背中に縋って引き留められたなら | ナノ アナザー・企画



  whale @/運命後・アスカガの痴話喧嘩に巻き込まれるシン


whale 

@

「なァ、シン」
「?」
「・・・人を殺したいって思ったことってある?」


変なこと言うなと、シンは苦笑いした。


・・*・・


街でカガリと出会ったのは偶然だった。
偶然、オーブに来たからそこらを散策していたのだ。
そしたらどこか見覚えのある車。


『―シン、シンだよな?』


カガリも気付いたようで車の窓を開けて俺に声を掛けてきた。


『ああ、・・久しぶりだな』
『なぁ、シン。
今日時間あるか?』
『え?』
『これから、呑みに行かないか?』


そう言って、カガリはにっこり笑った。


・・*・・


そこからはカガリのペースで運転手に迎えはいいからと告げ、
洗練された動作でカガリは車を降りた。


『・・・』
『なんだよ?』
『いや、別に・・』


正直にカガリに見とれましたなんて言えなくてシンは口ごもった。


・・*・・


「私はあるよ」
「・・・俺だってあるさぁ。これでも軍人だぜぇ」


重い話題だからだろうかシンは勤めて明るく言った。
軍人になったこと成り行きだったとはいえ後悔はしていない。
軍人になったからこそ今の自分がここにいる。
大切な人に出会えて、失って。
それでも生きる本当の意味を知った。
だから、別にカガリを恨んだりはしていないのに、
そう言うとカガリは少し傷ついた表情をした。

「・・・それで、殺していいのってどんな人間なのかな?」
「・・・人間っていうよりも。
そのときの感情とか自分が置かれている状況だろうな・・」


シンは手にあったグラスをくるくると回した。


「殺しが正当化されるときもあるし・・」


それはいつのことを言っているのだろうか、
カガリはシンの瞳を見つめた。


「殺しは罰されなくても自分に永遠と残る。
決して許されはしないんだ・・」
「・・・」
「絶対に」
「どうしたんだ?一体。
殺したい相手でも出来たのか?」
「いや、別に出来てないが・・、ああ、けどいるかも。
お前の彼女の妹」


もう酔っているのだろうか、目が据わっていた。


「・・・・・メイリンですか?」


カガリは少し驚いた風をした。


「動じないんだな」
「そうですか?
俺、酒飲むと逆に頭冴える派なんですよ。
カガリと違ってな」
「・・そうなんだ」


ふぅんと言うカガリはいつもみたく尖ったところがなくて、
俺には凄く珍しかった。
というか、皮肉のつもりだったんだけど全然答えてねぇし。
寧ろ皮肉にすら気付いていないといった感じだ。


「だってあの子、一途すぎてむかつく」
ああ、完全に酔っているとシンは思った。
「意外ですね」
「へぇ?」
「カガリってそういうの言うタイプだったんですか?」
「いいだろう?別に。
シンって結構口堅そうだし・・、優しいし、八方美人でもないし。
強くて、頼りがいがあって・・まぁ若干優柔不断ではあるが」
「あんた結構人のこと分析してるんですね」


上記はともかく下記は褒められたとは言えなくて、シンは文句を言った。
とは言え自分はそう思われていたのだと思うと少し恥ずかしかった。


「私、シンみたいな人を好きになればよかったのにな・・」


トロンとした目で見つめられて、シンの心臓は高鳴った。


「え?//」
「だって、そうだろう?
そうだったら、きっとあいつみたいにあんなこと・・」


話の途中でカガリはスースーと寝息を立てた。


「・・・・あいつってやっぱりアスラン、のことだよな」


シンは溜息を付いてグラスの酒を飲み干した。
さっきの、アスランと比べられてたんだろうな・・。
さて。この状態どうしようか。
・・なんでこいつ迎えはいらないなんて言ったんだろう。
カガリは22だ。
酒を飲むのが初めてでもなかろうに。


「(深読みしすぎだよな・・)」


シンはワシャワシャと自分の髪をかいた。
眠ったカガリと自分の現状を理解して、さっきよりも大きい溜息を吐いた。


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