背中に縋って引き留められたなら | ナノ アナザー・企画



  バンソーコエード/運命後・同棲(猫の続編)


バンソーコエード





「ただいまー」


俺たちは長い遠距離恋愛の末に、同棲することになった。
きっかけは俺の転勤。
ザフト軍であることには変わりないが、オーブで働くことになった。
だから、新しいマンションを借りてふたりで住むことになった。
もちろん、大反対されたが。
カガリが涙ながら懇願するといとも簡単にOKが取れた。


「お帰り、シン」


同棲しても、お互い仕事で忙しい身ですれ違いがちなことが多かった。


「にゃっー」


カガリの声と同時に猫の鳴く声がする。
この前連れて帰ってきた猫だ。
カガリはその後、オーブに猫を連れて帰った。
・・なんというかさすが、ビップだ。


「ホント、そいつお前に懐いてるな」


俺はカガリの後ろに回って、カガリの腕に抱かれている猫の鼻をつついた。
猫は凄く嫌だったようで。
カガリの腕から飛びのいた。


「・・・・」


シンは小さく溜息を吐いた。
ソファの背もたれに肘をのでて手に顔を乗せる。


「シン、お前は逆にどうしてそんなに嫌われてるんだ?」
「知るか」
「・・・・まぁ、いいや」
「(いいのかよ)」
「晩御飯食べたか?」
「いや、まだ」
「なら、よかった。
私今日早かったから、頑張って作ったんだ。
今温め直すからちょっと待ってろよ」
「ああ。サンキュ」


カガリはにっこりと微笑んで、キッチンにパタパタとスリッパ特有の音を立て消えていった。
そしてこの場には俺のことを嫌っている猫と俺ひとりと一匹が残された。
シンはそいつの目の前に座ってみた。
猫は俺を威嚇した。
シャッー!!
と言う効果音が似合う威嚇方法だった。


「・・・どうして、お前はそんなに俺を嫌うんだ?」


シンはあぐらを掻いて猫を手繰り寄せる。
猫は嫌がって逃げ出そうとする。


「・・・ぃて」


猫の鋭い爪が見事にシンの頬を傷つけた。


「お前・・」


指で触れると赤い血が滲んでいるのが分かった。


「出来たぞー、ってシン!
お前ほっぺ!!」
「嗚呼、引っ掻かれた」
「ちょっ、待ってろ。
バンソーコ持ってくるから!」


カガリは大慌てで、探しに行った。
その間シンは猫を抱えたままだった。
こうなると意地だよな。


「シン、ほら。こっち向いて」


案外早く戻ってきたカガリは素早い動きで傷を消毒した。


「いっ!」
「しみるか?」
「平気・・」


カガリはバンソーコを丁寧に剥がして、俺の頬に貼った。
そして、後片付けをして。
カガリは猫にでこピンを食らわせた。
俺がしたら猫に噛みつかれるだろうが猫は悲しそうにカガリを見ただけだった。
どうやら、へこんでしまったようである。


「反省しろよ。Shinn。
私の恋人に何するんだ?」
「・・///」


今更だが、カガリの口から恋人という言葉を聞くと少し照れる。
カガリは一瞬考える仕種をした。


「・・・なぁ、シン。
お前この子のこと名前で呼んだことあるか?」
「はぁ?
あるわけねぇだろう」


何が悲しくて自分と同じな目の猫の名前を呼ばなければいけないんだ。


「呼んでみろよ」
「はぁ?」
「ほら、いいから」
「・・・分かったよ」


シンは観念して小さく唇を振るわせた。





「―――Shinn」




そして、俺は自分と同じ名前をつけられた猫の名前を呼んだ。
どうやら効果は抜群だったらしく。
俺はShinnに威嚇されることも引っ掻かれることもなかった。


猫は本当に自由気ままな生き物だった。

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