背中に縋って引き留められたなら | ナノ アナザー・企画



  猫/運命後・遠距離


「ぷっ・・」


一週間振りに会った恋人が俺を見た途端発した言葉がこれだった。


「シン、ごめんて」


シンは拗ねてそっぽを向いた。
すると彼女は俺の背中に抱きついた。
そうすると胸の膨らみが当たってドキドキした。
それで許すと負けてしまったような気がして俺は少し意地になった。
年上の恋人は抱きつけば俺が折れると思っているみたいだった。


「(分からせないと・・)」


確かにすぐ自分は折れる。
けど、そのままでいい気はしないのでシンは無視することにする。


「シンってばぁー」


年上の彼女は俺より子供っぽいと思うことがたびたびある。
それを言うと彼女はシンのほうが子供っぽいよと言う。


「何、拗ねてんだよ?」
「・・別に」
「拗ねてるだろう?」


カガリの声は涙声になっていた。
情けない奴。
これで年上だと言い張るんだからどうしようもない。
実際そうなのだが。


「普通、笑うか?」
「・・・・だって、シンの顔傷だらけだった」


脈略の得ない会話だった。
けど、カガリはシンが言葉を発したことに嬉しそうだった。


「さっき、来る途中に猫がいたんだよ。
で、じゃれてたらひっかれたの」
「ふーん。
それってこの子?」
「え?」


そう言ってカガリが指した足元には猫がいた。
小さな黒猫が。


「いつのまに?」
「さっき、シンが拗ねてるとき」
「・・・」


文句のひとつでも言ってやろうかと思ったが、
カガリの足に擦り寄る猫を見てやめた。


「(俺には引っ掻いて来たくせに)」


それは小さな嫉妬。
カガリになのか、猫になのか。
そんな俺の想いにも気付かずカガリは猫と話している。
もちろんカガリに猫語は話せない・・と思う。


「何だ?お腹空いてるのか?
えっと、何かあったかな?」


カガリは鞄を漁った。


「(カガリは猫みたいだ)」


気ままで、甘えんぼうで、可愛くて。
お澄ましで。


「この子、シンみたいだな?」
「え?」
「だって、ほら。
この子。黒だし、赤だし」
「・・・」


どこから突っ込んでいいのか分からなかったがとりあえず、
毛が黒で目が赤だと言いたいらしい。


「な?」
「・・・・・かもな」
「なぁ、この子連れて帰ろうよ?」
「はぁ?」
「だって、お腹空いてるみたいだし。
シン料理うまいし」


前半はともかく後半はどうなのだろう。
確かに俺は料理はうまいがそれは人間にであって猫にとってではない気がする。


「なぁつ、いいだろう?」
「・・・・いいよ」


俺は結局この年上の恋人に弱いのだ。


「ほんと!?
やったぁ!!」
「その変わり明日、カガリが家に連れて帰れよ?
俺育てるとか嫌だからな」
「えー、なんでシン育てた方が面白いのに」
「・・・」


何が面白いんだか・・。


「まぁいいや。
よろしくなShinn」


どうやらその黒猫の名前はShinnらしい。
シンは頭を抱えた。


「ほら、もういくぞ」
「あっうん」


そして俺と彼女と黒猫の生活が始まった。

prev next

[back]



×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -