ピンヒール/運命後(ハイヒールの続編)
俺はひたすら走っていた。
女の叫び声がする方へ
こういうとき防音性の優れたこの家は逆効果だなと内心思いながら。
しかしコーディネーターならではの聴力でその声を聞き分ける。
「カガリ!!」
大きな音をさせ扉を開いた。
そこには泣き叫ぶカガリと複数の男がいた。
「・・・シン・・?」
カガリは俺の名を呼んだ。
ピンヒール
俺はそのまま部屋に入り複数のおとこにをなぎ倒して、
最後にカガリに覆い被さっている男にカカトを振り落とした。
「大丈夫か?」
「・・ああ。・・なんでシンがここに・・?」
カガリは状況が掴めないらしくそう聞いてきた。
「忘れた?明日クライン議員との会談。そのお供で来てんだよ」
シンはそう言いながら右手を差し出した。
「あっそうか・・」
カガリはシンの差し出した手に掴まり立ち上がった。
「けど、びびった、お前に会いにアスハ邸行ったら、攫われた言うし。
で、助けにきてやったの」
「・・・ありがとう」
カガリはポカンとした顔のままそう言った。
シンはカガリの表情を見てにっこり笑った。
シンはそのままカガリの手を握り家を出ようとする。
その間にキサカ一佐に渡された無線機でカガリの無事を知らせる。
無線機の中で数人が騒いでいるのが分かる。
シンの頬は自然に緩んでいた。
そして、「愛されてるな」カガリに振り返ってそう言った。
カガリは嬉しそうに笑った。
「・・・/////」
シンはそのとき初めてカガリの全身を見た。
「?」
「おっお前、なんて格好してんだよ!」
カガリが着ていたナイトドレスだったものはただの布と化していた。
カガリを攫った男はカガリを囲っていたんだ。
その考えに辿り着かない方が不思議だった。
そして同時に自分がもう少し遅かったらと思うとぞっとした。
「あっ・・」
カガリも気付いたようで言葉を漏らした。
そしてシンと目がばっちり合った。
「どうにかしろよ!!///」
シンは顔を後ろに反らした。
「・・どうにかしろって言われても・・」
「あーもう!!」
シンは自分の着ていたスーツを脱ぎカガリに手渡した。
もちろん目は反らしたままだ。
「ありがとう、シン」
カガリはそれを受け取った。
「・・・///。お前ホント分けわかんねえな」
「え?」
「さっきは泣き叫んでたくせに。今は普通だし。
こういう会話してたら普通は思い出して怖くなるんじゃねえの?」
「・・今はシンがいるから」
「!!」
シンは慌ててカガリに振り返った。
カガリはもうすでに上着を羽織っていてシンは安心した。
「な」
カガリはにっこりと笑った。
シンはカガリのその安心しきった顔を見て複雑な気持ちになった。
「・・男は狼なんだからな」
安心されてるのは頼られていると思うのか、男として見られていないのか。
「・・大丈夫だ。シンは私を襲う甲斐性なんて無いから」
「なっ、お前!!」
シンはカガリの言葉にカチンときた。
・・・そこまで言うならやってやろうじゃねえか。
そして、カガリを傍の机に押し倒した。
「・・シン?」
「・・舐めんなよ」
シンはカガリの目を覗き込んだ。
「・・・・」
カガリは目を反らした。
・・・ムッ。
まだそういう態度に出るか・・。
「シンにはルナマリアがいるだろう?」
「・・は?」
「だから、こんなことしたらいけないと思うんだけど」
「・・・いや、だから今なんでルナ?」
「・・なんでってお前「別れたよ」
「え?」
「もうとっくに別れたよ。ルナにはもう新しい彼氏いるし」
シンはケロっとそう言った。
呆気にとられたのはカガリだった。
「・・・・・へぇ、そうなんだ」
そして次の瞬間カガリの顔が赤に染まった。
「・・・・・」
「・・//////」
「あー」
「なんだよっ!!」
「いや」
シンは上機嫌になって、カガリの机から降ろしてやる。
「そういうことだったら許してやるよ。
ほら行くぞ」
そしてシンは再びカガリの手を握った。
今度はさっきよりも強く。
「・・シン身長伸びたな」
「そう。結構伸びただろう」
シンはヘヘンという風に笑った。
「ずるいよな。少し前まで私と変わらなかったのに。
これだから男って・・」
カガリは悔しそうにそう言った。
「ははは。けど、前から俺のほうが高かったのには変わりないけどな」
「なんだよ!」
「今はアイツより身長高いんだぜ」
「アイツ?」
カガリはそう聞き返した。
「・・・なんでもない」
「そうか?」
カガリは気にもしなかったようでその話は終わった。
「なぁ、カガリ。覚えてるか?」
シンは頬を指で掻いた。
これはシンが言いよどむ時の癖みたいなものだった。
「ん?」
「・・・いや何でも「覚えてるよ。辛いことがあったらシンに泣きつきにいくって奴だろう?」
カガリはシンの声を遮ってそう言った。
「覚えてたのか?」
シンは素直に驚いた。てっきり忘れられてると思っていたから。
「ああ。結構励みになってたんだぞ。シンの言葉がさ」
「そっかよかった」
「うん」
カガリはにっこりとそう言った。
「じゃあ、じゃあさ、あのことは?」
「・・あのこと?」
「俺がカガリを好きだってこと!!」
シンは顔を真っ赤にさせてそう言った。
「・・え///」
そんなこと言ってないだろうとか、
知るかよってはぐらかすなんてこといくらでも出来たはずなのに
カガリは真っ赤になって俯いてしまった。
「俺と付き合わないか?
俺絶対アンタを幸せにするから!!」
「本気で言ってる?」
「ああ!!」
「・・・・・・・・」
告白した後の沈黙はとても長く感じる。
とても。
カガリはシンの頬に両腕を伸ばした。
「カガリ・・///」
息がかかるぐらいの距離にカガリがいる、それだけで頭がパンクしそうだ。
「もしかして、さっきのアイツってアスランのことか?」
「・・・ああ」
「私のこと好きだから、アスランの身長抜けて嬉しかった?」
「そ、うだ・・」
緊張する。震える声でシンはそう言った。
久々にアスランに会ったとき自分の方が身長が高くなっていたことが嬉しかった。
それは全部カガリが好きだから。
ルナと別れた時も苦しくなかったのはカガリが好きだったから。
「・・・シンはその恋の結末が辛いと分かっていたらどうする?」
「え?」
「その人と一緒になれないのに付き合う価値ってある?」
「そんなの、あるに決まってる!」
シンは即答した。
そしてカガリは目を見開いた。
「確かに好きな人と一緒になれないのは辛いけど、
俺は好きな人と過ごす時間を大切にしたい」
「・・・シン」
「だから、だから!!
確かに出逢った頃と気持ちが変わらないなんてそんな綺麗事言えない。
けど、それはもっと好きになれるかも知れないし。
それに好きだって言う気持ちさえ忘れなかったら・・・」
シンは気持ちが纏まらない答えをそのまま言の葉にした。
カガリはシンに見惚れた。
ただぼうっとする。
「約束しよう」
カガリはにっこりと笑った。
何を約束するかをカガリは言わなかった。
けれど、シンには伝わった気がした。
「うん」
シンは子供みたいに無邪気な笑顔を見せた。
カガリはシンのその笑顔を見ると心が温かくなっていくのを感じた。
「シン、好き」
カガリは小さく呟いた。
「うん!」
シンは嬉しくなって笑った。
そしてシンはシンの両頬を包んでいたカガリの手を掴み包み返した。
「・・・・」
「・・・・」
シンはカガリの唇にキスをした。
「・・・シ・・・・・・っ・・ン」
そしてそのまま舌をカガリの口腔に滑り込ませた。
「・・やっ・・」
そしてシンはキサカの無線の音に気付くまでカガリを思う存分味わうのだった。
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