした。


「・・・後、どれくらいで終わりそうだ?」
「え?」
「どれぐらいかかる?」
「えっと、だいぶ済んだので後30分もあれば・・」
「わかった、じゃあ変わるよ」
「へ?」


シンは慌ててアスランに振り返った。


「変わってやるよ。恋人を待たせてるんだろう?」
「えっ、何でそれを??」
「高級レストラン。以前、お前予約してるって言ってなかったか?」
「・・」


知られてる!


「で、残業だなんて、ホント。お前もついてないな」


アスランは笑って、シンを押しぬけて、椅子に座る。
キーボードの横に広げられた資料をめくり、アスランはシンに尋ねた。


「・・この資料を記入するだけでいいんだな?」
「あっ、はい。
プレゼンの基礎資料だけは今日中にと思って」
「分かった、ほら早く行って来い」
「・・ありがとうございます」
「ああ」


アスランさんはにっこりと笑った。


「帰りに、守衛さんにまだ俺いるって言っといてくれよ?」
「あっ、はい。
・・・・じゃあ、お先に失礼します」


シンはコートを羽織ってアスランに深々とお辞儀をして部屋を後にした。


・・*・・


「・・なんだよ、シンの奴。
せっかく今日楽しみにしてたのにさ。
残業って・・はぁー」


アウルはソファに寝そべった。
すぐ隣のテーブルにはシンへと思って購入したクリスマスプレゼントが置かれている。
トルゥルゥルゥ・・・


「!」


突然鳴った電話にアウルは慌てて飛び起きて、
ズボンの後ろポケットに入っていた携帯を取り出して通話ボタンを押した。



『ごめん、アウルか?』
「シン!?」
『わりぃ、レストランもうキャンセルした?』
「えっ、まだだけど・・」


しなきゃいけないのはわかっていたのだが、
やっぱりそれはどうしようもなく抵抗があってアウルはキャンセルを入れられなかった。
シンはキャンセルをするために俺に電話をしてきたのだろうか?


『よかった・・、間に合った・・』
「?」
『残業終わったよ』
「マジ?」
『ああ、俺直でレストラン行くから。
レストラン前で待ち合わせな』
「わっ、わかった!!
すぐ行く」
『ああ・・じゃあ、また後でな』


アウルは切れた携帯を眺めた後、じわじわと喜びが駆け巡っていく。


「(やべー、超嬉しい//)」


アウルはスーツを鏡で映し、皺を伸ばすして、
壁に掛かったコートを羽織って部屋を出た。
向かうは待ち合わせ場所。


・・*・・


「シンー!!」


走って向かったレストランにアウルはいた。


「わりぃー、待たせたか」
「いいや、シン。お前汗びっしょり」
「そりゃ走ってきたからな」
「けど、めちゃくちゃ疲れたー。
やっぱり体訛ってるな」


高校生時代にはバスケをやってた俺とアウル。
他校との交流試合のときにアウルと出会ったのが俺達の始まり。
付き合い始めたのはつい最近の出来事だけど。


「んな、ことねぇよ。
シン、細いくせして結構筋力あるしな」
「マジ!?
アウルに言われたらなんかテンション上がる」


認められた感じがしてこそばゆい。


「とりあえず、入ろうぜ」
「うん」


シンは頷いた。
店の奥に通されあまりのロマッチックな雰囲気にただひたすら目を奪われる。


「すげぇな・・」
「うん」


迷惑にならない程度に音量を下げて会話をする。
そして、次々に運ばれていくディナーはどれもおいしそうでシンたちは目移りする。


「これ、おいしいな」
「うん」


夜景を一望できる硝子窓からはきらきらと輝く世界が広がっていた。
そして、目の前には美味しそうに運ばれてくる料理を食べる恋人の姿。


「幸せだな・・」


ありがとうございます、アスラン先輩。
シンは心の中で今も会社に残って残業をしているであろうアスランに礼を言った。
今度何かお礼をしないと。


「おいっ、シン」

「(・・・何がいいかな?)」
「おーい、シン。
・・・・シンッ!!」
「わっ、」
「・・・・むか」
「えっ、ごめんぼーっとしてた」
「シンさ、こんなときぐらい俺のこと考えてろよ。
他のこと考えんな。
ただでさえ、最近あんま合う時間とれねぇんだから・・・・って、え?」
「・・・・////////////」
「なっ、シン、お前なんでそんなに顔、真っ赤?////」


顔を真っ赤にしたシンにアウルは連られて顔を赤く染める。


「だっって・・・めちゃくちゃ嬉しい・・し」
「ばっバーカ////」
「・・・・アウル。大好きだ」
「俺も、好きだ////」
「・・・俺ら相思相愛だな」
「ソウシソウアイって・・。今さらだろ?///」
「ああ//」


シンとアウルはにっこりと微笑みあった。


「今日は最高の一日にしような」
「うん!」


ふたりのクリスマスは始まったばかり。


・・*・・



「ただいまー」


アスランが自分の部屋に戻ったときの時刻は11時を過ぎていた。


「お帰り、アスラン」


迎えるのは愛しい彼女こと愛しい妻のカガリ。
仕事で疲れた体も妻の笑顔を見れば、楽になるだなんて俺も結構現金だな。


「・・・」
「・・・」


アスランがそんなことを考えていると、カガリがじっとアスランの顔を見つめていた。


「なんだ?」
「・・・・今日、7時には帰ってくるって言った」
「・・・えっと、・・ごめん」


後輩の残業を変わりにやっていたなんてばれたらさらに機嫌を損ねそうだ。


「謝るなら、早く帰って来いよー。
アスランの馬鹿ー!」


カガリはアスランに一歩近づいて、頬をつねる。


「・・・・カガリ、痛い」
「痛くしてるんだから、当たり前だ」


カガリが気が済んだのか笑って、アスランの手に握られた鞄を取った。


「今日はクリスマスだから、結構気合いれたんだぞ」
「それは楽しみだな」


カガリはくるりと後ろを向くと部屋の中に入っていった。
アスランもカガリの後ろに続く。


「えへへ、シャンパンとね、チキンとねケーキとね。
スープに、フランスパンに、グラタンに」


カガリは楽しそうに指折り、今日の成果を話していく。
後姿なために、表情は見えないが、弾んだ声から笑っているのがわかる。


「幸せだな〜」
「?何か言った?」
「カガリと結婚できて幸せだなって思ってさ・・」
「ばっ、馬鹿///」
「あはは、カガリかわいい」


カガリは顔を真っ赤にして怒鳴るが、全然迫力がない。


「ねぇ、カガリ」


アスランはカガリの耳にそっと唇を寄せて囁いた。


「愛してる」
「!//」


にっこりとアスランは笑って、体をカガリから離した。


「楽しみだな。カガリの作る料理はおいしいから・・」
「・・・あっ、あす、アスラン!//」
「?」
「私も愛してる///」


照れ屋な彼女が顔を真っ赤にして精一杯の愛を叫んでくれる。
これほど嬉しいことがあるだろうか。
アスランは顔がにやけるのが止まらない。


「やばいな・・////」
「??」
「今すぐ、カガリを押し倒したい///」
「なっ、何言って、せっ、せっかくいっぱい作ったのに///」
「分かってる、暫くは我慢するから。
だから、食べ終わったら一緒にお風呂入って、その後エッチしような?」
「う〜、・・うん///」


カガリは小さくコクリと頷いた。


「カガリ、メリークリスマス」


アスランはそっと囁いてカガリの唇にそっと触れた。



メリークリスマス!!


・・*・・

甘々でした。そしてシンアウはお初。
アスカガが砂吐きそうなくらい甘かったです。
久々です。
私の中でアスランは器用貧乏っていうイメージがあるので、ああいう感じになりました。
こういう上司いいね。

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