背中/幼馴染・高校生×中学生
「シーンー!!!」
後ろから自分を呼ぶ声がして、後ろを振り向いた時には体にずっしりと重みが加わっていた。
「・・カガリ・・」
けど、シンにとってはそんなこと日常茶飯事でシンは自分の肩にぶら下がったカガリを引き剥がし降ろした。
「一緒に帰ろう」
そして、シンの素っ気無い態度にカガリは気にすることもなくにっこりと微笑んだ。
「はぁ、毎度毎度ごくろうなことだな」
「そんなことないよ。
シンと会えたら凄く幸せだもん。全然苦労じゃないよ」
「・・・///」
カガリと出会ったのは確か俺が小学生のとき。
お隣に若い夫婦とその子供が引っ越してきたとき、
遊んでやってねと言われ子供が好きだった俺は喜んで引き受けた。
「(今思えば小学生で子供好きって言うのもおかしいよな・・)」
兄弟が当時いなかった俺にとっては弟と妹が一気に出来たみたいで凄く嬉しかったのを覚えている。
隣の子は可愛らしい双子でキラとカガリと言った。
最初はお互い性別を間違えたんじゃないかというほどキラは泣き虫でカガリはやんちゃだった。
「(それが今やモテモテの貴公子に、
モテモテプリンセスって異名だもんな・・)」
世の中ってわからないもんだなぁとシンは空を仰いだ。
「・・カガリ、キラは元気か?」
「うん。
昨日女の子連れ込んでたよ」
「・・〜アイツは・・」
「いいよなぁ」
「・・・はぁ?」
俺は素っ頓狂な声を上げた。
・・それはどういう意味でなのだろうか。
「私もシンの家に連れ込まれたいな・・」
「ばかっ!!!!んなのするわけねぇだろう!!//」
「・・・そんな全力で否定しなくても」
「あのな俺18で、カガリ14だろ。
そんなんなったら俺確実ロリコンでキラに殺されて逮捕だろうが」
なんだか順番がおかしかった気がするが気にしない。
「そんなことないよ。
シンはまだ17で、私15だもん2歳差」
確かにお互いの誕生日上そうなるが。
「それでも、駄目なものは駄目なんだ」
「ーむ。じゃあ幾つになったらいいんだよっ!」
「・・幾つって・・そうだなじゃあカガリが20になったらかな」
「よしっ!約束だからな!」
・・・まぁそのときにはきっと他に好きな奴でも出来てるだろうしな。
「・・・ところでさ、カガリ」
「ん?」
「俺、志望校県外だから」
「え?」
「まぁ受かるかどうかもわかんねぇけどな。
一応報告」
「・・・・・・・県外って、じゃあ家出ていくの?」
「まぁそうなるんじゃないか?」
「そんなの嫌だ!
だって、だってそんなのしたら・・」
カガリは顔を歪めて背を向けて走り出した。
走り去り小さくなるカガリの後ろ姿に胸がツキンと痛んだ。
カリカリと鉛筆の音が部屋に響く。
「あ〜もう勉強になんねぇ!」
シンは鉛筆を投げ出して、椅子に身を投げ出す。
昼間のカガリの駆け出していく背中が頭から離れない。
あんなに辛そうな顔することねぇだろう?
別に離れても電話だってメールだってある時代なんだから。
翌日、シンはカガリと会わなかった。
家は近所でも中学生と高校生じゃスケジュールも全然違うから合わないから全然不思議じゃないんだけど、いつもカガリの方から俺に会いに来ていたからそれが酷く不思議に思えた。
「(まだ、ショック受けてんのかな・・?)」
シンはポケットに手を突っ込んだ。
・・・。
「仕方ない・・」
****
放課後、隣の家のチャイムを鳴らした。
カガリのお母さんは未だ顔パスでカガリの部屋に通されてしまう。
・・・これでも若い男女なんだけどなと心の中で思いながらも今はありがたいので黙っておく。
「・・・カガリ?」
「・・・シン?」
「「・・・・・」」
カガリのお母さんが「ごゆっくり」と部屋を出て行ってからシンはかばんを部屋に置いて、床にひいてあるマットにあぐらをかいて座った。
「俺、今日中学行ったのに。
お前休んでたんだろ。無駄足」
「・・・・・・・・・・・・ごめん」
ため息混じりにそういうシンにカガリは項垂れて謝った。
「・・体調悪いのか」
どこか顔色が悪いカガリにシンはそう聞いた。
カガリは首を横に振った。
「じゃあ、理由がない癖に学校休んだんだ」
「・・うっ」
「・・・別にいいけどさ。
昨日言ったことでへこんでたりするのか?」
「・・・うん」
少し悩んだ後、カガリは頷いた。
「もう、なんでだよ。
別に一生離れるわけじゃねぇだろう」
シンは背後にあったベットを背もたれにして倒れこんだ。
下から見上げるカガリの部屋は以前来た時より女の子っぽくなっていた。
・・・もう女の子なんだろうな。
「それでも、嫌なんだっ!」
カガリはシンから背を向けて椅子に座っていたのを、
椅子から降りてシンの目前に迫った。
「・・なんでだよ」
「私は・・私は・・シンが好きなんだよっ!!」
カガリはシンの顔に吐息が届くほどの近さに寄った。
「・・///」
「本気で好きなんだよっ」
何度も何度も告げられた言葉なのに、今に限ってドキドキする。
「ちょっと、カガリ・・///」
「そうやって、いい加減はぐらかすのやめて!!」
制服のシャツを引っ張られて、胸倉を掴まられてカガリに唇を奪われた。
「・・・・!!!」
「・・・」
「・・ん」
唇が離れて、カガリが上目遣いでシンを見上げる。
「子供扱いしないで」
切なそうにカガリは懇願した。
がばりっ
と後ろのベットに押し倒される。
まさか自分から倒れこんだベットに押し倒されるとは思っていなかった。
「・・・んぅ」
もう一度カガリはシンの唇を奪った。
「カガリ・・///」
カガリはシンのシャツのボタンを一個ずつ外していく。
肌蹴て現れた肌にカガリは唇を寄せる。
チクリと痛みが走って肌に赤い痣が現れた。
「・・お前、いつのまにこんなこと覚えたんだ・・ぅあ」
「・・キラとキラの彼女がしてた」
・・・キラの奴。
悪影響を・・。
と考えがおよんでいたのは途中までで、後は体中が熱くなり頭がくらくらしてきた。
自分の肌に触れるカガリの肌も同じように熱かった。
外はまだ陽が出ていてカーテンの隙間から部屋がオレンジ色に染まっていた。
「・・・ふぁ・・・ん」
「し・・ん・・すきぃ」
互いの吐く息が妙に色めかしかった。
カガリのことはただの幼馴染で恋愛対象として見れるかと聞かれれば答えは「NO」だ。
けど、今この瞬間、体中が熱くなるのは何でなんだろう。
指と指が絡んで強く握って、握り返す。
シーツに沈んだ自分の耳に聞こえるのは唇が重なりあうときに生じる水音で、
生々しい音は余計に体を熱くさせた。
いつのまにかカガリの上着を脱いでいて下着のみの状態だった。
中学生の癖に豊満な胸にシンは釘付けになった。
その様子にカガリはにっと笑った。
プチンとブラジャーのホックを外すと豊かな胸がぷるんと震えた。
空いた手をカガリが引っ張って自分の胸に誘導する。
阻止しようと思えば出来たのにシンはそれをせずになすがままだった。
ふにんと触れるたびにゆれるに胸にシンの胸は高鳴りっぱなしで、
たぶんこの時点でシンの理性は跳んでいた。
形がかわるほどに胸を揉むとカガリはシンが聞いたことの無いような声を上げた。
それは美しくて妖しい女の声。
「・・・ん・・いやあっ!」
嫌?
この期に及んで?自分からしてきた癖に?
「やぁ・・・ぁん!!」
「・・やめようか?」
こんなときなのに、嫌こんなときだからこそなのかシンの声は冷静に響いた。
「・・いやっやめないで!」
カガリはシンにぎゅっと抱きついた。
「そう・・」
シンはゆっくりと起き上がって、カガリとほぼ同じ目線でカガリを見つめた。
カガリの頬は赤く染まっていて、目は潤んでいた。
色っぽかった。
唇を互いに触れあわせてくちゅくちゅという色めかしい音を立てる。
さっきの一方的なキスとは違う心が通ったキス。
カガリは嬉しくて涙が出た。
自分の型を抱く男の腕は確かに長年思い続けてきた愛しいシンのもので嬉しくて嬉しくてしかたなかった。
このまま繋がりたい。
シン、お願いどこにもいかないで。
カガリは強く願った。
けど、その願いは叶わなかった。
シンは雰囲気に流されていたし、カガリにも拒む理由はなかったのだから、
このままいっていたらそのままカガリの願いどおり繋がれていただろう。
そう。
邪魔が入らなければ。
「カガリ、ごめん電子辞書貸してくれない?」
そう。キラの邪魔が入らなければ。
キラは中に入ってきてはいなかったもののその声はシンの理性を戻すには十分だった。
「入っていい?」
「・・・・」
「・・・・」
呆然とするシンにカガリも同じように呆然とした。
「・・・キラ、ちょっと待って」
やっとのことでだした声は震えていた。
服のボタンをつけて机の上から電子辞書を探し当ててドアを少し数センチだけ開けてそれをキラに渡す。
「ありがとう」
「・・うん」
カガリはすぐさまに扉を閉めた。
後悔してる?
そう、カガリに問われてシンは答えることは出来なかった。
俺は何をした?何をしようとした?
俺は・・・何を。
シンは自分の両手をただひたすら眺めた。
抱きしめたカガリはとてもあたたかかった。
シンははっとして頭をぶるぶると振った。
俺は何を考えているんだ!
けど、・・・。
一度話しをしないといけない。
あれからもう月日は回っていて3月になっていた。
無事俺も全寮制の大学に進むことが決まった。
俺は来週にはこの街から出て行くというのに、一度もカガリと話し合いをしていない。
最初の方は俺が気まずくて避けていたのは俺だった。
けど、時間が経つにつれ俺はカガリと話がしたいと思っていたのにカガリはどうだ。
俺の顔を見ただけですぐに顔を晒して回れ右をする。
やっぱりもう、嫌われたのかもしれない。
そのときはそのときだけど。
夕方、俺は隣の家のチャイムを鳴らす。
言わずと知れたカガリの家だ。
すぐに玄関のドアが開いた。
「どちら様ですか・・・・アレ、シン兄じゃん」
玄関を開けたのはキラだった。
「キラか」
「うわぁ、久しぶり元気だった?」
「お陰さまでな」
「そっか、
今日は何どうしたの?」
「カガリに会いに来たんだけど、いるか?」
「えっと、カガリ?
今日遅くなるって聞いてたけど。
なんなら待ってたらいいよ」
そう言って、キラは家に通してくれた。
「サンキュ」
俺はキラが出されたココアを受け取った。
キラも向かいに腰を落とした。
「そういや、受かったんだって?
おめでとう」
「ありがとう」
シンは笑った。
「カガリは知ってるの?」
「?」
「シン兄が県外の大学に行くってこと」
「この前言った。
・・・泣いてたけど」
「そう」
ちょっとだけ気まずかった。
「なんだかな・・。
カガリは本当にシン兄にべた惚れだね」
「・・・どうだかな」
「何、言ってるの。今更」
「・・・・、ここ数ヶ月カガリとは全然口聞いてないんだよ」
「へ?そうなの?
うーん、あれじゃない?
押して駄目なら引いてみろ作戦」
今時誰がそんなとしんは心の中で突っ込みを入れた。
「お前がそんな告げ口したのか?」
「へ?してないよ」
キラは両手を被り振った。
「・・・お前、カガリに変なことばっか教えんなよ」
お陰でこっちは被害を受けているんだ。
「・・・シン兄に関係あるの?」
「は?」
「シン兄はカガリのことを心配できる権利があるの?」
「権利ってお前・・・・」
「真剣に答えて。
シン兄はカガリの気持ちに応えてあげられる?」
「・・・俺は・・・」
沈黙が過ぎった。
「ただいまー」
それを遮ったのは幾ヶ月ぶりに聞く元気なカガリの声だった。
「・・・・カガリ」
シンがいるリビングに入った、カガリは視界にシンの姿を見止めて動きを止めた。
「シン・・」
「・・元気・・そうだな・・」
「ああ」
「今日はどうしたんだ?」
カガリの声は少し震えていた。
「ああ、ちょっと合格報告に」
「そっか、おめでとう」
「あ、うん」
カガリの答えはあっけなかった。
「じゃあ、ちょっと用があるから」
そう言ってカガリはまた玄関の方に足を向けた。
「・・・」
「いいの?追いかけなくて?」
「え」
「さっきの答え、シン兄が帰って来てから聞くよ」
「そうだな、ありがとう」
シンは急いで荷物をまとめて家を出た。
「カガリ!」
カガリはまだそんなに進んでいなくて、すぐにカガリの姿を見つけることが出来た。
「・・」
カガリはシンの声が聞こえたのかどうかは分からないが足を止めはしなかった。
「待てよ!」
シンはカガリに追いついて、手首を掴む。
「イタッ!」
「ごめん!」
シンは慌てて、手を離す。
「・・・・・」
「・・・・・」
「この間はごめん」
「・・・・・・・あのさ」
「・・・・・」
「カガリは俺のこと今でも好きって思ってるか?」
「え?」
「いや、正直に言ってくれ!
嫌いになったらのなら嫌いになったと!」
「・・・・・・・・嫌いになんかならないよ!!
ずっと、ずっと私はシンが好き!!」
「そ、そうか////。
それでさ。もし、数年後カガリが同じよう俺を好きでいてくれたらさ・・///」
シンはカガリのまっすぐな答えに頬を染めた。
「うん」
「追いかけてきて欲しいんだ。
試すようなことを言ってごめん。
けどこれが俺の答えだから」
「・・・」
「待つから、カガリが追いかけてくれるの。
だから、恋人もつくらねぇから!!」
「・・・分かった、待ってて」
シンはくすっと微笑んだ。
「カガリ、」
「?」
シンはカガリの肩を抱いて、唇を重ねた。
「!」
すぐにシンはカガリから離れた。
「待ってるからな」
シンはにっこり笑った。
「じゃあな」
シンは手を振って、自分の家に帰っていった。
足取りは軽かった。
一方残されたカガリはというと。
「・・・・・・・シンの馬鹿///」
・・*・・
そして、季節は幾年巡った春。
ふたりの恋人という関係は始まるのだ。
[
back]