あなたを想うだけで傷だらけです | ナノ パロディノベル



  健気な少年と鈍感な少女B(End)


健気な少年と鈍感な少女


B


「ただいまー」


結局俺は今日もまたカガリと会話をしなかった。
何か言いたげである視線は知っていたが、無視をした。
今回の心の傷は癒すのはさすがに時間が掛かりそうだ。
けれど、どれだけ傷付けられようとも悲しいかな嫌いになることは出来そうにない。
いっそ、嫌いになって他の子と付き合えたらいいのに。
そうは思うが結局俺はカガリを諦めることが出来なかった。


「お帰り、アスラン遅かったのね」
「ああ、うん。
委員会」


玄関で靴を脱いでいると母の声。
俺は適当に相槌を打つ。


「カガリちゃん、ずっとあなたを待ってたのよ」
「!!??」
「何よ、その顔?」
「・・・いや、別に。
何処?」
「アスランの部屋に通しておいたけど」
「・・・・・そう」


仮にも高校生男子の部屋にやすやすと女の子を通すなよとアスランは文句のひとつでも言いたかったが、
いつものことなので気にしないことにした。


「何、アスラン喧嘩でもしたの?」
「してませんよ、ああ部屋入ってこないでくださいね」
「ハイハイ・・、カガリちゃんに変なことしないでよ」
「しません!!//」


顔を真っ赤にしながらアスランは母に怒鳴って二階の自分の部屋に上がった。

ガチャリ

部屋を空けるとそこにはポツンと部屋の真ん中で座っているカガリがいた。


「アッ、アスラン!」
「・・・・・・・・で、何?」


声が固いことは自分でも分かってはいるがこればっかりどうすることも出来なかった。


「え?」
「さっき、隣見たとき車止まってたよ。
おばさん帰ってきてるんだろう?」
「へっ、あ、うんそうなんだ・・」
「?」


アスランは口篭るカガリを気にしながらも、部屋の隅に鞄を置いて。
制服のブレザーを脱いだ。


「・・・」
「で、本当にどうしたんだ?」


アスランは上をカッターシャツだけになり、
カガリの前に座り胡坐をかいた。
対してカガリは正座だ。
少し緊張した。


「あっ、あのな?」
「うっ、うん?」


見上げるカガリの顔はどことなく赤みを帯びている気がする。


「アスラン、私と付き合わないか?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・は?」


幼馴染兼お隣さんの突然の申し出に俺はただ唖然とするだけだった。


「今、何って言ったんだ?」


アスランは突然の片思いの女の子に告げられた言葉が理解できなかった。


「だっ、だから私と付き合おう?」
「・・・・あのな、カガリ」
「?」
「付き合うっていう意味分かってるのか?
買い物に付き合うとかそういうんじゃないんだぞ?」


アスランは恐る恐るカガリに聞いた。
するとカガリは憤慨したように告げた。


「そっ、そんなのわかってる!!」


絶対嘘だ、と思った。

『付き合って』と告げた時カガリの答えは『どこに?』だった。

そのカガリが『付き合う』の意味を理解してる?・・・・・・はずがないのだ。



「・・・・・・・・・・わっ、分かった!
カガリ誰かに告白されたのか?
それで俺に彼氏役を頼んだんだな。
うん、そうだ。
けどな、カガリ。そういうのはちゃんと断った方がいいと思うぞ。
うん、そうだ。そうに違いない」


本気でそういう意味で取られる相手が羨ましいなとアスランは思った。
嗚呼、そして俺はいつこの当て馬人生のような生活から抜け出して男に見てもらえるのだろう。

そんなのずっと先のように思えた。



「――・・馬鹿!!」


けれど、頬に走ったのは鈍い痛み。
どうやら叩かれたらしい。


「カガリ?」
「人が、勇気を出して言ってるのに・・・馬鹿!!
アスランの馬鹿!!」
「えっ、ちょっと、はい、勇気って・・・なんで??」


そうは言われてもアスランの心は疑問でいっぱいだった。
だっていきなりそんなことを言われたって、

ついこの前まで『惚れるわけがない』と言われたばかりなのだ。
それなのに信じろという方が無理がある。
何かの罰ゲームなのだろうかと思うほうが自然だ。


「・・・・・何でって、・・・・・アスランの傍にいたいから」
「え?」


鼓動が高鳴る。
とくとくと一定だったリズムが不規則にリズムを刻む。


「ずっと、アスランの傍にいたい。
私じゃ駄目・・?」
「・・・・・・・・・・・・・・・」


・・・本当に?
カガリは、本当に俺のことを思ってくれている?
男として認識されてる?

意識してもらえてる?

その瞬間瞳から溢れ出したのは涙だった。


「アッ、アスラン?」


カガリ慌てたようだった。
けど、俺の涙は止まらなかった。

嬉しかった。
体の力全てが抜けた。


「カガリ、ありがとう。
嬉しい」


アスランはほにゃりと笑った。


「――・・・///」
「・・カガリ?」


様子の可笑しいカガリにアスランは首を傾けた。


「・・・・・・・・お前、・・・・・綺麗//」
「はっ?」
「だって今凄い、綺麗だった//」


カガリは顔を真っ赤に染めた。


「え・・?」


カガリは手を伸ばしてぎゅっとアスランに抱きついた。


「――・・分かった」
「え?//」


アスランはいきなり抱きつかれて戸惑うしかなかった。


「今、気づいた。
私、アスランのこと好きだ。
凄く、かわいいって思った」


そうだったんだ。
だから、アスランが誰かのものになるのが嫌だったんだ。
フレイに告げられた言葉は全然認識が出来なくて。
唯、心がざわざわするのを感じた。
すると、フレイはにこりと笑った。


『そんなの簡単よ。
カガリがアスラン君と付き合っちゃえばいいの』
『――・・え?』
『そしたら、アスラン君はずっとカガリの傍にいてくれる。
ほら、何も問題ないじゃない』
『私とアスランが付き合う?』


今まで考えられないことだった。
けれど、フレイに諭されていく内に本当にそれしかないような気がしてきた。
行動派な私は、アスランには学校では何処となく避けられていたから、
アスランの家に行って待つことにした。
そして告げたのだ。
けれど、それはつまり・・。


「好きだ。
アスラン――・・、好き」


トクンと心臓が跳ねる。
何度でも伝えたかった。言葉にしたかった。
カガリはぎゅっとアスランを抱きしめた。


「!?

・・・・・・・俺もだカガリ。好き・・だ//」


アスランはカガリとの密着を解いて、隙間を作った。
そして見詰め合ってどちらからともなく、唇を重ねた。
――・・不器用で健気な少年と行動派で鈍感な少女の恋は今、始まったばかりだった。


END


prev next

[back]



×
「#オリジナル」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -